なべはるの人事徒然

フィードフォース人事の中の人。採用、教育、評価制度、組織活性など、日々考えていることを綴ります。現在人事で働いている方、人事の仕事に興味のある方、就職活動中の学生などに読んでいただけたら幸いです。

伝説のホワイト企業「未来工業」の会社見学に参加して分かったふつうじゃない経営の秘密

未来工業という会社をご存知でしょうか?
岐阜に本社をかまえる、創業60年の電設資材メーカーです。

残業禁止・年間休日140日・従業員は全員正社員など、ふつうじゃない経営で後発メーカーながら独自のポジションを確立していることで有名ですね。
創業者の山田昭男さんはカンブリア宮殿にも出演されてました。

matome.naver.jp

その未来工業の会社見学・セミナーに参加してたのでそのレポートです。

会社見学プログラム 

会社見学は下記のプログラムでした。小学生のときの社会科見学を思い出して何だかワクワクします。

  • 名古屋駅集合
  • バスで未来工業へ出発。バスの中では未来工業の紹介ビデオを観る
  • 未来工業到着。社内見学・工場見学
  • 社長の山田雅裕氏の講演
  • バスで名古屋駅へ移動。解散

日本経営開発協会というところでセミナー参加者を受け付けています↓

未来工業㈱ 本社・工場見学&経営セミナー « 日本経営開発協会/関西経営管理協会

当日は、セミナー参加者上限の45名が参加。すごい人気なんですね。ちなみに私以外は全員スーツでした。 

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↑見学の様子。社内・工場内はすべて写真 OK

工場や倉庫も見学しました。大きな機械が動いているのは無条件でワクワクしますね!

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右上の「改善提案実施箇所」というシールに注目。提案制度(後述)によって改善された箇所を見える化して、改善提案を促進しています。

社是 常に考える

10歩歩いたらこのポスターと出会います。会議室・廊下・トイレとありとあらゆるところに貼ってあり、「前を向いて歩いていれば必ず目に入るようにしている」とのことでした。

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社長講演 ユニークな施策それぞれに込めた想いと現実

工場見学後、私にとって本番の山田雅裕氏の講演です。
ひとつひとつの話が非常に興味深かったので、お聞きした話のメモをトピック別にまとめました。

下請け仕事はしない。オリジナルのメーカーになる

儲かる会社を目指した。具体的にいえば経常利益4000万円以上を目指している。それが実現できているのは日本の企業のうち3%だけ。

その3%の企業の真似をするのではなく、(未来工業の視点でいえば)儲かっていない97%の企業がやっていないことを考えてやることにした。
だから、他社と同じものは作らない。他社がやらないからこそ自社がやる。そのために社是を「常に考える」とした。

結果として、他社にない製品を生み出し、価格競争をしなくてすむようになった。 

ホウレンソウの禁止

メディアが大げさに取り上げてしまっただけで、実際には社内のそこかしこで報告・連絡・相談は発生している。ホウレンソウというキャンペーンはやらないということ。
ホウレンソウしなさい、と会社や上司が「やらせる」ことはしない。それでは社員のモチベーションが下がってしまう。また、上司が部下の報告に満足して現場に行かなくなってしまうことを懸念している。 

年功序列・成果主義なし

創業者の言葉「未来工業に神はいない」。
人が人の評価をつける以上、どうしたって完璧にはならない。不公平が生まれたり、納得しない人も出てくる。それでモチベーションが下がるくらいなら最初から年功序列と決めてしまったほうがいい。

年功序列が完璧とは思っていないが、今のところベターな手段と思っている。

一方で、役職や役割によって給与は変わる。この人は部下を率いるのが上手だから部長にしよう、など。それは上司や周囲の評価によって決まる。役職につけるのは年功序列ではない。

プレイヤー・技術者として優秀であってもマネジャーとして優秀とは限らない。そういう人には専門職型管理職という、部下をつけない管理職になってもらう。

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ノルマなし 

営業マンの数値目標はある。数値目標を達成できなかったときのペナルティがない。
ノルマを気にして1社あたりの営業時間を短くしなきゃ、などと気にすることがなくなって結果としてお客さんの信頼を得られる。

年間休日140日

業界が 3K と言われて、なかなか人が集まらなかったので休みを増やした。
まずは年末年始休暇から。当時はお客さんに迷惑がかかるので反対も出たがやってみた。結果として、やはりお客さんから「なんでウチより早く休むんだよ」と言われた。

