なべはるの人事徒然

フィードフォース人事の中の人。採用、教育、評価制度、組織活性など、日々考えていることを綴ります。現在人事で働いている方、人事の仕事に興味のある方、就職活動中の学生などに読んでいただけたら幸いです。

ストレス耐性よりもストレス要因を見よう

労働安全衛生法の改正により、今年(2015年)12月より、50人以上の事業所に対するストレスチェックが義務化されました。

今回の法改正は既存の従業員が対象ですが、これまでも採用時の適性検査でストレス耐性やストレス対処力をチェックしていた企業も多いかと思います。

そこで今回は、採用基準として利用されるストレス耐性や対処力について整理してみようと思います。

採用試験に使われるストレス耐性テスト

メンタルヘルス.jpによると、ストレス耐性とは下記のように説明できるようです。

「ストレス耐性」とはストレスに対するタフさ、ストレスにどれだけ耐えられるかという抵抗力のことです。同じ環境下でも、ストレスを強く感じる人と感じにくい人、あるいはストレスに打ち克てる人とそうでない人がいるのは、個々のストレス耐性に差があるからです。

企業に入って働くのであれば、多かれ少なかれストレスを感じながら働くことになるので、ストレスを感じてすぐにくじけてしまう人よりは、ストレスをものともせずに働ける人のほうを採用したい、という考えになるのは自然のことかもしれません。

人事関連のサービスを一括請求できるHRプロでは、ストレス耐性を測ることのできる適性検査だけで25コもあります。採用時、適性検査を実施してストレス耐性を測ることは、一般的になりつつあるようです。

f:id:nabeharu:20151011223618j:plain

ストレス耐性だけで判断するのは危険

ストレス耐性の高い人を採用したい、ストレス耐性の低い人は採用したくない。この採用基準が一般的になっていることが少し危ういのでは、と感じています。
ストレス耐性を見ること自体がダメなのではなく、正しい理解をせずに盲目的に信じてしまうことで、本来採用すべき人材を不合格にしたり、ストレス耐性は高いけど自社には合わない人材を採用してしまったり…という事態が起こりかねないと思っています。

テストの種類にもよりますが、たいていの適性検査ではストレス耐性と関連の高い項目が設定されており、その数値を見てストレス耐性を判断します。

例えば有名なSPIであれば、「敏感性」「自責性」「気分性」が高い場合はストレス耐性が低いと判断されます。

これらの項目でストレス耐性を判断し、合否を決めることの問題点は2つあります。

1.ストレス耐性が高い = 鈍感、空気が読めない人かも?

SPIの例で言えば、ストレス耐性が高い人というのは、敏感性が低く(=鈍感で)、自責性が低く(=問題が起きても自分の責任とは思わず)、気分性が低い(良いことも悪いことも淡々と受け入れる)人、ということになります。
個人のストレス耐性的に見れば、問題発生時にその人が一人で思い悩んでメンタル発症する可能性は確かに低いかもしれません。しかしチームで見た場合、もしかしたら「問題に気づかず、問題があっても人のせいにするので扱いずらく、周囲のメンバーのストレス源」となっているかもしれません。
(そう決めつけるわけではなく、適性検査をストレス耐性以外の角度で見るとそう見える可能性があるということです)

このように、ストレス耐性を採用基準に使う場合は、ストレス耐性が高いことと裏返しの特徴にも気をつける必要があります。

2.何をストレスに感じるかは人それぞれ

本記事で一番主張したいのがココなのですが、どんなことをストレスに感じるか(ストレッサー と言います)は人それぞれです。

例えば、仕事がたくさんあることにストレスを感じる人もいれば、仕事の量が物足りないことにストレスを感じる人もいます。
曖昧な指示での仕事にストレスを感じる人もいれば、事細かな指示がストレスに感じる人もいます。
(どちらも後者が私です)

同じ環境下でストレスを感じる/感じないは、ストレス耐性の高い/低い以前に、その人が何をストレッサーと捉えているかで大きく異なるのです。

例えば、人とのコミュニケーションが必須の職場環境があったとします。Aさんはストレス耐性は高いが、人とのコミュニケーションがストレッサー、Bさんはストレス耐性は低いが、人とのコミュニケーションはストレスにならない…こんな2人がいた場合、採用対象として有力なのはBさんのはずなのに、ストレス耐性だけを重視してBさんを不合格にしてしまう…ストレス耐性を採用基準に使うにはそんな危険性をはらんでいます。

