なべはるの人事徒然

フィードフォース人事の中の人。採用、教育、評価制度、組織活性など、日々考えていることを綴ります。現在人事で働いている方、人事の仕事に興味のある方、就職活動中の学生などに読んでいただけたら幸いです。

トヨタが終身雇用限界宣言をしたけれど、具体的にはどうなるの?

トヨタが終身雇用限界宣言をしたけれど、要はどうなるの?と疑問に思ったので整理してみました。

おさらい:終身雇用ってそもそもなんだっけ?

終身雇用という法律や制度があるわけではなく、長期の雇用を前提とした雇い方の慣行のことを終身雇用といいます。平たくいえば、「定年まで雇い続ける」ことですね。

この終身雇用が生まれた歴史を調べてみると、高い離職率の対策として定期昇給や退職金制度を導入したことが起源のようです。

現在のような長期雇用慣行の原型がつくられたのは大正末期から昭和初期にかけてだとされている。 1900年代から1910年代にかけて熟練工の転職率は極めて高く、より良い待遇を求めて職場を転々としており、当時の熟練工の5年以上の勤続者は1割程度であった。 企業側としては、熟練工の短期転職は大変なコストであり、大企業や官営工場が足止め策として定期昇給制度や退職金制度を導入し、年功序列を重視する雇用制度を築いたことに起源を持つ。Wikipedia より)

1900年代当時、従業員に辞められてしまっては困るので、「定期昇給」「退職金制度」など、従業員にとって定年まで勤めたほうが得になる仕組みにした、ということですね。「ウチに入社したら定年まで雇い続けるし、毎年ちょっとずつ給料は上がるし、定年まで勤めればたくさん退職金もらえるよ」というのが採用にも離職防止にも有効だったわけです。
起源をみると、「従業員は家族だから…」みたいなウェットな理由で始まったものではないことがみてとれますね。
それにしても、日本の伝統的特徴として語られることの多い終身雇用は、たかだか100年程度の歴史しかないんですね…。 

終身雇用じゃなくなる…具体的にはどうなる?

みなさんご存知のとおり、トヨタの社長が「終身雇用を続けるのは難しい」と発言したわけですが、具体的にどうするか?には一切触れてないんですよね。

「終身雇用終了」という言葉を聞いて何となく不安になってしまった方もいると思いますが、雰囲気だけじゃなくて「終身雇用終了」が具体的にどういうことを指す可能性があるのか?整理してみようと思います。

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リストラクチャリングによる解雇・・・これまでもあった

業績悪化や大規模な事業縮小による解雇。これは十分ありえると思います。
しかし、業績悪化や事業縮小による解雇はこれまでもありましたし(トヨタでも1950年に1600人の解雇を断行しています)、終身雇用が語られる文脈でも、会社危機の際のリストラクチャリングはありえるとしている場合が多いです。

普通解雇・・・そこまではやらなそう

リストラクチャリングなどの大規模な事業整理ではなく、従業員が成果を出せていないなどの理由による普通解雇(整理解雇)です。

終身雇用の廃止と聞くと、こういった普通解雇を思い浮かべる方が多いと思いますが、日本では労働契約法16条の解雇権濫用法理の壁を突破するのが困難で、実質的に普通解雇はできないというのが共通認識となってさえいます。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする(労働契約法16条)

普通解雇は、「困難」なだけで「不可能」ではないのでトヨタが実施する可能性もあるとは思いますが、そこまでのリスクを冒してまでやるかな?というと個人的にはやらないんじゃないかと思っています。やるにしても、もう1段階くらい布石を打ってからにしそう。

城繁幸さんも、解雇まではしないだろうという予想のようです↓

www.j-cast.com

契約期間を有期にする・・・採用に不利になるだろうからやらない

雇用時の契約期間を、定年までじゃなくて有期にする選択肢です。

「終身雇用をやめる」という言葉を素直に受け取るとこれがいちばんしっくりくるのですが、今の日本では「有期雇用は不安」という風潮はまだまだ強く、採用に不利になりそうなのでやらなさそうです。

有期雇用契約にして、その分給与は期間の定めがない人よりも高くもらえるという働き方は今後一般化しそうではありますけどね。トヨタがそこまでは攻めない気がします。

年功賃金の廃止 / 退職金制度の見直し / 早期退職制度・・・これだ!

