なべはるの人事徒然

フィードフォース人事の中の人。採用、教育、評価制度、組織活性など、日々考えていることを綴ります。現在人事で働いている方、人事の仕事に興味のある方、就職活動中の学生などに読んでいただけたら幸いです。

「就活解禁」のウソ 倫理憲章を正しく理解する

2016年卒業予定者対象の新卒採用活動が本格化してきました。

今年は倫理憲章の変更に伴い、リクナビ・マイナビなどの大手ナビサイトのオープンが3月からになり、企業の採用担当者も就活をする学生にも戸惑いが見られるようです。

私自身、採用担当として学生と接していても、今時点で内定を複数持っている人・何社かの面接に進んでいる人・最近説明会に参加し始めたばかりで志望業界も全く定まっていない人と様々で、例年以上に学生の動き出しがバラバラな印象です。

というわけで今回のブログは就職活動・採用活動時期の後ろ倒しについてです。巷に流れるいい加減な情報に惑わされず、正しく理解したうえでどう行動するか決めましょう。

就職活動・採用活動が後ろ倒しになった…それって本当?

倫理憲章が変更になり、就職活動が3ヵ月後ろ倒しになった…と巷では言われていますが、正確な表現ではありません。
就職活動が後ろ倒しになったなんて、誰が決めたのでしょう。どこの誰も、「就職活動は3月からにしてください」なんて言ってないはずなのに、「今年の就職活動は3月から」と誤った情報が流れてしまっています。

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倫理憲章の意味と対象

ではなぜ、就職活動・採用活動は3ヶ月後ろ倒しというのが当たり前のように認識されているのでしょうか。

それは、2016年卒以降の学生を対象に、倫理憲章の変更があったからです。

倫理憲章とは

コトバンクによると、

・日本経団連が定めた新卒採用活動に関するガイドライン

・男女差別はしない、など採用に関する倫理的に守るべきことが記載されている

・採用活動の時期に関して、2016年卒以降を対象に「広報活動は最終学年前年の3月から」「選考は最終学年の8月から」(2012~2015年卒は、広報活動は最終学年前年の12月から、選考活動は最終学年の4月からだった)としている

とのこと。(追記:その後変更になり選考は最終学年の6月からに)

先の朝日新聞の記事も、この内容をもとに「就職活動が3ヶ月後ろ倒しになった」と書いてあるわけですね。

原文は経団連のHP「採用選考に関する指針」を参照。

倫理憲章の対象企業

倫理憲章が、日本の全ての企業にあてはまるルールなのであれば、「就職活動が3ヶ月後ろ倒しになった」というのも間違っていないのかもしれません。

しかし、実態はまったく異なります。

そもそも倫理憲章自体が経団連が定めたものですので、対象は経団連加盟企業のみです。

そして、経団連加盟企業1300社のうち、賛同しているのは833社(2013年5月時点)。

日本に存在する企業は約400万社あります。そのうち新卒採用を行う企業がどれくらいか正確には分かりませんが、リクナビに掲載している企業だけで1万社あることを考えると、少なくとも数万社は新卒採用活動をしているとみていいでしょう。

私たちは、数万社のうちのたった833社のみが対象の決まりごとに対して、それがあたかも普遍的なルールかのように「採用活動・就職活動が後ろ倒しになった」と騒いでいるわけです。

事実と現象を正しく理解して行動する

833社以外のほとんど全ての企業にとっては倫理憲章は関係ありません。守るも破るもなく、ただただ関係がない話です。

また、就職活動をする学生にとっても基本的には関係ありません。経団連は833社と決まりごとを決めただけで、学生の活動に対しては何ら言及していませんので、自分の好きなタイミングで就職活動を始めればいいのです。

今回の倫理憲章が変更したことによる実際の現象としては下記のとおりです。

  • リクナビ、マイナビなどの大手ナビの本オープンが3月からになった
  • 経団連加盟企業のうちの一部企業の面接開始が(表向き)8月からになった

就職活動をする学生の皆さんは、「就職活動を始めるタイミングにルールはない」「倫理憲章は賛同企業833社のみ関係がある」という事実と「大手ナビオープン時期と一部企業の面接開始時期が変更になった」という現象、この2つを冷静に捉えたうえで、自分自身のタイミングで就職活動を始めていただければと思います。