なべはるの人事徒然

フィードフォース人事の中の人。採用、教育、評価制度、組織活性など、日々考えていることを綴ります。現在人事で働いている方、人事の仕事に興味のある方、就職活動中の学生などに読んでいただけたら幸いです。

トレンドも歴史も!人事がいま読むべきオススメ本7選!

こんにちは!なべはるといいます。

このブログは、人事アドベントカレンダーの6日目の記事です。

前日は @M3ds_kanagawa さんの内定者が新卒採用をやってみた感想です。在学中に内定先で採用業務をやっていらっしゃるんですね、すごい!日々学びを感じているようでステキです。

さて今日は、わたしが独断と偏見で選んだ人事パーソンにオススメの書籍を7冊ご紹介します! 大学時代から本を読むのが好きで、人事・組織系の本は数えきれないほど読んできたのですが、その中でも今読むべき7冊に絞り込んでみました。
年末年始に読書したい方、人事としての基礎を学びたい方に少しでもお役に立てればさいわいです!

最新の人事トレンドを押さえる3冊!

OKR、1on1、No Ratings、継続的なフィードバックとパフォーマンスマネジメント等…ここ数年で人材マネジメントのトレンドが大きく動いています。
そういったトレンドを押さえるのにオススメなのがこの3冊です。

OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法

MBO や KPI に替わるゴール設定テクニックとして注目されている OKR についての貴重な日本語訳本です。OKR について知るにはとりあえずこの本を読んでみることをオススメします。
架空のスタートアップ企業が OKR を導入して成長していくストーリーと共に解説されているので、読みやすくイメージしやすいです。

わたしのチームでは、この本で紹介された4象限の OKR ボードや Winセッションを日々運用しています。この本がなければ、OKR の概念は分かっても実際の運用イメージはわかなかったので、いまの業務にいちばん役立っている一冊です。

Yahoo!の1on1

すべての企業が Yahoo! ほど 1on1 の目的を人材育成に極振りする必要はないと思いますが、それでもメンバーとのコミュニケーションの取り方の基礎について学ぶにはとても参考になります。
他社に先駆けて 1on1 を本気で導入してきた Yahoo! さんの凄みを感じる1冊です。

ハーバードビジネスレビュー 2017年4月号「人材育成」

www.dhbr.net

最後は書籍ではなく雑誌です。ハーバードビジネスレビューにも人事系のトピック増えてきましたねー。

「人材育成」がテーマの号ですが、注目は2つの特集。

  • 年度末の人事査定はもういらない~業績評価から人材育成へ~
  • 年度末の人事査定はいまだ有効だ~人材育成の視点からの反論~

なんというプロレス企画笑。

正反対の主張の2つの特集ですが、よくよく読んでみると「環境の変化が速い環境下での人材育成」について同じ考え方を持っているのが分かります。

No Ratings 導入を検討するにあたって、本質的な問題は何か?を確認できる良い特集だと思うので、未読の方はぜひ。

トレンドを正しく理解するために、歴史や理論を知ろう!

最新の人事トレンドを知る3冊を紹介してきましたが、トレンドの本質をとらえるには歴史や理論を知っておくことも重要です!

というわけで、組織論の歴史や理論を知るための厳選2冊をご紹介!

HIGH OUTPUT MANAGEMENT -人を育て、成果を最大にするマネジメント-

1on1 や OKR の原型となる手法をすでに編み出していたアンディ・グローブの先見性たるや…!

最新の手法や事例の話しばかりを聞きすぎて、結局どうすればいいか分からなくなってしまったときに、心を落ち着かせるために読むことをオススメします。

無理・無意味から職場を救うマネジメントの基礎理論 18人の巨匠に学ぶ組織がイキイキする上下関係のつくり方

nabeharu.hatenablog.com

人事たるもの、キャリアについて自分の意見を持てるようになりたい、という方にはこの2冊

最後に、キャリアについて考えるきっかけになる2冊を紹介します。

人事という仕事上、キャリアについて考えることも悩むことも多いと思います。そんな方の一助となれば幸いです。

キャリア論 

10年ちょっと前の大学時代にこの本を読んでから、高橋先生の言う「キャリア自律」はずっと大事にしている考え方です。

nabeharu.hatenablog.com

 

以上、オススメの7冊を紹介しました!
なべはる、これも読んどけ、という本がありましたら是非教えてください!!

