なべはるの人事徒然

フィードフォース人事の中の人。採用、教育、評価制度、組織活性など、日々考えていることを綴ります。現在人事で働いている方、人事の仕事に興味のある方、就職活動中の学生などに読んでいただけたら幸いです。

歴代ジャンプ漫画の悪の組織 心理的安全性ランキング

お正月らしく(?)マンガネタです!

悪の組織の心理的安全性が気になる!

心理的安全性という言葉はご存知でしょうか?
チームのメンバーが、チームに対して(評価や評判を気にせずに)気兼ねなく発言できる状態のことを指します。

2016年に、Google がチームの生産性向上にはこの「心理的安全性」がもっとも重要だという調査結果を発表したことで、にわかに注目を集めています。

gendai.ismedia.jp

と、ここでマンガ好きのわたしとしてはふと思いつきます。

マンガに登場する悪の組織の心理的安全性はどうなっているだろう?心理的安全性の高い悪の組織はあるのだろうか?…と。

というわけで(?)!歴代ジャンプ作品の中から、心理的安全性の高い悪の組織をまとめてみました!

審査基準は、「組織として成果を出す仕組みや雰囲気になっているか」「上司と異なる意見を出しやすいか」「その組織に入りたいと思えるか、雰囲気が良いか」の3つです。もちろん独断と偏見です!

ランク外の悪の組織たち

ランキング発表の前に、ランク外の悪の組織たちを紹介します。この組織は心理的安全性が低い…絶対入りたくないと思える組織たちです。

『ドラゴンボール』 フリーザ一味

まずは、悪の組織と聞いて真っ先に思いつくのがフリーザ一味ですが、フリーザ様の恐怖政治による独裁体制で、フリーザ様に意見を言えそうな雰囲気がないのでランク外です。
ギニュー特戦隊は、隊長のギニューに対して意見を言ったりジャンケンでものごとを決めたりと良い雰囲気なのですが、5人にしかいないのは組織と言えないだろうとノミネート外です。今回は10名以上の組織がノミネート対象です。

『ワンピース』 バロックワークス

ワンピースには組織的な行動をしている組織があまり描かれないのですが、クロコダイル率いるバロックワークスは唯一「会社」としての活動をしています。

しかし、フリーザ様とおなじくトップのクロコダイルによる恐怖政治であることと、部下の序列を「No.1」「No.2」という名称で呼んでいるのがなんだかギスギスしそうなので、ランク外です。

『BLEACH』 十刃(エスパーダ)

組織だった行動はしないし、トップの愛染さまの良く分からないオシャレな理由で罰を受けそうだしで、絶対入りたくないです。

『シャーマンキング』 ハオ一味

雰囲気は良さそうですが、組織のトップが心を読めるなんて絶対イヤです。

心理的安全性が高い悪の組織ランキングを発表!

さあそれではいよいよ、心理的安全性が高い悪の組織のランキングを発表です。まずは第3位から!

第3位 『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』 バーン様率いる大魔王軍

第3位は、『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』に登場する大魔王軍です。

バーン様率いる大魔王軍の組織の大きな特徴は、中間管理職をしっかり置いてきれいな組織図を作っていること。

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『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』より。きれいなピラミッド組織

大魔王バーンをトップに、魔軍司令ハドラーを最高執行責任者として現場のトップに置き、さらにその下に不死騎団長ヒュンケル、氷炎魔団長フレイザード、妖魔士団長ザボエラ、百獣魔団長クロコダイン、魔影軍団長ミストバーン、超竜軍団長バランと、6人の部長クラスが存在します。ちなみにキルバーンは監査役。
バーン様からの指示は直属の部下である魔軍司令ハドラーに出し、ハドラーが各軍団長に具体的な指示を出します。ハドラーを飛び越えてフレイザードやバランに指示を出すことは基本的にはないのです。
また、社員の得意分野に合わせて配属が決められるという組織力。後にも先にも、ここまでしっかりと組織だった動きができている悪の組織は他に知りません。

指揮命令がしっかりしていて、誰の命令を聞けばいいかが明確な組織は働きやすそうです。「世界征服」という分かりやすく明確な目標だからこそピラミッド型組織のメリットが生きますね。識学とか導入したら成果出そう。

また、バーン様の懐の深さも評価ポイントです。
失敗に失敗を重ねたハドラーに対して、「3度までは失敗を許そう」とし寛大な態度を示し、なおかつ3度めの失敗をやらかしたハドラーにも過去の功績でチャラにするからもう1度チャンスを、と許してしまいます(部下に対して声を荒げて叱責しないというのもポイントです)

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『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』より。過去の功績で失敗を1つチャラにしてくれるバーン様

心理的安全性において大事なポイントの1つ「失敗を恐れずにチャレンジできるか?」において、バーン様率いる大魔王軍はチャレンジしやすい環境と言えるでしょう。他の作品に出てくる悪の組織は1度失敗しただけで始末されるのが当たり前ですから。

このように組織図がしっかりしていて比較的チャレンジしやすい環境の大魔王軍ですが、残念な点もあります。

組織のトップである大魔王バーン様は、ほとんどすべての部下に対して自身の姿を見せないのです。直属の部下であるハドラーに対しても、物語の終盤までは上の画像のとおりカーテン越しでの会話で姿を見せることはありませんでした。
これは、典型的な社長の顔が見えない組織…。社長が社長室にこもって現場を見ない会社のようで、あまり居心地が良くなさそうです。

そんなバーン様の秘密主義が良くなかったのか、結果的にバーン様は部下から慕われなかったようです。7人の管理職のうち最終的にはハドラー・ヒュンケル・クロコダイン・バランの4人が敵組織である勇者サイドに裏切ってしまうのです。4人のうち1人でも裏切ってなければバーン様の目的は達成することができたでしょうに、残念です。