これまで挙げた選択肢は、どれも企業側が一方的に社員の雇用や雇用期間を定めるというものでしたが、そうではなくて社員側に選択肢を与え、結果として定年まで働く社員を減らす・・・この選択肢が現実的に最もありえそうです。

1つずつみていきましょう。

  • 年功賃金の廃止
    定年まで給与が上がり続けるのではなく、例えば40才で給与がピークになる賃金設計にすることです。従業員としては40才以降は他社へ転職するきっかけになり、会社としては若くて実力のある人に高い賃金を出すことができるようになります。
  • 退職金制度の見直し
    退職金が多くもらえるタイミングを定年ではなくその手前に設計するのはありえそうです。
    例えば、50才で辞めるとたくさん退職金をもらえるように設計すれば、そのタイミングで転職を考える社員が増えます。
  • 早期退職制度
    特定期間内で退職することにインセンティブを与えることで、一定期間での人員整理を行う。解雇ではなくて、選択権はあくまで従業員が持っています。
    最近だと富士通が大規模な早期退職を実施しましたね。ただ、このやり方だと本当は会社に残ってほしい優秀な人ほど早期退職に立候補しがちという問題は残ります。

    www.nikkei.com

終身雇用の終了とは、1つの会社で定年まで働くことが得にならない社会になるということ

以上、終身雇用のおさらいと、実際にありえる選択肢をみてきました。

こうしてみると、終身雇用の終了といっても急に解雇が増えるということではなく、1つの会社で定年まで働き続けることが必ずしも得にはならない社会になるということなんだとわたしは理解しています。いうほど終身雇用はなくならない。
若い人にっては、実力しだいで今よりも高い賃金を得られる可能性があったりと、悪いことばかりではないですね。

一方で、現時点ではやらないだろうと予想した普通解雇については、今後どうなっていくか注目したいです。トヨタや経団連が解雇規制の緩和について言及するときがきたら、本当の意味で終身雇用の終了の時代がくるんだと思います。

 

お読みいただきありがとうございました!
日本型雇用の歴史についてもっと知りたい方は、骨太の良書があるので下記をオススメします!

意外とカンタン!労務手続きの電子申請を始めました

人事歴7年以上になる私ですが、業務のほとんどが採用あるいは制度面のもので、実は労務の経験がありませんでした。
そんな労務素人の私が、最近役所への書類手続きを電子申請化してみたお話です。

煩雑になりがちな労務のお仕事

まだ本格的に労務の実務を経験していない私ですが、労務の仕事は本当に煩雑ですよね。
労務の仕事を知らない方のために一例をご紹介すると、社員が1人入社するだけでもざっと下記のような業務があります。

  • 扶養控除等申告書の作成
  • 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届の作成
  • 健康保険の手続き
  • 厚生年金保険 資格取得の手続き
  • 住民税の手続き
  • 雇用保険の手続き

あまりに漢字が並ぶので中国語かと勘違いしそうになるのは労務あるあるでしょうか。「雇用保険被保険者証」とかかまずに言えたことないです。

で、これらの手続き1つ1つの書類を全て紙で印刷して、手書きで記入して、役所やハローワークに郵送又は手で持って行ってるわけです。

社内の労務担当者に上記のような説明をしてもらったときの私の正直な感想は「やりたくない(´・ω・)」でした。

とはいえ、従業員が安心して働くために大事な仕事であることも事実。どうせやらなきゃいけないならもっと楽にやりたい!ということでクラウド人事労務ソフトのSmartHRを導入しました。
(最近TV CMも始めたみたいですね↓)

smarthr.jp

Web上のクリックだけで役所への申請ができるように!