人事アドベントカレンダー、7日目は arakichiho さんです。お楽しみに~。

年間60冊本を読む人事がオススメする、就活生が読むべき本5選

本好きの人事が就活生向けにオススメの本を紹介するよ

突然ですが、読書が好きです。5年ほど前から読書メーターで読んだ本の記録をつけているのですが、それによると5年間で338冊(小説含む、漫画含まず)読んでいるらしいです。1年にならすと60冊強、1か月で5~6冊です。何だか思ったより読めてないですね。
本当は月10冊くらい読みたいところですが、忙しくなるとやはり読書量減ってしまいます。年末年始はカフェで読書三昧したいですね。

そんな私が独断と偏見で選んだ、これから就職活動をする方・新しく社会に出る方にオススメする本を5冊紹介してみようと思います。
年末年始の読書に是非どうぞ。

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就職活動はマーケットでの勝負!『マーケット感覚を身につけよう』

一冊目は王道でちきりんの『マーケット感覚を身につけよう』

ちきりんによれば、日本の学校は極めて市場性が低く、マーケット感覚を得づらいらしいです。自分自身にどんな価値があるのか、誰が何に価値を感じてお金を払うのか、というマーケット感覚を身につけることで、会社選びや仕事観の醸成に役立つことと思います。面接でのアピールも、受け手にとってどう価値を感じるかというまさにマーケット感覚が重要ですし。
下記に、読んですぐの感想レポートをまとめています。

nabeharu.hatenablog.com

進路に悩む貴方にユルいキャリア相談『好きなようにしてください~たった一つの仕事の「原則」~』

2冊目は、会社選びで悩める貴方に、楠木先生の『好きなようにしてください』

  • 大企業で安定をとるべきか、ベンチャー企業でやりがいをとるべきか
  • やりたいことをやるべきか、現実を見るべきか
  • 将来転職しやすいようなスキルを身につけるには

などなどの悩みに全て「好きなようにしてください」のみで答えています。
楠木先生らしいユーモアたっぷりとゆるさあふれる文章力で肩の力を抜いて楽しめる1冊ですが、「皆が思うほど環境で人生は左右されず、好きなように選んだ先で頑張れるかが重要。選択が間違ったと思うならまた違う道を好きに選べばいい」という本質的かつユルいメッセージが染みます。
こちらも、過去に読書レビューを書いています。

nabeharu.hatenablog.com

ITがもたらす生活の変化に思いをめぐらせる『インターネットの次にくるもの~未来を決める12の法則~』

ユルめの本が続いたので、少し難しめの本も紹介しておきます。ケヴィン・ケリーの『インターネットの次に来るもの』

ITなしでは語ることのできないこれからの世界。一体どんな世の中になりどんな生活になるのか...AIに仕事が奪われるニュースを目にすることもあり、何となく不安に感じている人もいるのではないでしょうか。
この本を読むと、ITによって未来がどう変わるのか・私たちの生活はどうなっていくのか...その可能性を覗き見ることができます。書かれていることのうち、私たちが生きている間は実現しないこともあるでしょう。それでも、テクノロジーが進化すればこんなことができるようになるんだ!私たちが生きている今は、こんな未来と地続きになっているんだ!とテクノロジーの可能性に純粋にワクワクします。

IT業界に興味がある人や起業を考えている人は必読ですし、ITの進化に何となくの不安を感じている人にもオススメです。

社会問題を親しみやすい話題で理解する『なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか? ~日本人が知らない本当の世界経済の授業~』

あまり就職活動とは関係ありませんが、私が学生時代に読みたかったと強く思える『なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?』

