メルカリが新しい人事制度「merci box」を発表して話題になりました。なんと産・育休8ヶ月分の給与を100%保証するとのこと。
すごく良い取り組みですし、是非他企業にも広がって産休・育休の負担を会社がするのが当たり前の流れになったらいいな、とも思います。
福利厚生はタダじゃない
ただ、当たり前ですが福利厚生はタダじゃありません。天から降ってくるものでもありません。会社の資源・資金は有限ですから、福利厚生にお金をかけた分、他に回すお金が減っているはずです。
メルカリの育休支援制度「merci box」でいうと、これまで支払うことのなかった賃金を企業が支払うことになります。育休に入る社員の年収が500万円だとすれば、8ヶ月分で333万円。保険料等も含めれば1人の育休あたり約400万円会社負担が増えます。その原資がどこから来ているかは分かりませんが、何もないところからお金は出てきませんので、会社の利益か他社員の昇給原資か、どこからか原資を持ってきているはずです。
きっと、メルカリの経営陣は、
犠牲にする金銭的デメリット < 制度施行による人材の定着、宣伝効果のメリット
と経営判断が下されているはずです(そして、その狙いは有効なように思えます)。
福利厚生は常に何かとトレードオフ
と、このように説明すれば当たり前のことに感じるかもしれませんが、福利厚生を充実させるということは常に何かとトレードオフになっています。
ついつい福利厚生が充実していると無条件で良い会社であると考えてしまいがちですが、福利厚生を充実している会社はその代わりに何かを犠牲にしているはずなのです。
一例をあげると、
- 家賃補助や家族手当等、金銭面の補助があるということは、その分を給与や利益に回せない
- オフィスが便利な都心にあるということは、その分高い家賃を支払っており、給与や利益を圧迫する
- (国策として)社会保障が充実するということは、その分税金が高くなる
などなど。
経営の視点でいえば、有限の資金をどのように使えば効果的かを常に意識して選択しています。給与として支払うのがいいのか、家賃補助として支払うのがいいのか、オシャレなオフィスに使うのがいいのか、利益として留保するのがいいのか…。何かを選べば何かを失いますから、お金の使い道は必ず何かとトレードオフになっています。
個人的には、福利厚生一切ナシで給与に全振りという会社が出てこないかなぁと思っています。
通勤手当も家賃補助もナシ、PCは自分で用意してください、オフィスもボロいです、でも給与は業界最高水準です、みたいな。ほとんど全ての福利厚生は恩恵を受ける社員に偏りが出るので、福利厚生ナシ・給与に全振りが一番公平かもしれません。
福利厚生一切ナシで給与全振りは現実的でないにしても、給与や福利厚生の仕組みで恩恵を受ける社員にどのような偏りを持たせるかが、その企業らしさ・独自性を表しているのだと思います。