SmartHRのコンセプトが「1クリックで人事・労務」だけあって、これまで紙でやり取りしていた手続きのほとんどがWeb上で完結できるようになりました。
その中でも特にインパクトが大きいのが、役所への手続きの電子申請です。
年金事務所やハローワークへの書類申請をWeb上で行うことができてめちゃくちゃ便利です。書類を印刷して手で記入したり、封筒に宛名を書いたり、切手を貼ってポストに入れたり、役所に行って順番待ちしたりしなくてすむんです!

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超難解(?)な電子申請手続き

電子申請という制度があること自体は前から知っていたのですが、電子申請の手続きが非常に難解で、諦めていました。
法務省のHPの電子申請の案内のページがこちらなのですが、見ても「なるほど、分からん」状態。

それでも頑張って申請の流れに従って、申請に必要な専用ソフトウェアをインストールしてみますが、そのソフトウェアからは何やら禍々しいオーラが感じられて先に進むことができません。天空闘技場で念を覚えていないゴンキルがヒソカのオーラにビビって進めなかったときの気持ちです。
(↓な、なんて禍々しいオーラ...!)

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 冗談はさておき、手続きを簡単にするための手続きが難解であきらめる、という本末転倒な状態だったのですが、SmartHRさんがこの電子申請手続きを分かりやすくブログにまとめてくれたおかげで、すんなり申請することができました。禍々しいオーラにビビって進めなかっただけのようです。

mag.smarthr.jp

申請方法の詳細はSmartHRさんの上記記事を参考にしていただくとして、 電子申請のためにやったことをざっくりいうと下記です。

  • 申請に必要な書類・印鑑カードなどを用意(10分)
  • 専用ソフトウェアから申請用のファイルを作成(15分)
  • 労務局へ訪問。申請手続き(移動時間を入れて90分)
  • 専用ソフトウェアから正式申請手続き、SmartHRに登録(15分)

実作業時間で2時間ちょいですね。やってしまえば何も難しいことはありませんでした。

 

人事労務関連...というか役所手続き関連は、一見難解だけどやってみるとさほどでもないものって多くありますよね。ビビって手をつけられていなかったことが解決して、大人の階段登った感あります。
これからもテクノロジーで業務を加速させていきたいですね!

補足 

電子申請はSmartHRを使わなくても利用できるのですが、使わない場合の申請方法がやたらと面倒くさいのと、必要書類をクラウドで作成できるSmartHRと非常に相性が良いので、SmartHRと併用することを前提として書いています。

日本人は本当に働きすぎなのか

お正月です。年末年始は久しぶりの連休でゆっくりと過ごしている方も多いと思います。
というわけで(?!)今回はお休みについて。働きすぎと言われる日本人が本当に働きすぎなのかについて調べてみました。そんなに固い話でもないので肩の力を抜いてお読みください。

日本人は働きすぎ!?

よく、「日本人は働きすぎだ」とか「長期休暇が取りづらい」とか「日本の通勤ラッシュはクレイジーだ!」なんて声をTVやネットで目にします。フランスでは1ヶ月のヴァカンスをとるのが当たり前、とか聞くと羨ましいなと思ったり。
下記サイトのように、海外と日本の働き方を比較しているサイトなんかもあります。

u-note.me

日本人が働きすぎと言われる根拠はいくつかあって、代表的なところでは下記3点でしょうか。

  • 有給消化率が低い
  • 長期休暇がとれない(とる文化がない)
  • 残業が多い

今回はその中でも、「休日」に焦点を当てて考えてみました。世界各国と比較すると日本の休日は多いのか少ないのか。

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有給休暇取得日数比較

まずは有給の取得日数比較です。下記サイトを参考にしました。

welove.expedia.co.jp

上記サイトによると、日本は年間有給取得日数12日で、主要26カ国中下から3番目です。ちなみに最下位は韓国の6日、次がアメリカの11日です。

日本は世界一有給を取らない、というイメージを持っているかもしれませんが、実は2014年から有給消化率のワーストは脱却しています。

ブラジル、フランス、スペインは30日支給で30日取得してます。めちゃくちゃ多いですね。ヨーロッパ圏では支給日数=取得日数が当たり前なので消化率という概念がそもそもないのだとか。