<コミュニケーションが必須の職場>
Aさん…ストレス耐性 高 コミュニケーションがストレス
Bさん…ストレス耐性 低 コミュニケーションはストレスじゃない ←本来はBさんが採用対象になるはず

正しく理解して、正しく運用しよう

色々書きましたが、ストレス耐性を採用基準にすること自体は有用だし、問題ないと思っています。

ただ、ストレス耐性が高いから大丈夫、などと盲目的に運用するのではなく、

  • 自社のメンタル発症者はどんな特徴があるのか
  • 自社が従業員に与えうるストレッサーは何で、候補者のストレッサーとの比較はできているか
  • ストレス耐性が高いことの裏返しの懸念への見極めは他選考フローでカバーできているか

これらのことを抑えて、正しく運用していければと思います。

 

(おまけ)

本ブログの趣旨とは外れるので触れませんでしたが、ストレスに対してどう立ち向かい解決できるかを測る、ストレス対処力(ストレスコーピング)という考え方もあります。
ただ耐え抜く力を見るストレス耐性では時代遅れで、対処し解決するストレスコーピングを見よう、という流れもあるようです。
一見すると本質的で建設的なように見えるのですが、反対意見もあったりして。。。
別の機会で記事にできればと思います。

オワハラに関する現役人事の考察

倫理憲章の変更の影響で、一部大手企業は8月1日に選考解禁となりました。早速内定を出している企業もあるようです。そこで今回は、今年の人事界のバズワードであるオワハラについてです。

急に話題になったオワハラ

オワハラという言葉をご存知でしょうか。ここ数ヶ月で急速に広まった言葉です。
「就職活動終われハラスメント」の略で、企業が学生に対してあの手この手の圧力をかけることで就職活動を終わらせ、自社に内定承諾するよう働きかけるハラスメントのことです。

↓NHKの『おはよう日本』にも取り上げられていました↓

www.nhk.or.jp

さてこのオワハラ、何だか言葉が一人歩きして論点が分かりにくいのと、どうしても感情的な議論になりがちでよく分からない状態になっているような気がするので、整理と考察をしてみます。

これまでもオワハラは存在していた

内定承諾への圧力が、今年急に現れたかのように報道されていますが、実は今に始まったことではありません。
セクハラという言葉が生まれる前にもセクハラがあったように、これまでにもオワハラは存在していたのです。

↓は2011年の記事。当時は今ほど景気も内定率も良くなかったはずですが、それでも内定学生への囲い込み、拘束旅行というのがあったようです。
そして、「バブル期並み」という表現をしているからにはバブルのときも同様の行為があったのでしょう。
バブル世代ではないので、詳しい方いたらコメントください。

news.livedoor.com

f:id:nabeharu:20150802232820j:plain

悪質なオワハラ、ダメゼッタイ

オワハラにも色々な種類がありますが、悪質なものは下記のようなものです。

  • 内定と引き換えに他社の選考辞退を強要する
    ヒドいところだと、その場で内定辞退の電話をさせる
  • ↑の亜種で、ナビサイトの退会を強要する
  • 他社の選考が受けられないように、面接や懇親会、研修と称して過度に拘束する
    (どこからが過度か判断が難しいですが)
  • 内定を辞退すると暴言を吐かれる、採用費用を弁償しろと迫られる、訴えるぞと脅される

これらの悪質なオワハラは、採用する側とされる側という力関係が対等ではないことを利用して一方的に圧力をかけるもので、許されるものではありません。

しかし、私自身は報道されるほどオワハラが社会的な問題になるとは思っていません。
オワハラ自体を肯定しているわけでは全くなくて、悪質なオワハラを行う企業は市場原理によって自然淘汰されていくと考えられるからです。根拠としては下記のとおり。

  • 悪質なオワハラは内定承諾には逆効果。内定承諾してもらいたくてオワハラをすればするほど承諾してくれなくなる
  • 悪質なオワハラをした場合、露骨な学歴フィルターで炎上したゆうちょ銀行のようにインターネット・SNS等で晒される。すると、直接オワハラを受けなかった学生からの人気もなくなる
  • 好景気の売り手市場が続いているため、オワハラを行う企業に我慢して承諾しなければならない学生が相対的に減っている。

上記のことから、長期的に見れば悪質なオワハラを行う企業は学生から就職先として選ばれず、クロージング手法を改めざるをえず、自然淘汰されていくと思っています。
売り手市場であるが故にどうしても自社に入社してもらおうと行われているオワハラですが、そもそも売り手市場では学生の交渉力のほうが強いので、本質的でなく倫理的にも受け入れがたいやり方では長続きするはずがないのです。

むしろ私が心配しているのが、本当はオワハラじゃないのにオワハラとされてしまう冤罪のほうです。

それ本当にオワハラですか?