マイナス金利・テロ・少子高齢化・年金...などの私たちが直面している様々な問題を、普通の大学生にも分かりやすく解説してくれています。
解説するために、「進撃の巨人」「鋼の錬金術師」「セックスアンドザシティ」「セカイノオワリ」などのマンガやドラマ、音楽を例にしてくれるので政治・経済が苦手な人で読みやすいと思います。

ただ、少し偏った思想もあるようので全て真に受けないよう気をつけましょう。

ユルくてリアルなドタバタ仕事活劇『カイシャデイズ』

最後は小説枠。かなり悩んだのですが、あえて王道を外して、山本幸久さんの『カイシャデイズ』にしました。

中野にある小さな内装工事会社の普通のサラリーマンを描いた、ちょっと普通じゃないお仕事奮闘劇。『下町ロケット』みたいな熱い話ではなく、ゆる~くコメディタッチに描かれています。
山本さんの著作はどれもそうなのですが、仕事って、そんなにキラキラしたものでも恰好よくもないけど、でもそんなに悪いものでもないよっていう気持ちにさせてくれます。就職活動で疲れて、一息入れたいときにおすすめです。
巻末に、短編の「シューカツデイズ」も収録されています。

山本さんの他の著書では、『ある日、アヒルバス」もオススメ。ひたすら笑えます。

 

以上、独断と偏見で選んでみましたがいかがでしたでしょうか?
王道になりすぎず、意識高い系ばかりにしすぎず、と頭を使って選んでみたつもりです。年末年始は、読書に時間を使ってみてはどうでしょう。

ユルくて深いキャリア相談『好きなようにしてください』読書レビュー

一橋大学の教授で競争戦略論を専門にしている楠木 健先生の『好きなようにしてください―――たった一つの「仕事」の原則』を読んだ読書レビューです。

著者 楠木 健先生のプロフィール

1964年生まれ。一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。
30代からH&D(ハゲ&デブ)の連続的な攻撃に悩まされた結果、「ハゲじゃなくてスキンヘッド」「デブじゃなくてがっちりした人」という対策を講じることで乗り切る(詳しくは『経営センスの論理 (新潮新書) 』を参照のこと)

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(プレンジテントオンライン より)

話があけすけかつユーモアたっぷりで面白く、私もサイン入りの著書を持っています。

「企業にとって最も重要なのは株主か従業員か利益か?」を説明する比喩として「金と地位と女、どれか1つ得られるとしたらどれから得ますか?金があれば地位も女もついてくる、地位があれば金も女もついてくる。つまりどれからでもいいのです。ただ、女を先に求めるとロクなことがない」と言っちゃう人です。

代表作は『ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books) 』。アスクルやガリバーインターナショナル、スタバの戦略が何故優れているのかを、ストーリーという概念で解説。戦略論の知識がなくても読める良書です。大学時代にこの本に出会いたかった。

 私のブログでは、1年前にLIXILの八木洋介さんと楠木先生の対談をレポートしています。 

nabeharu.hatenablog.com 

News Picks×楠木先生のお悩み相談連載が書籍化

今回紹介する『好きなようにしてください』は、ニュースキュレーションアプリのNews Picksの相談コーナーが書籍化されたものです。News Picksと楠木先生という絶妙にマッチしない組み合わせをアレンジした方に乾杯です。

<相談内容の一例>

  • 大企業とスタートアップで迷っています
  • 今すぐ起業すべきか、それとも1年間修業してからにすべきでしょうか? 
  • 上司にやる気がないので、転職しようと思うのですが
  • 東大とスタンフォード大学、どちらに行くべきでしょうか?
  • 30代でいまだに仕事の適性が分かりません etc...