祝日数比較

有給の取得日数だけでなく、祝日数も比較してみましょう。

www.mercer.co.jp

マーサーの世界福利厚生調査データによると、日本の年間祝日数は15日で世界3位です。1位はインド、コロンビアの18日。少ないのは7日のメキシコ、8日のオランダ、イギリス、ハンガリーなど。

有給休暇取得日数+祝日数ランキング

上記2つを比較して、ランキングを作ってみました。有給休暇のほうのデータが12カ国分しかないので、データとしては不十分ですが一応の参考にはなると思います。

  1. スペイン 44日(有給30日+祝日14日)
  2. ブラジル 42日(有給30日+祝日12日)
  3. フランス 41日(有給30日+祝日11日)
  4. オーストリア 37日(有給25日+祝日12日)
  5. イタリア 36日(有給25日+祝日11日)
  6. インド 33日(有給15日+祝日18日)
  7. 日本 27日(有給12日+祝日15日)
  8. 香港 27日(有給15日+祝日12日) ※7位タイ
  9. シンガポール 25日(有給14日+祝日11日)
  10. 韓国 22日(有給6日+祝日16日)
  11. アメリカ 21日(有給11日+祝日10日)
  12. メキシコ 19日(有給12日+祝日7日)

日本は7位という結果でした。確かにスペイン、ブラジル、フランスなどに比べると休みは少ないですが、アメリカや韓国に比べると実は休みが多いことも分かります。

というわけで、日本人は働きすぎか?に関して調べてみたところ、確かに休日数の多い国に比較すると休日は少ないが、日本より休みが少ない国も割とあるというふわっとした結論になりました。

労働時間や病欠の扱い方など、論点は他にもたくさんありますが、今回は単純な休日数の比較ということで悪しからず。

 

2016年1月5日追記)

今年から新たに山の日(8月11日)が追加されましたね!休日数ランキングが7位タイから単独7位になりました!(笑)

通勤手当は何のため?福利厚生の意味を考えてみた

全ての人事施策は会社と従業員のコミュニケーションツール

皆さんの会社にはどんな人事制度・福利厚生があるでしょうか?

最近はユニークな制度や福利厚生を作る企業も多いようで、魅力的な福利厚生がある会社に入りたい!という人も増えてくるかもしれません。

a-mp.jp

当たり前ですが、福利厚生はタダではありません。費用がかかっています。会社は営利団体ですから、費用をかけるからには何らかの意図があります。言い換えると、法定以上の福利厚生を提供するということは、会社から従業員へ何かしらのメッセージを伝えたいからです。全ての人事施策は会社と従業員とのコミュニケーションツールであると言っても過言ではありません。

そこで今回は、福利厚生の意味と会社からのメッセージについて考えてみました。上記サイトにあるようなユニークな施策ではなく、一般的な企業によくあるような普通の福利厚生の意味を考察していきます。

先に言い訳しておきますが、メッセージの受け取り方などは事実ベースではなく私の主観での考察です。

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交通費支給/通勤手当 = 会社の遠くに住んでね

たいていの企業が交通費支給にしていますが、これは義務でも何でもなく会社の福利厚生です。

当然、遠くに住んでいる社員のほうがたくさんもらえるので、素直に受け取ると「会社の遠くに住んでね」というメッセージになってしまいます。
もちろん実際にはそんなメッセージを送りたいわけではなく、出すのが当たり前という雰囲気だから出している企業が大半かと思いますが。