 先日、TVのニュースでオワハラが取り上げられていたのですが、そこでインタビューを受けていた学生がオワハラに感じた行為というのが、

  • 何故その会社に入ったほうがいいかを1時間説得された
  • 他社を受けたいから8月まで待ってほしいと伝えたら、1週間しか待てないと言われた
  • 入社承諾書の提出を求められた

などなど。それはオワハラじゃなくて、普通の会社が普通のことをしているだけだろ、というものが山ほどありました。

オワハラという言葉が市民権を得たことで悪質なオワハラをする会社が淘汰されていくのは大歓迎ですが、過剰に反応し過ぎるのは学生にも企業にも不幸になりかねません。企業も学生も、本質を捉えた落ち着いた対応が求められています。

人事版ゾクっとする話

はてなブログのトピックが「ゾクッとする話」についてなので、人事のゾクっとする話をお送りします。

稲川淳二 風に読んで、涼をとっていただければ幸いです。※フィクションです

f:id:nabeharu:20150729203049j:plain

あれは真夏の、セミの音がうるさい日でした。残業して面接後の事務作業をしていたんです。
オフィスに残っているのは自分1人。節電のためにデスクまわり以外の電気は消えていて、冷房の無機質な音と自分が叩くキーボードの音だけが、カタカタ!カタカタ!とやけに大きく聞こえてきます。

今は新卒採用活動の真っ最中。今日も30人のエントリーシートに目を通して評価をつけたところです。一枚一枚真剣に読んだこともあって、目と脳が疲れて頭の奥がキーンとなってきます。何だか冷房が強すぎる気も。

早く帰って缶ビールをプシュっとやりたいところですが、まだ昨日面接した10人の合否出しの仕事が残っています。

早く帰りたいし体調もあまり良くないなー、嫌だなー、嫌だなー、と思いながら仕事なので仕方なく合否出しの作業に取り掛かったんです。

今回は10人中3人が合格で7人が不合格か。少し確率が低いな、と思いながらリクナビの管理画面から不合格メールを送る操作を行います。

いざ不合格メールを送ろうとしたら、頭痛が急にヒドくなり、頭を抱え込んでしまったんです。頭の奥のほうがキーン、と言っている気がします。
本格的に夏バテか。それとも風邪か。嫌だなー、と思いながらも霞むリクナビ画面を操作して、何とかメールを送信したんです。

すると、何故だか下記のような画面が表示されました。

 

 

 

2528人に送信しました

 

 

 

 

 

・・・全件検索で不合格通知を送ってしまった...!ヒィィィ

f:id:nabeharu:20160721203152j:plain

人事担当者の皆さま、真夏の繁忙期で大変と思いますがくれぐれも誤送信には気をつけましょう。
※この話はフィクションです

↓下記ニュースには本当にゾクっときました↓

www.hazardlab.jp

グループディスカッション選考にコツがあるとしたら

グループディスカッション選考が嫌い

以前のブログ↓に書いたとおり、私はグループディスカッション選考が嫌いです。良い悪いではなく嫌い。

nabeharu.hatenablog.com

上記の記事にも書きましたが、やはりどう考えてもグループディスカッションで価値を発揮する人と仕事がデキる人は相関するケースは少ないように思えるのです。

ちなみに、ここまで言っておきながら私の前職ではグループディスカッション選考を取り入れていました。しかも私の提案で。目的とやり方次第で十分意味のあるものになると思っています。好きではないけれど。

グループディスカッション選考は避けて通れない

しかし、私がいくら嫌いと言っても実際には多くの企業でグループディスカッション選考が行われているので、就職活動中の方は「どう対策すればいいのか」と不安に思っている方もいらっしゃると思います。

巷では多くの対策記事/サイトがあるようです。
「グループディスカッション 対策」とでも検索すれば山ほど出てきます。
テクニック的なものが知りたいのであればご自身でそちらを見ていただくとして、ここでは私なりのグループディスカッション対策を考えてみます。

f:id:nabeharu:20150714155106j:plain

グループディスカッションを通して企業が見極めたいこと

まず、グループディスカッションを通して、選考官は何を見極めたいのでしょうか?

