なべはるの人事徒然

フィードフォース人事の中の人。採用、教育、評価制度、組織活性など、日々考えていることを綴ります。現在人事で働いている方、人事の仕事に興味のある方、就職活動中の学生などに読んでいただけたら幸いです。

『シンプルに考える』を読んだシンプルな感想

元LINE株式会社社長 森川亮さんの『シンプルに考える 』を読みました。

ここ最近(特に現社に転職後は)、未熟ながらも「本質はどこにあるんだろう」と考える機会が増えてきたので心に沁みました。

共通するのはユーザーの価値を最優先にすること

タイトルのとおり、「何が本質なのか」を突き詰めることで思考も行動もシンプルにしていく過程が森川さんの経験と共に綴られています。

「戦わない」「差別化は狙わない」「計画はいらない」「偉い人はいらない」「会議はいらない」などなど、全部で40の森川さんルールが登場しますが、全てに共通しているのは、ユーザーの価値を最優先にすることです。

差別化も計画も偉い人も会議も、LINEというスマホのコミュニケーションツールとしての価値を高めるなら必要だし、そうでないなら必要ない。とてもシンプルで分かりやすいです。

自社にとってのユーザーの価値とは何か

読後に私たちがするべきことは、森川さんルールを盲目的に自社に取り入れることではなく、自社にとってのユーザーは誰で、最大化すべきユーザー(toBの会社なら顧客)の価値とは何かを考えることだと思います。

ユーザー(顧客)の価値の最大化、その本質を突き詰めていくことで、森川さんのようなシンプルな思考と行動ができるようになっていくのでしょう。

人事にとってのユーザーとは

このブログは人事ブログなので、私たち人事にとってのユーザー(顧客)とは誰なのか少しだけ考えてみます。
利害関係者は多数いる人事ですが、ユーザー(顧客)をシンプルに考えていくと下記に集約されるかと思います。
≪人事にとってのユーザー(顧客)≫
・経営社
・従業員

 そして、最大化すべきユーザー(顧客)の価値を突き詰めると下記のようになります。

≪人事が最大化すべきユーザー(顧客)の価値≫
・経営者 ⇒ 経営目標達成(そのための採用・教育・組織活性その他)
・従業員 ⇒ その企業のユーザー(顧客)の価値向上へ最大限力を発揮すること(人員、スキル、環境その他)

企業としての本質をシンプルに突き詰めると「ユーザーの価値を最大化すること」であるならば、人事としての本質は「従業員がユーザーの価値を最大化できるよう支援すること」であるべき。

『シンプルに考える』を読んで、シンプルにそう感じました。 

 
(↓kindle版だと安くなってる…紙の本で買ってしまった…orz) 

研修担当者は必読!『無理・無意味から職場を救うマネジメントの基礎理論』読書レビュー

今週のはてなブログのお題が「最近おもしろかった本」なので、読書レビューを。

↓読んだ本はコチラ↓

「雇用のカリスマ」海老原嗣生さんの著書です。ドラマ化もした漫画『エンゼルバンク-ドラゴン桜外伝-』の海老沢康生のモデルとなったことで有名ですね。

海老原さんは『「若者はかわいそう」論のウソ 』からファンです。しっかりデータで根拠を示してくれる姿勢にに好感が持てます。

本書の要点

目次は下記のとおり

◆第1章 なぜ企業は社員のやる気を大切にするのか
◆第2章 難しいのは機会の与え方と支援
◆第3章 組織をイキイキとさせる古典的理論
◆第4章 指令や判断の根源がコア・コンピタンス
◆第5章 見栄えのいいメソッドよりも錆びない基礎理論を

なぜ社員のやる気が大事なのか、実際にマネジメントする際に何を気をつければいいのかを、マネジメントや戦略論の基礎理論を根拠に、実践に即した形で記されています。

巷にマネジメント・部下育成関連の本はあふれていますが、その多くは経験と勘、または信念によって書かれたものです。

一方、人事管理や戦略論の基礎理論を紹介する本も数多くありますが、実践的とは言いがたく、読んだ後に「で、どうすればいいんだろう」と首をかしげてしまうこともよくあります。

本書 『無理・無意味から職場を救うマネジメントの基礎理論』は、理論と実践のバランスが良く、理論を学びながら実践への活かし方をすんなりと身につけることができます(このあたり、海老原さんの流石のバランス感覚)

実践的な設問も多くあるので、考えながら、飽きずに読み進めることができます。

マネジメントに関する主要な基礎理論を一冊で押さえられる

本書では下記の基礎理論について触れられています。

どれもそれ単体で何冊も本が書けるくらいのものなので本書を読んだだけで全て理解した気になるのは危険かもしれませんが、理解の入り口としてざっくりと概要をつかむ分には本書で充分でしょう。

  • ハーズバーグの「衛生要因と動機付け要因」
  • マズローの「5段階欲求説」
  • ロックの「目標設定理論」
  • マクレガーの「X理論・Y理論」
  • 三隅二不二の「PM理論」
  • フィドラーの「コンティンジェンシー理論」
  • メイヨーとレスリスバーガーの「ホーソン実験」
  • ポーターの「競争戦略論(ファイブフォースによるポジショニング戦略)」
  • ハメルとプラハラドの「コア・コンピタンス論」

流行りの手法や理論に飛びつく前に、原理原則を押さえたこれらの基礎理論を理解するほうが役立つのだと最近感じるようになってきました。

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理論と経験があるから他者に正しく伝えられる

本書は下記のような方にオススメです。

  • 現在メンバーをマネジメントしており、やる気の出し方やマネジメント手法に自信がない方
  • 将来マネジャーになりたい方
  • マネジャー向け研修を検討している人事担当者

本ブログは人事担当者が主なターゲットなので、最後の人事担当者について触れておきます。

本書はマネジメントについて理論的実践的に学べるという点で間違いなく価値ある一冊ですが、目新しいマネジメント手法が取り上げられているわけではありません。理論で説明されずとも、勘や経験で同じようなことをやっていたよ、という方もいるでしょう。

現場で実際にメンバーと向き合っているマネジャーにとっては、理論を理解していようがいまいが、勘や経験を総動員して試行錯誤しながら良いマネジメントができているならそれでいいでしょう。実際、本書の文中にもあるとおり、勘と経験・口伝によりすばらしいマネジメントをしているマネジャーは数多くいます。

しかし我々人事担当者は、現場のマネジャーに正しいマネジメント手法を理解してもらわなければなりません。中には、新任マネジャーで勘や経験が働かない方、誤った方法に固執してしまっている方もいます。

彼らに正しくマネジメント手法を伝えるためには、基礎理論を理解し、理論化・共通言語化したうえで勘や経験を交える必要があります。

理論だけでは人はついてきませんし、勘だけでは多くの人に正しく伝えることができません。

勘や経験は実際の業務の中で磨いていくしかありませんが、理論は本書のような書籍で身につけることができます。上記に挙がっている基礎理論を説明できない、という方はぜひ読んでほしいです。

私自身、理論の習得も経験もまだまだなので日々勉強です。