 News Picksの企画だけあって仕事やキャリアの相談が多いですね。こういった相談にひたすら楠木先生節で答えていく。ただそれだけの本なのですが、それがやたらと面白い、楠木先生ワールドにハマりそうです。

相談に対する回答は(ほぼ)すべて「好きなようにしてください」

「大企業とスタートアップで迷っています」に代表されるような答えのない悩みにひたすら答える本書ですが、回答のほとんどすべて(50の相談のうち40以上)が「好きなようにしてください」です。

途中、あまりに「ベンチャーか大企業か」系の相談ばかりで「好きなようにしてください」の言い方のバリエーションが豊富になっていくくらいです。私の一番好きな「好きなようにしてください」が下記。

相談:大学生ですがスタートアップ企業でのアルバイトにハマりました。大学を中退したほうがいいでしょうか(実際の相談はもう少し長いです)

回答:僕のいつもの決めぜりふをよどみなく引き出しまくりやがるためにあるような、ジャストミートなご質問。ナイスですね。ナイスすぎるといっても過言ではありません。それでは大変長らくお待たせしました。北は北海道から南は九州・沖縄までの日本全国津々浦々、100万人の「ベンチャーに行くべきか」でお悩みのあなたに結論です(せーの、でご唱和をお願いします)。
好きなようにしてください。

もちろん、本当に「好きなようにしてください」の回答だけでは連載にも本にもなりませんから、短い相談文から楠木先生が相談者の状況をあれこれ推察して、関連ある持論に余談、たまーに具体的アドバイスが展開されます。
上記のスタートアップ企業のアルバイトにハマっている学生への回答にも実は続きがあって、「好きなようにしてください」というお決まりの結論の後にトレードオフの本質についての余談が始まり、余談の先の余談である分身の術と不老不死についての見解(?)が披露され、人生で本当に憂うべきはマクロでは戦争、ミクロでは疾病のみという持論が繰り広げられ、最後には「中退ではなく1年休学ではどうでしょう」という割と現実的な代案が提示されます。

この持論と余談、脱線のリズムがやたらと心地よく、知らない人の人生の相談という割とどうでもいい話題にも関わらず、小説のようにすいすいと読めるのが本書の特徴です。

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このように、「好きなようにしてください」と回答しながら楠木先生の主張や趣味、人生観や仕事観が垣間見える本書。その中でも特に気に入っているのが下記の2つです。

仕事の価値は顧客が決める

「まずは相手を儲けさせる。それで初めて自分が儲かるのが商売の基本」というフレーズが本書には何度も出てきます。どんなに努力をしようが、時間をかけようが、相手にとって価値とならないものは何の意味もない。そういった類のものは趣味と自己満足である、と。

言葉にしてみるとごくごく当たり前のことなのですが、仕事やキャリアで悩んでいる相談者に対する楠木先生の回答から、仕事の本質を思い出させてくれます。

環境で人生は左右されない

ベンチャーなのか大企業なのか、東大なのかハーバードなのか、日本なのかインドなのか、どちらのほうが自分の人生にとって得なのか・損なのかに悩む相談者に対して楠木先生は、「大事なのは環境よりもそこで自分自身がどんな行動をとるかだ」と、環境よりも行動のほうが大事としています。

ハーバード大学に行けば自動的に優秀になれるわけではなく、ハーバード大学で努力するから優秀になれるわけです。もちろん、結果的に見てどちらのほうが自分に向いていたかどうかはあるかもしれませんが、結局のところやってみる前に完全な正解は分からない。そうであれば、正解がどちらかと思い悩むよりも、その時の感覚に従ってえいやっと決断してしまえばいい。結果的に選んだ選択肢がどうも違うようであればそこからやり直せばいい。まさに、「好きなようにしてください」という言葉に凝縮された楠木先生なりの価値観です。

私的にこの考えがすんなりと受け入れられるのは、「選んだ選択肢を絶対に正解にしてやる!」という暑苦しい思想ではなく、「違ったら違ったでまた他の道に行けばいいじゃない」という楠木先生独特のユルさが根底にあったうえでの「好きなようにしてください」だからかと思います。
(選んだ選択肢を絶対に正解にしてやる、という考えも好きですけどね)