グループディスカッションの評価基準 - 面接の王道

グループディスカッションで見られるポイント|現役戦略コンサルタントが語る(1)

グループディスカッションで重要な、たった1つのこと | 就活の手引き

就活グループディスカッションの対策 [大学生の就職活動] All About

↑のいくつかのサイトを見てみると、概ね「協調性(チーム力)」「思考力/発想力」に分けられるようです。

必勝対策はない

上記サイトを見ると分かりますが、当然のことながら「こうすれば受かる」という絶対的な法則はありません。

司会をやると受かりやすいとか、下手な司会は逆に落ちるとか、思考のフレームワークを知ってると有利とか、とりあえずフレームワークとかいう人は印象が悪いとか。会社によって、選考官によって見たいポイントが全く異なります(ヒドい人だと、グループディスカッションに慣れてる感じは嫌だ、なんて言い出す人まで。どうしろと)

ましてや企業が見るポイントが協調性思考力、という、人によってどうとでもとれる曖昧な評価基準なので、必勝対策なんてものはそもそもありえません。

唯一のコツは、選考であることを忘れて本気で取り組むコト

そんな中で唯一のコツのようなものがあるとしたら、選考であることを忘れて本気で取り組むコトです。
本気と言っても、選考に受かりたいという本気ではなく、課されたお題に対しての本気です。

新規事業立案のお題だったら、本気でその会社の社員になったつもりで。少子化を止めるというお題なら本気で国の役人になったつもりで、本気で考え、楽しみ、悩み、時間いっぱいまで妥協せず取り組んでください。

本気で取り組む人を嫌がる人はいないと思いますし、結果的にそれが一番の対策になると思います。また、もしそれで不合格になってしまったとしても、自分の本気の取り組みがその会社に合わなかったのであれば仕方ないと割り切ることもできます。
どうすれば合格できるか、答えのないもやもやしたことにかずらうよりも本質的なことに目を向けましょう。

おまけ:どうしてスマホやノートPCを使わないのか

おまけです。
先日、「技術が発達し、AIが人の仕事の多くを担っているであろう未来に私たちが身につけておくべきことは何か」というテーマのグループディスカッションを見学する機会がありました。

そこで不思議だったのが、誰もスマホやノートPCで調べ物をしないことです。8チーム40人いてただの1人も!
私がもし仕事上でそのテーマを考えるとしたら、今後のテクノロジーがどう発展するかを予想するためにとりあえず色々調べてみます。

あまりに気になって学生に聞いてみたところ、「それが暗黙の了解だと思って」とのこと。また、会社によっては「スマホ禁止」と明言している会社もあるらしいです。

ビジネスにカンニングはなく、自力だろうが他力だろうがどんな手段を使ってでも結果を出すのが大事です。スマホでも人脈でも使えるものは何でも使いますし、機械や人の力に頼れる力も含めてその人自身の能力です。

そう考えると、スマホで調べるくらいは許可してもいいというか、それが自然だと思うのですが、グループディスカッション選考を実施している企業の方、いかがでしょう?

「学生時代大した経験をしてなくて就活が不安」という相談を受けたらどうするか

キャリアセンター/就職課の方、キャリアコンサルタント、学生支援団体の方など、就職活動中の学生の相談を受ける立場の方なら、一度は受けるこの相談↓

「学生時代に大した経験をしてこなかったんで就活が不安なんですけど…」

この相談を受けたとき、皆さんはどう対応していますか?

f:id:nabeharu:20150704123123j:plain

「特別な経験をしてなくても大丈夫!」というアドバイスで本当にいいのだろうか?

プロがどう対応するのか興味があるので、学生の相談を受ける立場の方に会うと、
「こんな相談を学生に受けたらどうしますか?」
と質問をしてみるようにしています。

すると、たいていの方が下記のように応えるそうです。

「企業は特別にスゴい人だけを採用したいわけじゃないから大丈夫だよ」
「自分では大したことないと思っていても企業から見たら強みに見えることがあるから一緒に振り返ってみよう」

とても優しくかつ建設的でさすが学生支援をされている方だなぁ、と感心するわけですが、実際に採用の現場にいる身からすると少し違和感を感じてしまいます。本当にそれでいいのかな?

