倫理憲章の変更の影響で、一部大手企業は8月1日に選考解禁となりました。早速内定を出している企業もあるようです。そこで今回は、今年の人事界のバズワードであるオワハラについてです。
急に話題になったオワハラ
オワハラという言葉をご存知でしょうか。ここ数ヶ月で急速に広まった言葉です。
「就職活動終われハラスメント」の略で、企業が学生に対してあの手この手の圧力をかけることで就職活動を終わらせ、自社に内定承諾するよう働きかけるハラスメントのことです。
↓NHKの『おはよう日本』にも取り上げられていました↓
さてこのオワハラ、何だか言葉が一人歩きして論点が分かりにくいのと、どうしても感情的な議論になりがちでよく分からない状態になっているような気がするので、整理と考察をしてみます。
これまでもオワハラは存在していた
内定承諾への圧力が、今年急に現れたかのように報道されていますが、実は今に始まったことではありません。
セクハラという言葉が生まれる前にもセクハラがあったように、これまでにもオワハラは存在していたのです。
↓は2011年の記事。当時は今ほど景気も内定率も良くなかったはずですが、それでも内定学生への囲い込み、拘束旅行というのがあったようです。
そして、「バブル期並み」という表現をしているからにはバブルのときも同様の行為があったのでしょう。
バブル世代ではないので、詳しい方いたらコメントください。
悪質なオワハラ、ダメゼッタイ
オワハラにも色々な種類がありますが、悪質なものは下記のようなものです。
- 内定と引き換えに他社の選考辞退を強要する
ヒドいところだと、その場で内定辞退の電話をさせる - ↑の亜種で、ナビサイトの退会を強要する
- 他社の選考が受けられないように、面接や懇親会、研修と称して過度に拘束する
(どこからが過度か判断が難しいですが) - 内定を辞退すると暴言を吐かれる、採用費用を弁償しろと迫られる、訴えるぞと脅される
これらの悪質なオワハラは、採用する側とされる側という力関係が対等ではないことを利用して一方的に圧力をかけるもので、許されるものではありません。
しかし、私自身は報道されるほどオワハラが社会的な問題になるとは思っていません。
オワハラ自体を肯定しているわけでは全くなくて、悪質なオワハラを行う企業は市場原理によって自然淘汰されていくと考えられるからです。根拠としては下記のとおり。
- 悪質なオワハラは内定承諾には逆効果。内定承諾してもらいたくてオワハラをすればするほど承諾してくれなくなる
- 悪質なオワハラをした場合、露骨な学歴フィルターで炎上したゆうちょ銀行のようにインターネット・SNS等で晒される。すると、直接オワハラを受けなかった学生からの人気もなくなる
- 好景気の売り手市場が続いているため、オワハラを行う企業に我慢して承諾しなければならない学生が相対的に減っている。
上記のことから、長期的に見れば悪質なオワハラを行う企業は学生から就職先として選ばれず、クロージング手法を改めざるをえず、自然淘汰されていくと思っています。
売り手市場であるが故にどうしても自社に入社してもらおうと行われているオワハラですが、そもそも売り手市場では学生の交渉力のほうが強いので、本質的でなく倫理的にも受け入れがたいやり方では長続きするはずがないのです。
むしろ私が心配しているのが、本当はオワハラじゃないのにオワハラとされてしまう冤罪のほうです。
それ本当にオワハラですか?
先日、TVのニュースでオワハラが取り上げられていたのですが、そこでインタビューを受けていた学生がオワハラに感じた行為というのが、
- 何故その会社に入ったほうがいいかを1時間説得された
- 他社を受けたいから8月まで待ってほしいと伝えたら、1週間しか待てないと言われた
- 入社承諾書の提出を求められた
などなど。それはオワハラじゃなくて、普通の会社が普通のことをしているだけだろ、というものが山ほどありました。
オワハラという言葉が市民権を得たことで悪質なオワハラをする会社が淘汰されていくのは大歓迎ですが、過剰に反応し過ぎるのは学生にも企業にも不幸になりかねません。企業も学生も、本質を捉えた落ち着いた対応が求められています。