 

仕事やキャリアに悩んでいる方、NewsPicksのコメント欄の意識高い感じが苦手な方は、ぜひ息抜きに読んでみることをオススメします。

ケネディが最も尊敬する日本人『上杉鷹山』読書レビュー

久しぶりに読書レビューです。今回の本はコチラ。

『小説 上杉鷹山』童門冬二 著
文庫で684ページとかなり長いですが、時代モノの割りにスイスイ読めるので是非読んでいただきたい名作です。 

ケネディが最も尊敬する日本の政治家 上杉鷹山

1961年、35代米国大統領に就任したジョン・F・ケネディが日本人記者団からの「日本で最も尊敬する政治家は誰ですか?」という質問に対して「上杉鷹山です」と答えたらしいです。
残念ながら記者団の中に上杉鷹山を知っている人はおらず、皆ぽかんとしてしまったとのこと。

今日は、そんな上杉鷹山の魅力をご紹介します。

破綻していた米沢藩の財政を立て直した上杉鷹山

上杉家といえば戦国大名の上杉謙信が有名ですね。武田信玄のライバルとしてよく描かれます。
上杉鷹山は上杉謙信から数えて10代目の当主で、謙信と直接血のつながりのない、義理の子孫です。

鷹山が藩主就任前の上杉家は、関が原の合戦で石田光成に味方したために会津120万石から米沢30万石に減封され、その後藩主の急死もあって更に15万石に減らされています。
藩の収入が8分の1になったにも関わらず、元名門の見栄か誇りか、藩主を含む幹部達が120万石時代と変わらない経営を行ったためたちまち財政は火の車。苦し紛れに重税を課したことで人心は離れて…とまさに最悪の状況で17才の鷹山(当時の名は治憲)が藩主に就任するところから話しは始まります。

そこから鷹山はあの手この手で藩の財政を立て直す施策を打ち、領民の心を掴んで上杉家を再興させていくわけですが、その過程がとても面白いです。
300年も昔の話なのに何故こんなに人を惹きつけるのか。その見所をご紹介します。

f:id:nabeharu:20160131190317j:plain(鷹山公の像)

現代の経営にも通ずる課題が盛りだくさん

そうした課題だらけの上杉藩を改革すべく奮戦する鷹山ですが、改革を進めるうえでぶつかる様々な壁は現代の経営においても「あるある」と頷けるものばかり。改革を妨げる一部を紹介すると、

  • トップの命令を表向きは了承するも結局は実行しない、面従腹背の領民(現場社員)たち。
  • 改革の大枠は賛成するも、自分に関係のある箇所の変化だけは反対する、総論賛成・各論反対の幹部たち。
  • じわじわと状況を悪くした幹部たちは、「休まず・遅れず・仕事せず」。さぼっているわけではなく、さりとて物事を前に進めるわけでもない実行力のない人材と雰囲気。
  • 前例を気にして新しい取り組みが浸透しない、前例主義の風土。

などなど、現代の組織経営でもありがちな壁がたくさん登場します。
特に鷹山は上杉家には養子としてもらわれてきており血のつながりはなく、かつ藩主就任時は17才の若輩だったため、周りからはナメられまくりという逆風の中改革をスタートさせます。

改革すべきは人の心・トップが範を示す

そういった課題だらけの藩改革で様々な手を講じるわけですが、改革において最も重要なのは人の心だと一貫しているのがグっときます。
家臣1人1人、領民1人1人が本気で改革のための行動を起さないと、いかに優れた再建案も絵に描いた餅だと分かっているのです。

特に象徴的なのは、徹底して上の者が範を示すこと。

倹約のための「日常の食事は一汁一菜」「衣服は木綿」という方針も、農業改革のための「桑の栽培の推奨」も鷹山自ら実践してみせ、更には自身の生活費を従来の7分の1に減らすことまでしています。
ここまで徹底して範を示すことで、当初は「木綿の服を着るといってもそれはポーズで、屋敷に帰れば豪華な生活をしているに決まってる」と陰口を言われていた鷹山が徐々に領民の信頼を得ていき、領民の心に改革の火が徐々に灯ることが改革の原動力となっていきます。