この問題についてちきりんさんも下記の記事で言及していますね。

d.hatena.ne.jp

2駅ルール = 会社の近くに住んでね

通勤手当と全く逆のメッセージがコレ。会社から一定範囲内(2駅だったり半径何キロ以内だったり)に住んでいる社員には手当てを出す、というもの。
サイバーエージェントの2駅ルール がおそらく最初にやり始め、今ではWeb系ベンチャー企業の多くに採用されている福利厚生です。

メッセージとしてはシンプルに「会社の近くに住んでね」と受け取ることができます。

この制度を導入する企業の思惑としては下記が考えられます。

  • 会社の近くに住んでいる社員は遠くに住んでいる社員に比べて通勤手当が安いのでその分を還元したい
  • 近くに住むことで満員電車での消耗を抑えて仕事に集中してもらいたい
  • 従業員が近所に住むことで交流の機会を多く持ってほしい
  • (終電を気にせず働いてもらいたい?)

最近はチャリ通手当てなどの亜種もあるようです。

家賃手当て・ローン手当て = 本質的にはメッセージなし?安心して働けることのアピール?

大企業には割りと標準装備の家賃手当てやローン手当て。もらえる人ともらえない人の差が実家暮らしかどうかくらいの差しかないので、あえて無理やりメッセージをひねり出すとしたら「実家を出ようぜ、家借りるか買うかしようぜ」ということですかね…。実質的なメッセージはないに等しいでしょう。

何となく「安心して働けますよ」というアピールというのが実際のところでしょうか。給与所得にすると税金をとられるので手当てにしておく、という大人の事情も多分にありそうです。

社宅・寮 = 同じ場所に住むことで一体感の醸成?安心して働けることのアピール?

最近の企業ではあまり聞きませんが、大企業にはまだまだあります、社宅や寮。
これは2つのケースに分けて考える必要があります。

会社から通勤圏内に個人で住居を確保するのが困難なケース

通勤圏内に賃貸物件がない!というケースです。この場合は分かりやすいメッセージです。「通勤に対するハードルを下げるから安心して働いてね」というものですね。

通勤だけでなく転勤へのハードルも下がります。比較的短期間での転勤がある場合でも、会社で社宅や寮を確保してくれているなら引越しの金銭的心理的負担も減って安心して転勤ができるようになります。

上記以外の場合

通勤圏内の住居確保が問題なくできて、かつ転勤もさほどない職場での寮・社宅にはどんな意味があるのでしょうか?

正直私にはピンとこないのですが、あえて言えば「同じ場所に住むことでの一体感の醸成」「(特に地方出身者への)安心感アピール」といったところでしょうか。

余談ですが、地方学生と話していると「親に寮がある会社にしとけと言われてます」という人が一定割合いてびっくりします。ジェネレーションギャップ…?

実際としては、かつて好業績だった企業が節税目的で寮や社宅を作ったのでは?と考えていますが憶測の域を出てません。このあたり詳しい人いたらどうぞコメントにでも。

結婚手当て・扶養手当 = 結婚後も安心して働いてね

大企業・ベンチャー企業問わず割とあるのがコレ。

おそらくかつては生活給(結婚したり子供ができるとお金がかかる)としての側面が強かったのだと思いますが、実力主義のベンチャー企業でも導入しているところが多いところを見ると、「結婚後も安心して働いてね」「在籍中に結婚という重大な決断をしてくれてありがとう、応援するよ」というメッセージが強くなっているように感じます。

一方、扶養手当を少子化対策として強烈にメッセージングしている会社もあります。

news.livedoor.com

バイダイナムコは第3子が生まれたら200万円とのこと!事業内容と従業員へのメッセージがリンクしていて分かりやすいですね。

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勤続手当 = 長く働いてね

一定以上の期間勤続すると手当てもらえる制度です。大企業はもちろんですが、意外にベンチャー企業でも導入しているところがありますね。

メッセージはシンプルで、「長く働いてね」です。設計の仕方でどのくらい長く働いてほしいかのメッセージもコントロールしやすいです。

退職金 = 定年まで働いてね

勤続手当は「長く働いてね」ですが、退職金は「定年まで働いてね」です。勤続手当と違って退職金制度を設けているベンチャー企業はほとんどありません。

何故「定年まで」というメッセージになるかというと、ほとんどの退職金制度が定年まで在籍しているとたくさん退職金をもらえて、途中で辞めてしまうと(定年まで働いたときと比較して)少ししかもらえないように設計されているからです。

