なべはるの人事徒然

フィードフォース人事の中の人。採用、教育、評価制度、組織活性など、日々考えていることを綴ります。現在人事で働いている方、人事の仕事に興味のある方、就職活動中の学生などに読んでいただけたら幸いです。

やりがいのある仕事はないが、やりがいを感じて働く人はいる

「仕事のやりがい」について考えていることをまとめてみました。

誰だってやりがいのある仕事をしたい

就職活動中の学生に仕事選びの優先順位を聞くと、多くの方が「仕事のやりがい」を上位にあげます。もちろん人によっては「安定性」や「給与待遇」の方が大事だという人もいるでしょうが、やりがいのある仕事とない仕事だったら、誰だってやりがいのある仕事をしたいと考えているはずです。

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同じ仕事でも、やりがいを持っている人と持っていない人がいる

安定性や給与待遇等の諸条件は別にして、やりがいのある仕事に就くことが充実したキャリア = 仕事人生を歩めるとしたら、「やりがいのある仕事に就きたい!」「やりがいのある仕事って何だろう?」と就職活動生が考えるのも無理はありません。
最近では、働きがいがある企業ランキングなるものもあり、参考にしている人も多いかもしれません。

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それでは、このランキングで上位に入ってる企業で仕事をすればやりがいを持って働けるのか…と考えてみると、疑問符がつきます。
特に既に社会に出て働いている人からすると、「上位のあの会社の仕事は自分には合わなそうだな」とか「この業界の仕事は自分にはやりがい感じられないな」という感想を持たれることと思います。

そう、同じ会社で同じ仕事をするにしても、やりがいを持って働ける人とそうでない人がいるのです。

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3人の石切工の感じているやりがい

ドラッカーの経営論に有名な3人の石切工の寓話があります。

3人の石切職人が働いていた。
そこを通りがかった旅人は石切の仕事に興味を持ち、1人目の石切職人に尋ねた。

「あなたは、何をしているのですか」

1人目の石切職人は「金を稼ぐために、このいまいましい石と悪戦苦闘しているのさ」とつまらなそうな顔をして答えた。

旅人は2人目の石切職人の横を通り同じように質問をした。

彼は「この町一番の石切の技術を身につけるためだ」と無表情に淡々と答えた。 旅人は3人目の石切職人にも尋ねた。

3人目の石切職人は空を見上げ目を輝かせながらこう答えた。
「私が切り出したこの石で、多くの人々の心の安らぎの場となる『教会』が出来るのです。きっと日曜にはたくさんの人が礼拝に訪れますよ」

「何をしているのですか?」という質問の回答から察するに、1人目の職人は全く仕事にやりがいを感じていないようですが、2人目は技術を磨くことにやりがいを感じており、3人目は自分の仕事のその先の成果に想いをはせて大きなやりがいを感じています。
3人とも、全く同じ仕事をしているにも関わらず、です。

ドラッカーがこの寓話を持ち出した主旨としては、マネジャーを任命するには3人目の男にせよ、ということなのですが、「全く同じ仕事をしていてもやりがいを感じる人とそうでない人がいる」ということにも気づかせてくれます。

やりがいのある仕事はないが、やりがいを感じて働く人はいる

こうして、どんな仕事であってもやりがいを感じている人もいればそうでない人もいることを考えてみると、仕事それ自体にやりがいがあるわけではなく、あるのはやりがいを感じて働いている人がいる、ということなんだと思います。
そのことに気づかないと、仕事自体にやりがいを求めてありもしない「やりがいのある仕事」を探してしまう青い鳥症候群になりかねません。
また、その人の能力・適性・組織の都合との折り合いがあるので、やりたい仕事を完全にコントロールして選ぶのは現実として難しいですが、やりがいを持って働くかどうかは自分の心の持ちようしだいなので、精神衛生上健全になれるようにも思います。
会社や仕事を選ぶ際は、ありもしない「やりがいのある仕事」を探す前に、自分自身の仕事に対する価値観を整理するところから始めてみてもいいかもしれません。
 

おまけ:学生が社会人に仕事のやりがいを聞くときに...

寓話の中で石切職人にした質問「あなたは何をしているのですか?」は仕事の本質を突いた良い質問だと思います。
それに比べると、就職活動中の学生が社会人に「今の仕事のやりがいは何ですか?」と聞くのはあまり良い質問ではないように思います。

質問に答える社会人としては、学生にカッコつけたい気持ちや、自社のことをアピールしなきゃ!という思いが少なからずあるので、「やりがいは何ですか?」と聞かれたら(普段はそんなこと考えてなくても)それらしい答えをひねり出してしまいそうです。

ここは素直に「あなた何をしているんですか?」と聞いてみるのはどうでしょう。
「営業だよ」「採用活動です」と職務内容を答えられたら、「その仕事の先には何があるんですか?」「その仕事の意味は何ですか?」「どうしてその仕事をするのですか?」と重ねて聞くと、その人の仕事観が見えてくるかもしれません。

 
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