風通しがめちゃくちゃ良い

鷹山が気を許している側近に佐藤文四郎という人物がいます。文四郎はとにかく愚直で誠実。鷹山の進める改革のためには何でもする覚悟の人物です。
そんな佐藤文四郎が、鷹山にマジギレするのが私の好きなシーンの1つです。

学校を開設するための準備を進めていた文四郎が、授業のために領内の「孝・節」の高い人材を徹夜で整理して鷹山に渡し、鷹山から先生に渡してもらうよう頼みます。しかし鷹山はうっかり名簿を渡すのを忘れてしまうのです。
そこで文四郎が数ページに渡って鷹山にマジギレするシーンが見もの。

「なにゆえ、あの名簿を細井先生にお見せになりませんでしたか」

「忘れたのだ。徹夜をしたおまえの努力をまったく無にした、すまぬ」

「私がおたずねしているのは、徹夜のことなんかではありません!お屋形さまはまったくおわかりになっていらっしゃらない」

(中略)

「文四郎、このとおりだ。許してくれ」

と、治憲はついに手をついた。

「お屋形さまが謝るのですか、ご主君が家臣に謝るのですか。それで、家臣が、よし、許すといえば、あなたさまはそれでご満足なのですか、そうですか、あなたはさまはその程度のご主君なのですか」

と、主君に対する文四郎のブチギレ具合がすごい。

このシーンで、鷹山も文四郎も改革に本気なこと、大事なのは改革が進むことであって、偉い人にただ従うことではないこと、それらのことを鷹山・文四郎の仲で共通認識があり、信頼関係を築けていること、などが伝わってきます。

鷹山の改革が成功した要因の1つには、賄賂やおべっかを言う重臣ではなく、耳に痛いことでもズケズケ言う家臣を重用したことにあります。

あの名言も上杉鷹山!

鷹山は名言・格言もたくさん生み出しています。

なせば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり

「やればできる!」と根性論的に使われることが多いですが、鷹山が本当に粘り強く改革を推し進めたことを知ってからこの言葉を聞くとまた違った受け取り方ができます。

してみせて 言って聞かせて させてみる

真偽は不明なのですが、これも鷹山が言ったとされています。
後に山本五十六が残した、「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」の元の言葉となったようです。

 

上杉鷹山の魅力を想いのまま紹介しましたがいかがでしたでしょうか。
個人的にはNHKの大河ドラマになることを熱望しています。
ご興味があれば是非読んでみてください。

新年の抱負を実現させるためのコツ

新年に立てた目標は達成されない?!

新年明けました。気持ちを新たに目標を立てたり新年の抱負を述べた方も多いと思います。
お正月の開放的な気分でついつい高い目標を立ててしまい、1年振り返ってみると全然達成できていない、なんてことありませんか?
(ちなみに私の2015年の目標は体重5キロ減に対して3キロ増でした。達成率-60%!)

下記サイトによれば、8%の人しか新年に立てた目標を達成できていないそうです。

any-stress.com

そこで今回のブログでは、新年の抱負を言うだけでなく達成させるためのコツを共有したいと思います。

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既にある習慣にリンクさせて行動定着させる

今回のブログは下記の本を参考にしています。

人材育成担当者のための絶対に行動定着させる技術

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目標を具体化するだけでは達成されづらい

抽象的な目標ではなく具体的な行動を立てよう、というのは聞いたことがあるかと思います。
確かに、「本をたくさん読む」よりも「月に本を3冊読む」の方がより達成できる気がします。実際、この目標でもしっかり本を読める人はいるでしょう。

