明るみに出た学歴フィルター
大手企業の採用選考も本格化する中、ゆうちょ銀行の学歴フィルターの件、話題になってますね。
採用担当者として日々働いている私が上記を読んでまず思うのは、説明会の設定をした採用担当者は青ざめてるだろうな…ということ(もっとうまくやればいいのに)。
で、この件での世間の反応はさまざまで、
- ゆうちょ銀行エグい
- 学歴が低くても優秀な人がいるのにフィルターをかけるなんて時代錯誤だ
- 日東駒専でフィルターかけられるならFラン大学の自分オワタ
- 不正が発覚したゆうちょ銀行はどう釈明するのか
- 学歴でフィルターをかけるのは合理性があるので仕方ない
などなど。
ここまで露骨に差別があったので、ゆうちょ銀行に悪感情を持った人も多いようです。投稿者の大学が日東駒専という一般レベルの大学だったことも、投稿者への同情を集めやすかったのかもしれません。
採用活動は公共事業ではない
こういった学歴差別への批判が起こるたびに思うのは、学歴差別の是非以前に、第三者がとやかく言うことじゃない、ということです。
採用活動は公共事業ではなく、企業がその戦略を達成するために必要な人員を確保する企業活動です。
その手段が新卒採用だろうが中途採用だろうが、学歴差別しようがコネ採用だろうが、第三者がどうこういうものではありません。
補足:男女・国籍・信条などを差別しないという法律を守っている前提の話です
学歴差別でなく学校差別
採用活動は公共事業ではないという前提のうえで、第三者ではなく自分が採用する立場だった場合の学歴差別についての考察をしていきましょう。
まず整理をしておきたいのが、ゆうちょ銀行のケースは正確に言えば学歴差別ではなく学校差別であることです。
学歴の本来的な意味は、中卒・高卒・短大卒・専門卒・四大卒・大学院卒、などの最終学歴を指します。
私はあまりピンときませんが、高卒だと係長止まり、四大卒じゃないと課長以上になれない、というような学歴差別が行われていた時代があったようです。
現在では大学進学率がグっと上がり、学歴といえば大学のどのランク(偏差値)の大学を卒業したのかを指すことが一般的になりました。
ココでは最終学歴での差別と区別するために、これらの学校ランクによる差別を学校差別と呼ぶことにします。
差別をする理由・意図
結論から言えば私は学校差別はあって当たり前、という肯定派です。フィルターをかけて門前払いにするかどうかは別として、ですが。
ゆうちょ銀行の件で悪感情を持たれた方、落ち着いて是非最後まで読んでください。
学校差別は効率が良い
何故ゆうちょ銀行のように学校差別する会社が後を絶たないか。それは、そのほうが効率が良いから に他なりません。
学歴差別・学校差別反対派の方はよく、
「学校のランクに関係なく優秀な人はいる。例えば私の友人の○○さんは偏差値は低いけどとても優秀で…」
という意見を述べます。
私も全くそのとおりだと思います。学校ランクや最終学歴に関係なく優秀な人は間違いなくいる。そして、学校差別をしている会社の経営者・人事の方もその意見には100%同意することでしょう。
なのに何故学校差別をするのか。それは、
「個別で見れば学校ランクに関係なく優秀な人がいるのは知っているけど、優秀な人に出会う確率(優秀な人が存在する含有率)と学校ランクは明確に相関があることを知っている(あるいは信じている)」からです。
個別の事例ですが、私がいつも手本にしている、人事の仕組みが世界的に見て素晴らしいと認識されているある企業も、新卒採用では一定ランク以上の学校のみを説明会に呼ぶ、と公言されていました。理由は明確で、「そのほうが効率が良いから」だそうです。
学校ランクで採用を決めているわけではなく、一次接触の優先順位をつけている
採用担当者になったつもりで考えてみてください。
・今年は10人採用したい。
・10人採用するためには、自社に合う=優秀だと思われる学生に50人と接触する必要がある
・これまでの採用データから、A大学は2人に1人、B大学は5人に1人、C大学は10人に1人、自社にマッチする学生がいる見込みが立ちそうだ
・学内説明会を開くとして、どの大学を優先的に訪問しようか…
どうでしょう。考えるまでもなくA大学から訪問しますよね?A大学なら100人と接触すれば10人採用できる見込みですが、C大学なら500人と接触する必要があります。
私だったら、A大学、B大学を回ってダメだったときの保険としてC大学に訪問するか、そもそも訪問しないかのどちらかです。世間的に見ればこれも立派な学歴差別でしょう。
しかし注意してほしいのは、個別に見れば学校ランクに関係なく自社に合う人・合わない人がいることを(普通の)採用担当者は理解してますので、上記のようにA大学の学生から優先的に接触はしますが、選考は学校ランクとは関係なく行います。
もしたまたまC大学の学生が選考を受けてくれて、自社の合格基準を満たすならばもちろん採用しますし、A大学であろうとも合格基準に満たないなら当然不採用とします。
学歴差別・学校差別は悪だと条件反射で捉えてしまう方は、学歴で採用不採用が決まるという視点ではなく、限られたリソースの中で、どの学校を優先的にターゲットにするか、という視点で見ると少し印象も違うのではと思います。
偏差値以外の学校差別の流れがきている
最後に触れておきたいのが、偏差値以外の基準で学校差別が起き始めている、ということです。
例えば、
- D大学は偏差値は低いけど、実践的なカリキュラムを取り入れて地元企業と連携して学生を育てている。自発的に学ぶ姿勢も身についているし、チームで働く難しさを知っている学生も多いので入社後活躍してくれる期待が持てる。特別に筆記試験免除で選考に呼ぼう
- E大学のF教授は指導力がズバ抜けて高く、研究室からは毎年とびきり優秀な学生が輩出されるので、F研究室対象の特別選考枠を作ろう
という、偏差値以外の基準で学校を差別することです。
これはとても良い流れだと思っていて、こうした本質的な評判が広まるとその大学の就職率も高まり、入学希望者が増えます。すると他大学も対抗して新しいカリキュラムを作るようになる、という良いサイクルを生み出します。
偏差値で差別する、というと反感を覚える人もいるかもしれませんが、上記のような本質的な意味での差別であれば嫌な気分になる人もほとんどいないのではないでしょうか。
長くなってしまいましたので結論を2つまとめます。
- 採用活動は公共事業じゃないので第三者がとやかく言う問題ではない
- 採用担当者は、偏差値以外の本質的なポイントでの「差別する目」を持つべし