倫理憲章、また変更になる可能性が出てきましたね。
今日のブログは、倫理憲章それ自体ではなく、議論の前提になっている「学生の本分は学業なのか」について思っていることを書きます。
学生の本分は学業?学業なんか役に立たない?
古くは就職協定、今でいう倫理憲章による採用時期に関する議論は、学生の本分である学業が就職活動によって著しく阻害されることを問題視されたものでした。
一方で、授業がつまらない、単位を取るのがカンタン、などの理由で大学で真面目に授業を受けても役に立たない、という意見の方もいます。極端なものだと↓のように、「学業よりも就活のほうが成長できる!」という主張まであります。
学生の本分は学業だから就職活動なんかせずに、在学中は学業に集中したほうがいい!という意見と、学業なんて何の役にも立たないんだから社会との接点を持てる就職活動したほうが成長できる!という意見。私にはどちらも極端すぎて本質が抜け落ちているように感じます。
人生を豊かにするための学業
大学生、特に文系学部生の多くは専攻とは直接関係のない就職先を選択します。そのことを指して、将来役に立たない知識を身につけても無駄...と捉える人もいるかもしれません。確かに、フランス文学史の知識もマクロ経済学の複雑な数式も徹夜で暗記した民法も、就職後すぐに役に立つことはおそらくないでしょう。
しかし、学問を学ぶのは、そこで得た知識を短期的かつ直接役に立てる場合だけではないはずです。
その学問を修めることで身につけた多様な知識や価値観、学習方法、物事を深く考察する思考力、他者との協力や議論等が、長期的に見れば必ずその人の人生を豊かにするはずです。
大学教育に抜け落ちているのは社会とのリンク
学業 = 人生を豊かにするためのもの、と位置づけると、確かに現在の大学教育は世情に即していないように感じます。
多少改善の動きが見られるとはいえ、知識偏重の詰め込み型・一方的な講義・教授の授業下手/低いモチベーション・扱っている内容が古すぎる 等々...。
社会とのリンクが見られず、大学内でのみ通用する学問/知識をたくさん身に着けた学生が学内では高く評価される状況では、大学での学業は無駄と言われてもある程度仕方ないかもしれません。
就職活動が、初めての社会との接点になっている
現在の大学での学業だけでは、社会との接点に触れたり考えたりする機会が少ないので、多くの学生は就職活動で初めて社会と接することになります。
偏差値やテストの点数など明確な指標があった世界から、急に自分が行きたい進路を自由に選べと言われ、グループディスカッションや面接という基準があいまいかつ身1つで勝負せざるをえない状況に放り込まれるのだから、戸惑って当たり前です。
多くの学生がそうして戸惑い、初めは失敗しながらも段々と社会と自分との接点を見つけ、納得のいく就職先を見つけることになります。就職活動が長期化している原因の1つは、企業の採用活動時期うんぬんではなく、こうした社会と自分との接点を見つけることに時間がかかるためだと思っています。
逆に言えば、短期間で複数の内定を勝ち取る一部の学生は、それまでの学生生活で社会とリンクする活動をしていた人でしょう。
社会とのリンクを意識しながらも、学業を頑張ってほしい
学生の本分は学業。私自身はこの意見には全面的に賛成です。
どんな分野であれ、本気で試行錯誤しながら学ぶのであれば、その後の人生で必ずプラスに働きます。一方で、講義をまじめに聞くだけ、テストの前に一夜漬けをするだけ、の学習をしているだけでは将来のプラスにはあまりならないでしょう。
今目の前のものに盲目的に取り組むのではなく、将来社会に出たときに必要な能力や経験、思考はどういうものかを意識したうえで学業に取り組みましょう。もし、今のカリキュラムだけでは社会とのリンクが薄すぎると感じるのであれば、自らそういった場を探したり作ってみればいいです。きっと、今までにない世界が広がって人生が豊かになることと思います。
(おまけ)社会とのリンクを意識している秋田国際教養大学
社会とのリンクを強烈に意識している大学もいくつかあって、そのうちの1つが秋田国際教養大学です。
- 授業は全て英語
- 半数以上が外国人教員
- 1クラス平均17人の少人数制
- 1年間の海外留学が義務
- 在籍学生の5人に1人が留学生
などなど、社会(というかグローバル)を強烈に意識した特徴を持っています。就職率も98%とべらぼうに高く、県外含めて高校生からの人気が高いそうです。
こういった、強烈な個性やコンセプトを持った大学が今後ますます増えるかもしれませんね。