しかし、人は弱いものです。つい忙しくて、体調が悪くて、などの理由で本を読む時間を作れないことがあります。

せっかく具体的に立てた目標が中々達成できない理由は、立てた目標をいつやるか、の視点が抜けているからです。

普段やっている習慣の「ついで」にできる行動目標を設定する

人は本質として変化を嫌うので、新しい目標を立てて実践することは本能的に苦痛だったりします。これまで本を読む習慣がなかったのに急に本を読もうとしても中々行動に移すことはできません。

そこで、普段自然と行っている習慣にリンクさせて「ついで」にやることで、苦痛を感じずに目標達成のための行動定着がしやすくなります。

先の「月3冊本を読む」という目標であれば、例えば下記のようになります。

  • 通勤電車に乗っているときは本を読む
  • 毎週土曜日のコーヒータイムの間は本を読む

ここでのポイントは、「通勤電車に乗る」「毎週土曜日のコーヒータイム」は特に努力しなくても続いている習慣になっていることです。努力も意識もせずにできる習慣をトリガーにして、「ついで」にやることで、新しいことを始めるという本能的な苦痛を感じずに、無理せず行動が定着できるようになるのです。

 

このように、せっかく立てた新年の目標がキチンと達成できるように、習慣にリンクさせた行動にまで落とし込んでみてはいかがでしょうか?

人事部員のバイブル『戦略人事のビジョン』読書レビュー

今週のはてなブログのお題が「人生に影響を与えた1冊」なので読書レビューを。

↓紹介する本はコチラ↓

元日本GEのシニアHRマネジャー、現LIXILの人事担当副社長の八木さんの本です。
八木さんは私が最も注目し、尊敬している人事パーソンで、記事タイトルは煽りではなく、真面目に全ての人事部員必読と思っています。

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本書の要点

目次は下記の通り

◆第一章 人事は何のためにあるのか
◆第二章 組織の力を最大限に高める
◆第三章 改革の旗を振る
◆第四章 リーダーを育てる
◆第五章 「強くて、よい会社」を人事がつくる

小手先の施策ではなく、経営戦略としての人事を考えるうえで必読の一冊。

創業130年、グループ従業員30万人の「世界で最も尊敬される企業」「最強企業」と称されるGEのDeNAを受け継いだ八木さん唯一の著書。

GE本体の経営や戦略を知るにはジャック・ウェルチの『ウィニング 勝利の経営』を読むのがいいですが、日本人かつ人事の目線で書かれた『戦略人事のビジョン』はより平易に分かりやすく書かれています。

正しいことを正しくやることの凄み

経営戦略としての人事 については私がどうこう言うのも野暮なので、ご自身で読んでいただくとして。

本書から一番強く感じられるのが、正しいことを正しくやることの凄み です。

例えば、八木さんは書内で「年功序列は三ヶ月でなくせる」と断言しています。
そのやり方はとてもシンプルで、「各部門の各年代のキーマンをと面談し、その中で一番仕事ができる人にその部門のトップを任せる」というもの。
中には若い社員が部門のトップに立ち組織がぎくしゃくすることもあるでしょうが、仕事ができる人をトップにすえれば三ヶ月もたてばおさまるとのこと。

これは正しい。ぐうの音も出ないほど正しい論理です。
ですが、このあきれるほど正しい施策を実際に実行することがどれだけ難しいか。納得感の出る報酬体系や既存評価制度の見直し、既存社員・労働組合等への納得のいく説明、実施後の若手マネジャーへのフォロー等々、少し考えるだけでもクラクラしそうです。普通だったら、3ヶ月で実行なんて軋轢が生まれてうまくいかないので数年かけて少しずつ是正を…なんて考えてしまいそうです。

それを八木さんは、正しいことを正しくやればできる と言い切っており、そして実際にGEで、LIXILで実行しています。

そんな八木さんの凄みと格好良さに勇気をもらい、自分の至らなさに気づかされることから、本書を定期的に読み直すようにしています。

特に読み返しているポイント(箇条書き)