大魔王軍の心理的安全性評価

  • 組織図をしっかり作り指揮命令系統が明確である
  • 組織のトップであるバーン様の人柄は威厳がありつつも穏やかで、声を荒げて叱責したりしない
  • 失敗にある程度寛容である
  • 部下の過去の成果を正当に評価してくれる
  • トップの顔が見えない。結果的に部下からの人望を得られなかった

第2位 『るろうに剣心』 十本刀

続いて第2位は、『るろうに剣心』の十本刀です。

トップの志々雄真実はめちゃくちゃワンマンで恐怖政治の典型のように思われるかもしれませんが、よくよく見るとなかなかの組織運営をしていることが分かります。

十本刀の面々は、個性も目的も様々。これだけ個性的なメンツを曲がりなりにも命令に従わせる志々雄の手腕はかなりのものです。"盲剣"の宇水に至っては「スキがあれば志々雄に斬りかかる」ことを条件に十本刀入りしているほど。自分の命を狙う男でさえも組織に受け入れる懐の広さ!上司に斬りかかれるなんて、なんという心理的安全性(違)

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『るろうに剣心』より。個性も目的も様々な十本刀

そんな懐の広さが人望につながっているのか、ほとんどの悪の組織について回る「部下の裏切り」イベントが十本刀には発生しません("刀狩り"の張は後日警察サイドに寝返りますが、志々雄編終了後なのでノーカウント)。この点から、バーン様の大魔王軍に比較して、働きやすい職場であったことが推察されるので大魔王軍より上位にランクインです。

そして十本刀にはもう1つ、心理的安全性の高さを表す大事なエピソードがあります。それは方治の志々雄への進言です。
十本刀の運用方法について志々雄と方治の意見が割れ、「いつから俺に意見する程偉くなった」と志々雄にすごまれた後の下記の発言。

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『るろうに剣心』106話 蛇蝎の如く

あの怖い志々雄に向かってこの発言はすごい。トップからの評価を気にせず、ただただ組織のために進言できるのは良い組織です。
この後、なんやかんやあって志々雄は方治の進言を受け入れて作戦を変更します。部下からの進言を受け入れ、前言を撤回できる悪の組織のトップというのはかなり珍しい。わたしの知る限りでは志々雄と『アカギ』の鷲巣さまくらいです。この一連のやり取りを評価して2位にランクインです。

十本刀の心理的安全性評価

  • 個性も目的もバラバラなメンバーを1つの目的に向かわせている
  • 組織のトップの志々雄が多くのメンバーに慕われており、部下の裏切りがない
  • 部下がトップからの評価を気にせず組織のために良いと思うことを発言している
  • 部下からの進言を受け入れ、前言を撤回するトップの懐の広さ

第1位 『ハンターハンター』 幻影旅団

さて、歴代ジャンプ悪の組織の心理的安全性ランキング堂々の第1位は、「ハンターハンター」の幻影旅団です!

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『ハンターハンター』より。団結感もバッチリ

まず、幻影旅団の大きな特徴はメンバー間の仲が良く、組織の雰囲気が良いことです。
任務までの空き時間に一緒に買い物したり(シズクのダイヤやヨークシンのオークション)、オフにはゲームをしたりしています(グリードアイランド)。これは、かつての悪の組織には見られなかった独特の雰囲気です。おれもシズクとゲームしたい。

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『ハンターハンター』より。シズクの買い物に付き合うフランクリンとフェイタン

また、トップのクロロの人柄は志々雄やバーン様と違って親しみやすく、部下からも慕われているのが分かります。
そして何より素晴らしいのが、単に命令するだけではなく部下が納得できるように周辺の背景ややるべき理由をしっかりと説明していることです。こんな悪の組織のトップこれまでなかった!

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『ハンターハンター』より。命令に納得できないノブナガに背景と理由を説明するクロロ

十本刀と同様、部下の裏切りがいまのところない(ヒソカは蜘蛛に入ってないのでノーカウント)点も評価に加え、堂々の第一位です!

幻影旅団の心理的安全性評価

  • メンバー間の仲が良く、プライベートでゲームしたりしてる
  • 組織のトップであるクロロの人望があり、親しみやすく意見を言いやすい。裏切りもない
  • 指示を出すとき、周辺の背景を説明して部下の納得感を高めている

幻影旅団の組織って…ホラクラシー? 

以上、悪の組織の心理的安全性ランキングでした!

…と、ここまで書いて気づいたのですが、幻影旅団って今流行りのホラクラシー組織じゃないですか?

ホラクラシーの特徴をざっくり「メンバーへの権限移譲」「人ではなく役割に仕事をつける」「遵守すべき憲法が存在する」の3つだとすると幻影旅団では下記のとおり。

  • メンバーへの権限移譲・・・組織の活動方針はクロロが決めるが、個別の戦術や戦闘は団員の裁量に任されている。ひとたび戦闘に入れば団員を信頼し疑わない
  • 人ではなく役割に仕事をつける・・・クロロの「頭も蜘蛛の一部。頭が死んでも誰かが跡を継げばいい」という発言は、まさに人ではなく役割に仕事をつける考え方。
  • 遵守すべき憲法が存在する・・・細かなマネジメントはされない一方で、「団員どうしのマジギレご法度」「モメたらコインで」と最低限守るべきルールが設定されている。

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『ハンターハンター』より。モメたらコインで決めるルールは作中で徹底されている

これは、完全にホラクラシーじゃないですか…!さすが富樫先生、時代の先をいっています。13人という少数のプロフェッショナルだからこそ成り立つ組織だという点も合点がいきます。

こうして、悪の組織を組織論にあてはめて考えてみるとまた新しい発見があって面白そうですね。

以上、お読みいただきありがとうございました!