終身雇用、年功序列、右肩上がりの成長とセットのこの制度ですが、果たして「定年まで働いてね」は今の社会に即したメッセージなのか疑問が残ります。

早期退職金 = 定年まで働かないでね

そうした中、社員を定年まで雇う余裕がない・スキルミスマッチの社員には辞めてもらいたい・社内を若返らせたい、など様々な理由から定年以前に辞めると退職金を割増しでもらえる制度が誕生しました。メッセージは、「定年を待たずに辞める選択肢もあるよ」と退職の選択肢を示すことです。

上記に挙げているとおり、そもそも退職金制度自体は定年まで勤めてもらうことを目的にした制度ですが、一度始めたら辞めにくい性質があるため、時代に合わなくなっても廃止にできず、苦肉の策で正反対のメッセージの早期退職制度が生まれました。

尚、早期退職金制度の中でも強烈なメッセージを発しているのがリクルートで、38才で辞めるともらえる退職金が最大になるようです(ソースが見つからなかったので現在では異なるかもしれません)

書籍購入・セミナー参加費会社もち = たくさん勉強してね!

これはもうシンプルで分かりやすいですね。通勤手当や家賃補助と異なり、自分から学習する人にメリットが得られるのが特徴です。

ベンチャー企業はよく導入していて、(一般的に福利厚生が充実していると言われる)大企業はあまり導入していない印象です。

ランチ代・飲み会代補助 = たくさん交流してね!

これも解説不要なほどメッセージが分かりやすい。書籍購入補助と同様、ベンチャー企業によく導入されています。

一方、大企業にたまにある「全社員一律の食費補助」は節税や時間外手当の節約など大人の事情で設定されています。
追記)節税にはならないそうです

 

このように、当たり前にあるような福利厚生も、その会社からのメッセージが詰まっています。

一方、メッセージが不明瞭な福利厚生はお金の無駄使いをしている可能性があるので、時代に合わせたメッセージが伝わるものに変えていく必要があるのかもしれません。

ギャル男に学ぶ労働判例〜非正規雇用の雇い止め無効〜

ひたすら分かりにくい判例文

突然ですが、裁判の判例文を読んだことはあるでしょうか?人事の仕事をしている方であれば、労働法の勉強をする際に読んだという方もいらっしゃるかもしれません。

この判例文、とにかく分かりにくい。いかに分かりにくく書くかを競っているんじゃないかというくらい分かりにくいのです。

↓例えばある判例文の結論がコレ↓

期間の定めのない契約と実質的に何ら異ならない状態にあるとまではいえないとしても、その雇用関係は、ある程度の継続が期待されていたというべきであり、被告が雇止めによって雇用関係を終了するためには、解雇に関する法理が類推適用されるというべきである。

 結論なのに結論が分からない判例文クオリティ。一周回って面白くなってきます。

そこで今回は、分かりにくい判例文を分かりやすく解説してもらおうと思います。

ギャル男に。

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立教女学院 雇い止め事件

事件概要

  • 原告(A子さん)は立教女学院に3年間派遣社員として勤務後、3年間嘱託職員として勤務(その間2回の契約更新)。その後雇用契約を打ち切られる。
  • A子さんは雇い止めは有効でないという主張し提訴。

(参考:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/12/dl/s1211-14g.pdf

判決

原告の主張通り、雇い止めは無効とする


登場人物紹介

f:id:nabeharu:20150628230308j:plainギャル男
何故か労働法に詳しい

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 なべはる。本ブログの筆者

判例解説

ポイント1.依頼業務は恒常的か臨時か

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ちょりーっす!

