今回も新卒採用ネタです。
↓こんな記事を読みました↓
本来は当事者同士(現場社員と求職者)でやりとりができる採用や研修業務に人事が介在する価値とは何か、という興味深い記事でした。
記事によると、人事の介在価値は「効率性」と「潜在ニーズの掘り起こし」にあり、特に新卒採用ではその価値が発揮されやすいとのこと。
ちょうど、人事の存在意義って何だろう?と考えていたので、今回はその中でも新卒採用に焦点を当てて、私なりの「採用専任者の存在意義」について考えてみました。
高まる採用意欲、進む売り手市場
本題に入る前に市況感のおさらいです。
リクルートワークスの 大卒求人倍率調査 | 調査結果 によれば、2016年卒の求人倍率は1.73倍。昨年の1.61倍から0.12ポイント上昇しました。1.2倍台が続いていた2011年~2014年卒に比較すると↓の記事のように随分売り手市場になったといえそうです。
学生にとっては求人が増えたので自分の身の丈に合った企業さえ受けていれば就職しやすくなったわけですが、採用する側としてはそれだけ厳しい戦いになっています。
特に最近は数多くのベンチャー企業がメキメキ成長して熱心に採用活動を行っており、ベンチャー企業で採用担当をしている身としては数値以上の厳しさを感じています。
(中でもエンジニアの獲得競争は新卒中途共に筆舌を尽くしがたいものがありますが、話が脱線するので別の機会に)
採用専任者の存在意義
本題に戻ります。皆さんの会社には採用の専任者はいますでしょうか?このブログを読んでくださっている方には、「自分が専任担当者だ」という方も多いかもしれません。
規模の小さいうちは経営者や役員が採用を兼任して、ある程度の規模になってきたら採用専任者を雇うのが一般的なようです。最近は規模が大きくても選任者を置かずに、現場の社員をプロジェクトとして駆り出すところもあるようです。
私の会社は前者で、2015年卒の採用活動までは専任者を置かずに社長や役員が兼任で採用活動を行っていました。1年前に私が加入して、2016年卒の採用活動から私が専任で行っています(中途採用、評価制度、組織活性なども守備範囲なので完全な専任ではありませんが)。
そんな、「採用専任者なし」の状態から「採用専任者あり」の切り替えのタイミングで1年やってみた私なりに、採用専任者を置く意義について考えてみました。
説明会や面接など、スポットで見れば他に適任がいる
私が採用専任といっても、一人だけでは上記のような苛烈な採用競争に勝てませんので、説明会や面接、クロージングの場に社長・役員・現場社員を総動員して採用戦線を戦ってきました。
そして、それぞれの場にはそれぞれの適任がいます。社長に経営ビジョンを語ってもらいたい、現場エースに入社後の成長ストーリーを語ってもらいたい、若手社員に会わせて親しみを持ってもらいたい 等々…人事の私が出るよりも社内に他に適任がいるケースは山ほどあります。
となると、それら適任の社員を学生のニーズに合わせてアサインする、調整業務だけが採用専任者の意義なのか…?
バリューチェーンとしての採用活動
答えはNo!です。調整業務が採用担当者の大事な仕事であることは否定しませんが、それだけなら専任である必要はありません。
採用専任者の存在する意義は、採用戦略を一貫性のある活動に落とし込んで、採用活動のバリューチェーン全体としての価値を最大化できるよう設計・実行すること、だと考えています。
(出典:アクティブアンドカンパニーHP
http://www.aand.co.jp/consulting/hr/recruit.html)
上の図には色々書いてありますが、採用活動を大雑把に分類すると、
- ターゲットを決めて、
- 集めて、
- 選んで、
- 惹きつける
の4つの活動で構成されています。採用戦略を立てる際は、これらの連続性と一貫性が大事です。
例えば、ベンチャースピリットを持っている行動力の高い学生を求める企業があったとして、「集客はリクナビ・マイナビに掲載して会社説明会へ誘導」「説明会では福利厚生の充実をアピール」という施策を打っていては、仮に説明会や面接にエース社員や役員を動員したとしても間違いなく採用活動は失敗します。ターゲットに対して集める方法と惹きつける方法が明らかに食い違っているからです。
「ターゲットを決めて」「集めて」「選んで」「惹きつける」という4つの活動を、自社の求める人材と使えるリソースや市況感などを見ながら最適な打ち手を選択していき、一貫性と連続性を持ったバリューチェーンを設計することこそ、採用専任者の腕の見せ所だと思うのです。
一貫性と連続性を持ったバリューチェーンの設計、と一言で書きましたが、実際やることに落とし込むと、考えること・やることは山ほどあります。思いつくだけでも、
- 会社のビジョンにマッチした求める人材の策定
- 求める人材と自社のPRポイントにマッチした適切な集客方法の選定
- 学生の志向と温度感に合わせた接触ポイントの設計
- 各接触ポイントごとのメッセージングの設計と適切な対応社員のアサイン
- 求める人材の見極めと惹きつけに適した選考手法の設計と選考担当者のアサイン
- 上記選考フロー全体を通したクロージングストーリーの設計
- 内定後学生の適切なフォロー、辞退防止策の設計 等々…
これだけのことを設計・実行していくには兼任者では難しい場合が多いです。単純な業務量が多いからというよりは、「社内全体を巻き込む」「長期に渡って(1~2年)実行する」「短期的な成果が分かりにくい中PDCAをまわしていく」という業務の性質上、兼任には向かないのだと考えています。
まとめ
私たち採用専任者が存在する意義・発揮すべき価値は、会社のビジョン・使えるリソース・市況感を分析したうえで、「ターゲットを決めて」「集めて」「選んで」「惹きつける」活動に一貫性と連続性を持たせた最適な施策を打っていくことにある。
これから2016卒の活動を始める方も、既に2017卒の活動を始めている方も、休日出勤や出張が重なってお忙しいかと思います。体調に気をつけながらも、会社の未来に向けて共に採用戦線を戦い抜きましょう。