面接官はこれまでの経験を重視している

以前、下記の記事を書きました。

nabeharu.hatenablog.com

面接官は学生の経験・行動から自社にマッチしているかを判断している、という趣旨の記事です。
もちろん過去の経験だけで全てが決まるわけではなく、コミュニケーション・雰囲気・社風マッチング・経営者の勘など、様々な要素で採用が決定するわけですが、過去の経験が大事なことは間違いありません。

どこまでの行動レベルが求められるかは企業によって異なりますが、もし相談者の行動レベルが志望企業の求める行動レベルに達していない場合、どんなに面接の対策をしても採用される可能性はかなり低いでしょう。

それなのに「大丈夫」と言っていいのかな…と。

今から頑張れば大丈夫!

もちろん、学生支援の方もそんなことは分かっていてアドバイスをしているのだと思います。
「企業はスゴい人だけ採用したいわけじゃない」のは本当だし、「相談者が認識していない強みがあるかも」というのも本当です。「今からあがいても間に合わない」という現実的な視点もあるのかもしれません。

ですので上記のような対応をする方を批判するわけでは全くなく、私の好みの問題なのですが、もし私がタイトルのような相談を受けた場合、

「企業は何かを頑張った人を採用したいからダメかも。自信がないなら今から何か頑張ってみよう」

と答えることにしています。

そうすることで志望企業に合格しやすくなるかも、というのももちろんあるけれど、それだけではなくて。
現時点で胸を張って頑張ったと言える経験をしていない(少なくとも本人はそう認識している)人が、今から何かを頑張って”やり切った経験”をするのは絶対にその後の人生にプラスになると思うからです。

「あの会社に入りたい」とか「面接で隣になった人がスゴい人で自信なくした」とか「就活がとにかく不安」とか。きっかけは何であっても、「このままじゃダメなのかも」と気づいたことは一皮むける絶好のチャンスで、それを無駄にしてほしくないと思うのです。
実際には上述のとおり企業はスゴい人だけを求めているわけではないので、「このままでも大丈夫」なのかもしれませんし、逆に今から何かやったところで付け焼刃で面接ではアピールにならないかもしれませんが、それはそれでいいじゃない。
踏み出したその第一歩は、面接でのアピールにおいてはムダになっても、人生においては絶対にムダにはならないはずです。

人工知能の発達が人材業界に及ぼす影響

ソフトバンクのPepperくんの一般販売が始まりました。価格は税込み19万8000円(+月額の維持費)。頑張れば手の届く価格。割と真剣に欲しいです。オフィスに購入(雇用?)する会社もたくさんありそうですね。時給1,500円で雇えるらしいですし。

www.softbank.jp

という訳で(?)今回は人工知能(AI)の話。といっても技術的な考察は私にできませんので、人工知能の発達によって人材業界がどうなるのか、勝手に考察してみようと思います。

f:id:nabeharu:20150621122139j:plain

次々に登場する人工知能によるマッチングサービス

人工知能を用いた人材サービスは既にいくつか出ています。

↓海外のHR×AIサービスは下記にまとまっています↓

すでに勃興?HR×人工知能領域サービス6選! | リクルーティングの世界

国内でも、ビズリーチのキャリアトレックや、アトラエ×ブレインパッドのTalentbaseなど既にサービス化されているものがあります。

サービス化されていないものでも、groovesが人材採用領域における人工知能やビッグデータ解析技術の活用に関する研究を行う「grooves HRTech 研究所」を設立するなど、ホットなニュースが続いています。

人工知能が発達したら人材紹介会社(エージェント)は不要になる!?

キャリアトレックやTalentbaseの使用感としては、求人数も少なくマッチングの精度はまだまだな印象を受けますが、まだ情報を蓄積している段階。将来的にはマッチング精度が高まってくることが期待できます。

そうなると、人を介した紹介 つまり人材紹介は不要になることが予想されます。人が紹介するよりも、機械がマッチングしたほうが精度が高くなるのであればそこにわざわざ人を介する必要はありません。

人工知能によるマッチングの問題点と限界?

