なべはるの人事徒然

フィードフォース人事の中の人。採用、教育、評価制度、組織活性など、日々考えていることを綴ります。現在人事で働いている方、人事の仕事に興味のある方、就職活動中の学生などに読んでいただけたら幸いです。

年俸制とは結局何なのか。意味とメリットを整理してみた

給与の体系としてよく出てくる『年俸制』。人材エージェントの方や求職者の方に「御社は年俸制ですか?」と聞かれることもあります。

字面から何となく意味が分かるような気がして、割と無造作に使われるこの言葉ですが、どんな意味で使っているのかが会社によって、人によって、状況によって異なりよく分からないので改めてまとめてみました。

「年俸制」という言葉に特別な意味はない

いきなり結論ですが、「年俸制」には法的な定義も特別な意味もありません。言葉としての純粋な意味は、

年俸制 = 1年単位で給与を決定すること

これだけです。それ以上でも以下でもありません。
例えば、月給のみで給与を支払う会社があったとして、

  • 年俸制・・・査定により、貴方の年間給与は1200万円となりました 
  • 月給制・・・査定により、貴方の月給は100万円となりました

これだけの違いです。

(参考)

www.jil.go.jp

しかし、一般的には年俸制には「実力主義」とか「裁量労働」などのイメージがついてまわります。ここではありがちな誤解や生まれやすい疑問について整理してみます。

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年俸制は実力主義?!成果主義?!

年俸制は、一般的には成果主義の評価体系とセットで使われることが多いです。
「働いた時間ではなく、仕事の成果や実力で給与を決めるから年俸制なんだ」と堂々とHPに書いてある企業すらあります。

しかし、前述のとおり年俸制という制度自体に成果主義や実力主義の意味はありません。年俸制はあくまで給与の決め方であって、評価の仕方を決めるものではないのです。

年俸制が実力主義や成果主義とセットで使われているのは、下記の事情が入り混じってできたイメージかと思います。

  • 査定期間を明確にすることで目標管理がしやすい
  • プロスポーツ選手の年俸制から何となく実力主義のイメージがある
  • これまで減給の仕組みがなかった企業が評価制度を変える際に、「これからは1年ごとに給与をフラットに見ますよ」という宣言としてちょうどよかった

年俸制だと残業代が出ない?!

前述のとおり、「年俸制だから働いた時間ではなく仕事の成果で見ます、残業代は出しません」という会社は多いようです。そのため、年俸制 = 残業代が出ない、と思っている方も多いかと思います。

繰り返しになりますが、年俸制はあくまで給与の決め方であって、残業代をどうするかはまた別問題です。

月給制で給与を決めようが年俸制で給与を決めようが、裁量労働制やみなし労働時間制を適用させるかは関係ありませんが、一般的に年俸制の会社は裁量労働制を適用している会社が多いようです。評価制度や残業代の仕組みを変える際に年俸制と宣言することで実力主義や裁量労働制が従業員に受け入れやすくなったためと考えられます。

年俸制だからといって残業代を支払わなくていいことにはなりませんので、残業代を支給しないのであれば企画業務型裁量労働制なのか、みなし労働時間制なのか、しっかり決める必要があります。また、みなし労働時間制を適用させていたとしても深夜勤務や休日勤務分の割り増し手当は必要になるので、使用者の方は注意が必要です。

年俸制だから給与大幅ダウンもありえる?!

年俸制が適用されているからといって、プロスポーツ選手のようにドラスティックな給与変更をできるかというと、そうではありません。

例えば年収1000万円の人が翌年500万円になったとしたら、よほど合理的な理由がない限りは労働条件の不利益変更にあたり、裁判になったら負ける可能性があります。
労働契約法8条により、労働条件は使用者と労働者の合意がある場合にのみ可能とあります)

年俸制だからといって給与を急に下げてもいいわけではないのでやはり使用者には注意が必要です。急に上げる分には問題ありませんが。

年俸制は年に1度の給与支払いでも良い?!賞与(ボーナス)は出るの?!

査定によって年間賃金が1200万円になったから、ポンと1200万円の給与を年に1回支払えばいいかというと、これはNGです。

労働基準法24条によると、「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」とあります。1年に1回のみの給与支給は法律で禁じられているのです。

一般的には、査定で決定された年間給与を12で割って月々支給したり、年に2度の賞与を加味して14や16で割って支給されます。年俸制であることと賞与の支給有無とは関係ないのです。
賞与の意味については下記記事を参照のこと↓

nabeharu.hatenablog.com

年俸制と月給制は結局何が違うの?!年俸制のメリットは?!

これまでのとおり、実力主義の評価とも、残業代の支給有無も、給与の支払い方についても月給制と年俸制の違いは見られませんでした。

「じゃあ何が違うの?!」と問われるとほとんど違いません。

あえて挙げるとするならば、年俸制の場合は提示された年収額が保証される ことでしょうか。
一番最初に挙げた下記の例をもとに考えてみましょう。

  • 年俸制・・・査定により、貴方の年間給与は1200万円となりました
  • 月給制・・・査定により、貴方の月給は100万円となりました

年俸制の場合は年間給与支給額を約束しているわけですから、よほどの理由がない限りこの支給額を下げることはできません。1200万円での契約期間中にむやみに下げた場合は前述の労働条件の不利益変更にあたるでしょう。

一方、月給制の場合は従業員と約束しているのは月給のみです。理論上、1か月ごとに給与を変更したっていいわけです。もちろん、合理的な理由なく給与を下げるようなことがあれば同様に労働条件の不利益変更にあたってしまいますが。

余談ですが、時々「年俸制(査定年2回)」という求人を見ることがあります。査定の結果給与が下がらないのであれば年俸制であっても査定が年に何回あろうが問題ないのですが(従業員に有利な労働条件変更は問題ない)、もし査定の結果給与が下がる場合はまずいことになるのでは、と勝手にはらはらしたりしています。
その問題を避けるために「半年俸制」「半期年俸制」としている会社もありますね。

言葉だけで分かったつもりにならない

まとめてきたとおり、月給制と年俸制の間にほとんど違いはありません。年俸制だから実力主義でなければいけないわけですし、月給制だから年功序列でなければいけないわけではないのです。うがった見方をすると、年俸制という言葉を隠れみのにして残業代不払いの会社すらあるかもしれません。

言葉の響きから何となく実力主義で残業代が出なくて当たり前、と決めつけずにその会社の評価や労働時間への考え方をしっかり見極める必要がありそうです。