どうせ怒られるなら、休みを2倍にしよう、と考え現在の形に。

年末年始は18連休、GW は2倍。飛び石連休はつなげて4連休にした。
最近は飛び石連休が減ったので年間140日に少し届かないくらい。

メディアで「日本一休みの多い会社を目指す」などと取り上げられているが、実際にはそんなことを言った覚えはなく目指していない。

定年70才制

60才の給与のまま、70才まで働ける。再雇用ではなく雇用継続。
社員が安心して働けるようにという措置。

いま、社内でボリュームゾーンの40代後半の社員が60才以上になったときの人件費負担が経営者としては重いが、なんとかこのシステムのまま乗り切ってやろうと思っている。 

全員が正社員

パートや派遣は原則として雇わない。商品の品質を維持するため。
品質は社員のモチベーションによって変わってくる。同じ仕事をして待遇が異なる人が出てくるとどうしてもモチベーションに差が出てくるので、全員を正社員で雇っている。

研究開発に時間をかけて差別化商品を出すので、値段は高い。なのでなおさら、品質を維持する必要がある。

提案制度

業務や職場の改善提案すると内容に応じて報奨金が出る。どんなに些細なことでもよく、提案が採用されなくても500円もらえる。 

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提案制度 提出用紙

年間200件以上改善提案をした社員には報奨として別途10万円のボーナスが出る。毎年1人か2人くらいいる。
提案の内容がどんなに低レベルであっても報奨金を出す。提案制度は「常に考える」を実践し習慣化するツールとしている。

残業禁止、残業ゼロ

残業ゼロを、目標にしている。実際にはゼロではない。特需が発生したときなど、残業や休日出勤が続くこともある。やはりメディアに過剰に取り上げられてしまっている。
ただ、残業を推奨していないことは本当。

創業者が劇団をやっていたことがルーツ。残業があると夜の稽古ができない。8時間の仕事・8時間の睡眠・残りの8時間を豊かにしてあげたいという思いがある。

経営の視点でいえば、残業代を払って利益が少なくなるのを嫌っている。100円の製品を残業したからと言って125円にするのはお客さんが納得してくれないので自社の利益を削らざるをえない。残業することは会社に貢献する行為ではないという考え。

営業職はすぐに残業を減らすの難しいが、事務職は減らす余地が必ずある。顔ぶれが変わりづらいので、ブラックボックス化している恐れあり。

上司は部下に命令する権限を持っていない

上司は部下を説得して、納得させる責任がある。
会社が社員に求めることは「常に考える」のみ。

ホワイト企業を目指していない

社員を幸せにしようとか、ホワイト企業を目指そうなどとは一言も言ったことがない。ただ、自社にとってベストのやり方を模索しているだけ。
メディアに大げさに取り上げられることもあるが、自社のことは「問題山積み工業」だと捉えている。

感想 破天荒なだけじゃない、現実と地続きの未来的な施策

以上、山田雅裕社長の講演内容でした。

話を聞いてみると、メディアで取り上げられているほどの破天荒さ(※)は感じられず(休むとお客さんに怒られたからもっと休もう、はどうかと思いましたが!)ひとつひとつの現実的な経営課題に向き合ってきた結果の施策の数々なのだと感じました。
※意図して誤用してます

未来工業の戦略と文化の柱となっているのが社是の「常に考える」。常に考えることが、差別化された製品を生み出し、未来工業らしい社風と施策の源泉になっています。
会社のビジョンも定めておらず、メッセージは「常に考える」だけというシンプルさもその文化を加速させているのだと思います。

また、先端の経営・組織論のトレンドを知ってか知らずか取り入れている先見の明もすごいです。
ホウレンソウ禁止やノルマなしは今風に言えばホラクラシー、成果主義なしはグローバルでトレンドになりつつある No Ratings のこと。労働環境をホワイトにして優秀な人材を採用しようというのは最近でこそ一般的になりつつありますが、何十年も前から取り入れているのはかなり珍しいことです。流行りだから、最新だから取り入れるのではなく、自社にとって良いものはなにかを「常に考え」てきた結果なのだと思います。

きっと、これからも「常に考える」姿勢で未来工業ならではの取り組みを続けられるのでしょう。今後の未来工業にも注目です!