もちろん、それですぐに人材紹介が不要になるわけではありませんし、人工知能だけのマッチングには限界があります。

下記、ジーニアスインターン生のブログによくまとまっています。

www.genius-japan.com

要約すると、人工知能には下記の限界があるので完全代替はできないとのこと。

  • アナログな要素(未経験業務への適性や社風等)へのマッチングができない
  • 信頼感や安心感が得られない
  • 期待値調整ができない

それぞれもっともな意見ではあるのですが、個人的には上記問題点はあまりクリティカルには感じておらず、完全に近い形で人工知能が人材紹介の代替たりえるものになるのではと考えています。

その根拠は下記のとおりです。 

アナログ要素によるマッチングと期待値調整ができているエージェントは少ない

そもそも、人工知能にはできない領域とされているアナログ要素によるマッチングや期待値調整はどれほどのエージェントができているのでしょうか。

データもなく恐縮ではありますが、エージェント・求職者・求人側全ての立場での経験から言わせていただくと、できているのはごく少数といえそうです(体感では

アナログマッチングに気を使っている担当者は10%前後)

アナログ要素のマッチングができていないエージェントがダメだと言いたいわけではなく、大局で見ればそういった機微な部分のマッチングができていなくても成約に至るというのが実情ではないでしょうか。

特に最近は採用市場が活気付いているので、エージェントに相談に行ったら20を超える求人を紹介されて  ( ゚д゚)ポカーン となった方も多いことでしょう。エージェント側も求人が増えすぎて社風まで把握できないという事情もありそうです。

中堅~ハイクラス人材にこそ自動マッチングが活きる

アナログ要素のマッチングや期待値調整も、中堅~ハイクラス人材ほど必要性が薄くなります。

転職エージェントの方はピンとくるかと思いますが、20代中盤~後半の候補者ほど中々決断できずにエージェントが後押しする必要がある一方、ハイクラス人材はスパっと自分で決断できたりします。

中堅~ハイスペック人材ほどエージェントの介在する必要性が薄い理由は下記のとおり。

  • スキルと経験を活かした転職が多い(未経験分野へのポテンシャルというアナログ要素が少ない)
  • 人や社風ではなく、仕事内容や裁量を理由に決断する人材が多い
  • 自分で情報収集して、合理的な決断をすることができる
  • (人によっては)自分の市場価値を把握しているので年収交渉も自分でできる

そして、これらの中堅~ハイクラス人材の紹介は成果報酬も高く企業からの引き合いも強いのでビジネス的に大きなボリュームになります。(平たくいうとお金になります)

 

上記のように、そもそもエージェントはアナログ要素マッチングをあまり行っていない(必要性もあまりない?)、中堅~ハイクラス人材ほどエージェントの介在を必要としていないことから、人工知能が人材紹介エージェントの大部分を代替可能なのでは?と考えています。

f:id:nabeharu:20150621232218j:plain

 

人材紹介で残る分野は?

 未経験・ポテンシャルでの転職支援

上記で挙げたとおり、スキルや経験を活かした転職は機械でのマッチングを行いやすい一方、未経験分野への挑戦となると難しいです。

そもそも転職者本人も何をしたいのか、何に向いているのか分からないケースも多いので、人が介在する価値が十分あるかと思います。

ただし、未経験のポテンシャル採用に人材紹介の手数料を支払うのは採用費として割高ですので介在する価値はあってもビジネスになるかは微妙かもしれません。

公開できない求人

ハイクラス人材でも人工知能に代替しづらいのが、一般に公開できない求人です。

例えば「上場準備責任者」や「リストラ経験豊富なコストカッター」など、世間一般に知られたくない求人の場合は、しっかり人が介在して紹介に足る人材にのみ開示する、という方法が適しています。

そうっいった、本来の意味でのスカウト・ヘッドハンティングを行うことができるエージェントであればこの分野で価値を残せるでしょう。

 

まとめ
  • 人工知能の発達により、人材紹介業は大部分が代替される可能性がある
  • 特に中堅~ハイクラス人材は機械によるマッチングを行いやすい
  • 未経験、ポテンシャル層と公開できないハイクラス求人分野は人工知能に代替されにくい

最終面接は非論理的な理由で合否が決まる

今回も新卒採用ネタ。普段は人事の方向けですが今回はどちらかというと学生向けのブログです。

今年は倫理憲章の指針の変更もあり、選考時期が企業によって異なり学生も混乱しているようです。

(倫理憲章についてまとめたブログ)

nabeharu.hatenablog.com

既に内定を獲得して就職活動を終えた人、今が就職活動真っ最中の人、これから始める人、色んな人がいることでしょう。

中には、最終面接までは進むのだけど、そこで不合格になってしまう、という方もいるかもしれません。

前回、担当者レベルの面接ではこれまでの経験を重視して合否判断しているという記事を書きました↓

nabeharu.hatenablog.com

そこで今回は、最終面接でのポイントについてです。

最終面接では学生のどこを見ている?!