 

 

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ギャル男さん、今回の判例の解説をお願いします。

 

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解説ねぇ~、超だりぃ。

 

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そこを何とか

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おっけ、ちゃんなべの頼みなら仕方ない。その代わりマブい金髪のチャンネーとの合コンセッティグ シクヨロ!
まず結論のおさらい。A子ちゃんの雇い止めは無効。これからも頑張って働いてね~。

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雇い止めが無効と判断されたのはどこがポイントだったんでしょう。

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 ポイントねぇ~、いくつかあるヨ。
まず、A子ちゃんを雇ったのは臨時業務じゃなかったコト。A子ちゃんにお願いする仕事は学校にとって常に発生する仕事だったワケ。

 

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ふむふむ


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俺っちがよく行く海の家のバイトのチャンネーみたいな、期間限定で発生する仕事だったら、夏が終わったらバイバーイでいいんだけど、A子ちゃんのお仕事は窓口業務とか現金出納業務とか、よく分かんないけど学校にとって常に必要なお仕事だった、ってのがポイントなのヨ。

ポイント2.契約更新条件

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なるほど。業務が臨時か恒常的かがポイントなんですね。他にポイントはありますか?

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ロンモチでありまくり。
次のポイントは、契約更新の条件なのよネ。


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契約更新の条件、ですか?次のとおりですね。

  • 1 年毎の契約更新とする
  • その後の更新については、契約期間満了時の業務量及び従事している業務の進捗状況と勤務成績・態度により判断する

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そうそう。引用あざーす、なべっち。
で、この条件を見ると俺っちだったらこう期待しちゃワケよ。
「1年『毎』ってあるから何年か契約更新あるんだろうな~」
「やるべき仕事があってマジメに働いてれば契約更新してくれるのね、頑張ろー」

実際A子ちゃんもそう期待して毎日お仕事頑張った。やるべき仕事もある。
それなのに3年経ったら「契約更新はしない」とか言われちゃうワケ。A子ちゃんかわいそー。

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なるほど。契約更新条件に照らし合わせると、A子さんの雇い止めは不当と判断されたわけですね。

ポイント3.契約時に契約終了の可能性を明示的に伝えているか

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あれ?確か非正規で3年以上雇っているとその後の雇い止めや正社員登用に関して企業側が不利になるんじゃなかったでしたっけ?

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お、なべおもけっこーべんきょーしてんじゃん。そうそう、判例上は雇用期間が3年を超えるかどうかがポイントだったりするよネ


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(呼ばれ方が安定しないな…)は、はい。でも今回のA子さんの勤務は3年未満ですよね。3年未満でも企業側が負けるんですね。

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そうネ~、今回の立教女学院の場合はその判例を気にしてか、「3年以上嘱託社員を雇用しない」ってルールを決めてたっぽいね。
そんで、ルール通り3年未満で契約を打ち切ったのに裁判で負けちった。その最大のポイントは、契約時に「3年で終わりねバイバイ」ってちゃんとA子ちゃんに伝えてなかったってこと。

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ちゃんと伝えていないことがそんなに問題なんですか?

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やっぱさ、事前に明確に終わりの可能性を言ってあげないと期待しちゃうじゃん?ポイント2と同じことだけど、無駄な期待を持たせると裁判では不利になっちゃうのよネ。
おれっちもこないだ別れたつもりのジョカノが家に来て大変だったモン。やっぱり男として、無駄な期待はさせない、ってのが優しさだと思うんだよネ。
ちなみに、言った言わないで争う場合もあるから、口頭だけじゃなくて書面でも残しておくともっと良いネ!

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なるほど、3年未満での雇い止めでも気をつけなきゃいけないポイントはたくさんあるんですね。
ギャル男さん、どうもありがとうございました。

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せんきゅーふぉーざぴーぽー

 

  

ポイント)

  1. 依頼業務は恒常的なものだった
  2. 契約更新条件と雇い止め時の状況が合致していない
  3. 3年で契約終了と明示的に伝えていない