なべはるの人事徒然

フィードフォース人事の中の人。採用、教育、評価制度、組織活性など、日々考えていることを綴ります。現在人事で働いている方、人事の仕事に興味のある方、就職活動中の学生などに読んでいただけたら幸いです。

残業しなくていい会社より、残業しなくて済むスキルを身につけたい

確かに残業はないほうがいいけれど...

経済産業省と小売り業界がタッグを組んで、月末金曜は3時に仕事を終えるよう呼びかける「プレミアムフライデー」を提案するなど、世の中的に日本の働き方を見直すべきだという声が強くなっているようです。

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働き方を見直すことについて、正直なところこれまで私自身の考えがまとまっていませんでした。

いきすぎた長時間労働は確かに悪だし、残業をせずに家族との時間や趣味の時間も大事にしたいと思う気持ちは確かにあります。
一方で、仕事を通して成し遂げたい成果や成長を考えると、ときには長く働くことだって大事なんじゃないかな、と思うこともあったり。今は私自身がライフイベント的に仕事に集中できるタイミングなのと、何より自分としてはけっこう楽しめている仕事の時間に対して、「残業は悪だ」「残業減らせ」と外野からとやかく言われたくないなんて思ってしまうことも。

そんなとき、ちきりんの『自分の時間を取り戻そう』と『生産性』を読んだことで、自分のもやもやが言語化できたように思います。
(ちきりんと伊賀さんは同一人物らしいですね)

仕事の価値観は人それぞれだけど、生産性は全員高めるべき

仕事はほどほどでいい・長時間労働してでもやりがいや報酬を手に入れたい・働いたら負け・趣味は仕事...などなど、仕事に対する価値観は人それぞれでいいはずです。
プライベートの時間を大事にしたい人に「やりがいにつながるから」と長時間労働を強要するのがよくないことであるのと同時に、仕事が大好きな人に「残業は絶対悪」と言って仕事をできないように取り上げることも同様に乱暴な話だと感じます。

一方で、ちきりんが言う『生産性』を高めることはどの価値観の人にとって必須なのだと、本を読んで気づきました。長時間労働は必ずしも悪ではないかもしれないけれど、生産性の低い労働は悪なんだと。そして、生産性を意識することなく残業時間だけを減らしてしまうことは危険とすら感じるようになりました。

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仮に、生産性の低い働き方をしているAさんがいたとします。Aさんは生産性が低いので、仕事はいつも定時内に終わらず毎日残業をしています。
残業せずにプライベートの時間も作りたいと思っていたところ、会社の方針で残業を削減することに。一人あたりに求められる成果が低くなったおかげで、残業しなくても仕事を終わらせられるようになり、プライベートの時間も作れるようになりました。
短期的に見ればAさんは幸せになったように思いますが、求められる成果量が今後どうなるか分かりません。生産性は低いままなので、会社の方針・役職の変化などで求められる成果が高くなったときはまた残業しなければなりません。そうなったときに残業が嫌で転職をしようとしても、生産性の低い仕事しかできないAさんを良い条件で雇ってくれる会社はないでしょう。Aさんは、会社の方針が変わらないようにとビクビクしながら働き続けなければなりません。

着目すべきは残業時間よりも生産性

プライベートも充実させたいAさんが本当にするべきことは、仕事量を減らすことではなく、生産性を高めることです。

生産性高く働き、これまでと同じ成果を短い時間で出せるようになれば、成果はそのままにプライベートの時間も作れます。
ライフイベントの変化で人よりも短い時間しか働けなくなったとしても、高い生産性で人並みの成果を出すことができ、逆に仕事に集中したくなったときには人の何倍もの成果に挑戦することもできます。会社の方針が自分と合わなくなったときに転職することも容易でしょう。

どんな人生を送りたいのか、どんなキャリアを積みたいのか、どれだけの報酬を得たいのか...価値観は人それぞれですし、同じ人であってもライフイベントによって優先順位は変わります。大事なのは生産性高く働くことで、自分の人生の選択肢を増やすことだと思うのです。
生産性が低いままでは、プライベートを大事にしたいタイミングがきたとしても、無理して長く働くか収入を落とすか、というネガティブな選択肢しか残らなくなってしまいます。

生産性を高めるスキルを積める会社選び

ちきりんの本を読んで、残業しなくてすむ会社がいい会社なのではなくて、生産性の高い働き方を身につけることができ、プライベートを大事にしたい人も仕事を大事にしたい人も働き方を選べるのがいい会社なのだと思うようになりました。
就職活動でするべき質問は「残業時間はどのくらいですか?」よりも「生産性を高めるためにしている取り組みはなんですか?」のほうかもしれません。

下記は、現時点で私の思う生産性を高められる会社の条件です。

高い目標、成果を掲げている

目標がヌルいと、特に工夫をせず今の仕事の進め方でも達成できてしまい、生産性を高めようという気持ちになりません。ちきりんも、「今のやり方では絶対に達成できない目標を与えられたときが生産性を劇的に高めるチャンス」と言っています。
高い目標、成果を掲げていることがまず第一条件になると思います。

Webツールの活用に積極的

今、業務を効率化する便利なWebツールは山ほどありますので、それらの導入に寛容/積極的な会社かどうかが2つ目のポイントです。
人事領域でいえば、SmartHRなどの労務管理ツールや採用管理システム、日程調整ツールに勤怠管理システムなどを駆使して業務を効率化できる人と、紙やエクセルのみで管理して、それが非効率であることを気づきもしない人とでは長いスパンで考えると生産性が段違いで変わってくるように思います。
(私もまだまだ活用できていないのですが、そのことに気づいて危機感を持つことができただけでも、今の会社に転職してよかったと思えます)

人ではなく仕組みで成果をあげる

最後に。高い成果を掲げている会社であっても、長く働くことでそれを達成しようという会社はまだまだ多くあるように思います。ちきりん風に言うと「インプットを増やすことでアウトプットを増やそうとするのは最悪の方法」とのこと。

長く働いている人が高く評価したり認められたりという社風のままでは、生産性を高めることはできませんし、生産性を高めようという意欲自体が生まれません。人が無理に頑張って成果を高めるのではなく、頑張らなくても高い成果を出せる仕組みを作ろうとしている会社であることが重要です。

 

以上、いろいろと書いてきましたが、これまでの自分がまさに「自分が頑張ることで何とかしよう」という生産性のカケラもない働き方をしてきました。自分が頑張れば何とかなる程度の成果しか求められなかったともいえます。
そのツケがまわってきて、今ものすごく苦労しています。このタイミングでこれらの本に出会い、生産性について本気で考えることができたのはとても幸運だと感じています。できればもう数年早くこの考え方を身につけたかった...