志望度の高い会社の最終面接で落ちてしまうと、ショックが大きく呆然としてしまいますよね(私も学生時代ありました)

  • 最終面接は入社意思の確認だけと聞いていたのに…
  • 社長と雑談しただけなのにどこを見て判断してるんだ?
  • これまで筆記試験やグループワーク、人事面接では高い評価だったのに何故…?

と、落とされた理由も釈然とせず、次に活かそうにも何を反省すればいいか分からない…と思い悩んでしまうこともあるかと思います。

実はそれ、当たり前です。

何故なら、最終面接では非論理的な理由、言い換えるなら「勘」で合否を判断している場合が多いからです。

最終面接官は採用する人を決める、一次面接官は不採用にする人を決める

最終面接では意思確認だけとか、志望度・本気度を聞くとか、その会社について調べてあるかが大事だとか、色々な情報が飛び交っていますが、結局のところ会社によって何を気にしているかは異なるので本当のところは正直分かりません。しかし、最終面接での合否基準を「勘」に頼っている、というのは多くの企業にあてはまります。

面接官の立場と役割から考えてみましょう。ほとんどの企業が下記のように役割を決めています。

一次面接官 = 人事担当者もしくは現場担当者
最終面接官 = 社長もしくは役員

f:id:nabeharu:20150618220028j:plain

一次面接官は合否の説明責任がある=論理的に(一定の基準を基に)合否を決める

 一次面接官は担当者ですから、採用の最終権限はありません。次の面接に進ませるべきかどうかの権限だけです(不採用にする権限があることと、最終的に採用することの権限には天と地ほどの差があります)

そして、次の面接に進めるかどうかの基準は一定の基準を定められており、その基準に達しているかいないか、という目線で面接を行い、ジャッジをします。
言い方を変えると、一次面接官は次の面接官に対して、どういう理由で合格にしたか、あるいは不合格にしたかを説明できなければなりません。

これが、一次面接官は論理的に合否を決めている理由です。

最終面接官に説明責任はなく、採用責任がある=非論理的に合否を決める

一方、最終面接官は社長や役員が務めます。採用の最終決裁者ですので誰かに合否の理由を説明する責任はありません。

これはエライ人だからワンマンで決められる、ということではなく、採用後に経営的な責任を持つ本人だからこそ、定められた基準や論理的な理由だけでなく、勘と経験なども総動員して自社に合う人材かを見極めている、ということです。

そして、これまでの自社のことを良く知り、今後の自社のことを誰よりも考えている決裁者だからこそ、その勘も正しく働きやすいのです。

最終面接に臨む学生は何を気をつければいいのか

勘で決めてるなら、対策のしようがない!と感じた方もいらっしゃると思います。

実際そのとおり、必勝法的な対策はありません。そんな中、1つだけアドバイスできるとしたら、

無理に繕わずに自分の100%を出すこと

が一番大事だと思っています。

最終面接だからと緊張しすぎたり、就活モードの自分のキャラを無理に作って臨んでしまうと、最終面接官の勘が働きません。

無理に作ったキャラを演じられても経験豊富な役員や社長にはすぐに見破られますし、そうなると自社に合うのか合わないのかの判断自体がつかないのです。

そして、判断がつかない人を採用するわけにはいきませんので結果は不合格となってしまいます。

それであれば、しっかり自分を出したうえで合うのか合わないのかを判断してもらったほうがよほど健全です。それで「合わない」と判断されてしまったのならそれは仕方ないでしょう。その会社の最終決裁者の勘と経験でそう判断したのですからその判断を信じて、そこは合わない会社だったんだと割り切りましょう。

まとめ
  • 最終面接官は勘と経験で判断する場合が多い
  • 最終面接官の勘をしっかり機能させるために、無理にキャラを作らずに100%の自分を出すことに専念しよう