以下、特に私が読み返しているポイントを箇条書きで。

  • 年功序列は三ヶ月でなくせる
  • GEの9ブロック
  • 評価は主観
  • 組織開発ができなければ人事ではない
  • リーダーは希少な存在、だから育てる
  • 「俺の会社」と言い切れるような強いこだわりを持つ 

就活生にもオススメ!『マーケット感覚を身につけよう』を読んでみた

ちきりんの『マーケット感覚を身につけよう』を読んでみた

前から気になっていたので読んでみました。とても良かった。

ちきりんいわく、論理的思考力と同じくらい重要なのがマーケット感覚であり、論理的思考力同様マーケット感覚も訓練で鍛えられるとのこと。

(目次)

  1. 市場と価値とマーケティング感覚
  2. 市場化する社会
  3. マーケット感覚で変わる世の中の見え方
  4. すべては「価値」から始まる
  5. マーケット感覚を鍛える5つの方法
  6. 変わらなければ替えられる

自社の商品やサービスの本質的な価値は何か。自分の仕事の本質的な価値は何で、それはいくらで売れる(お給料をもらえる)のか。
そんなことを考えさせてくれました。

就活生にもオススメ

ちきりんによれば、日本の学校は極めて市場性が低くマーケット感覚を得づらい場所とのこと。
小学生~大学生3年生まで15年間、市場性の低い環境に身をおいてきながら、就職活動で一気に市場原理100%の場所に一斉に放り出されて戸惑う方も多いのだと思います。

『マーケット感覚を身につけよう』 を読んだところで就職活動がうまくいくようになるわけではもちろんないですが、これから社会に出るにあたって、「自分の価値とは何か、誰が何に価値を感じてお金を払うのか」と本質的な問いを考えてみるのもいいかもしれません。

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逆求人イベントはマーケット感覚を養う最高の機会

最近は逆求人型の採用イベントが増えてきています。
私の会社でもジースタイラス社サポーターズ社などのイベントでお世話になっています。

通常の合同説明会では企業がブースを用意して、学生がブースを訪問して企業の説明を聞きます。
逆求人イベントではその逆で、学生のブースを企業が訪れ、学生の自己紹介プレゼンを聞きます。
余談ですが、「人」を「求める」のが「求人」なら逆求人イベントは"逆"ではなく正しく求人イベントなのでは?という気がしています。通常の合同説明会は求職イベントと区別されるようになることがある...かも?

この逆求人イベント、下記のように学生も企業も否応なしに市場からの評価に晒されます。

  • そもそも参加するためには運営会社の審査を通る必要がある
  • 企業が面談学生を指名する(指名が集中する学生もいればほとんど指名が入らない学生もいる)
  • 学生の自己PR後、企業から1対1でフィードバックを受ける
  • イベント終了後、企業から得点と順位をつけられる
  • 学生も企業を評価し、順位をつける

これだけ市場原理に沿った評価が濃密に行われれば、今の自分が企業から見てどれだけ評価されるのか、されないのかが嫌というほど分かります。
参加学生に多大なプレッシャーを与えるこのイベントが盛り上がってきているのも、普段の学生生活ではまず体験できない、市場に晒される貴重な経験となるからでしょう。

逆求人イベントは、今のところほとんど全てのイベントが情報系学生を対象としているので、それ以外の学生は参加する機会がないかもしれません。
(情報系学生のイベントしかないという事実だけでも市場感が何となく見えてきますね)

特に文系の学生は、理系学生に比べてスキルや実績などを他学生と比較しづらいのでマーケット感覚を得る機会が少ないようです。
そんなアナタは、インターンシップに参加してみてはいかがでしょうか?

サマーインターンシップで市場評価に晒されてみる

ここ数年、夏休みに数日~数週間のインターンシップを行う企業が増えてきました。
コンテスト型・職場体験型・実業務型など内容も多種多様で、参加のための説明会や選考会が各社で行われています。

どれもマーケット感覚に晒される体験ができる良い機会だと思いますので、この夏はインターンシップに参加して市場に晒され、マーケット感覚を鍛えてみてはいかがでしょう?