なべはるの人事徒然

フィードフォース人事の中の人。採用、教育、評価制度、組織活性など、日々考えていることを綴ります。現在人事で働いている方、人事の仕事に興味のある方、就職活動中の学生などに読んでいただけたら幸いです。

Wantedly の何がすごかったのか

こんにちは、なべはるです。

皆さんの会社では Wantedly で求人を出してますでしょうか?
気づけばスタートアップから大手企業まで Wantedly で求人を出すのがスタンダートになりつつあり、Facebook で Wantedly の求人がシェアされているのを見ない日はありません。

今日は、そんな Wantedly の何がすごかったのかを考察してみようと思います。

Wantedly の概要

Wantedly は2010年に設立された、ビジネスSNS を提供する会社です。ミッションは「シゴトでココロオドル人を増やす」こと。
冒頭で紹介したような求人(※)掲載の Wantedly VISIT のほか、名刺管理の Wantedly PEOPLE などのサービスも出しています。

※厳密には Wantedly VISIT は転職サイトではなく、載っている情報は「求人」ではないのですが実質的には企業も応募者も求人として利用しているので、ここでは求人と表記します。

www.wantedly.com

2017年の8月10日にマザーズに上場しました。INST の石野さんが「この上場はココロオドラない」という趣旨の記事を書き、それに対する DMCA にもとづく削除申請などもあり話題になりましたね。

が、この記事ではそこは本題ではありません。
焦点としたいのは、なぜ求人サイト後発の Wantedly が設立から7年で上場するほどに成長することができたのか、という点です。

厳密な調査のもとではなく、あくまでいちユーザーとしての仮説ですのでその点ご了承くださいませ。

ビジネスモデルは一見普通

Wantedly の主な収入源は求人掲載企業からの月額利用料金です。
料金表によると、利用料は月3~9万円、1年間掲載すると36~108万円。これが Wantedly の主な収入源となっています。

こういった掲載課金型のビジネスモデルはずっと昔からあるもので、たとえばリクナビNEXTや DODA なども月いくらの求人掲載料をとるビジネスモデルです。

求人掲載料型の転職サイト・求人サイトは数多く存在します。
↓主要のものをまとめただけでも44サイト。零細のものを含めればその何倍もあるでしょう。

【要保存】転職求人サイト“全44サイト”を一覧まとめ紹介 - 転職求人サイト・転職エージェントを徹底紹介!「転職サイト図鑑」

このように、「企業の求人を載せて利用料金をとり、応募者を集めてマッチングさせる」というビジネスモデル自体はごくごくふつうの Wantedly がなぜここまで普及したのでしょうか?

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Wantedly さんのオフィス すごいオシャレ!

(Wantedlyのオフィス設計を支える思想より)

SNS でシェアすると応募が増える概念を生み出した

Wantedly 成功の要因について、いくつか見かけるものがあります。

  • あえて待遇面を書かずにビジョンや社風マッチを重視したこと
  • 「話を聞きに行きたい」というカジュアルなエントリーを用意したこと
  • 営業活動よりも開発に注力し、しばらくは専任の営業担当をおかなかったこと
  • スタートアップやベンチャー企業など、既存の転職サイトに高いお金を払えない層をターゲットにしたこと

などなど。
これらはすべて成功要因のひとつだと思うのですが、私がいちばんすごいことだと感じているのは、「求人記事を SNS でシェアすると応募が増える」という概念を業界に浸透させたことです。

Wantedly で求人を作成すると、SNS でシェアして求人を応援しましょう!とシェアを強く勧めてきます。「応援する」ボタンを押すと Facebook や Twitter で求人をシェアすることができるのです。
社員全員が協力して求人をシェアすると、それなりのリーチ数になります。しかも社員が SNS でつながっている人には自社の求める人材がいる確率も高いことから、シェア拡散による応募増⇒採用成功とつながりやすくなるのでしょう。
これまで転職サイトが担っていた候補者獲得を(料金が安い代わりに)、求人掲載企業に担ってもらっているともいえます。

今となってはごく当たり前の、この採用手法ですが当時としてはとても画期的でした。集客を人材会社に任せないやり方があるなんて!と。

この手法で、多くのスタートアップやベンチャー企業が Wantedly を使って採用に成功します。しかも、既存の転職サイトに比較してはるかに安い費用です。
そして、Wantedly を使うと安い料金で優秀な人材を採用できるらしい!ポイントは SNS でシェアすることだ!という評判がベンチャー企業を中心に広がっていきました。IT/Web 系のベンチャー企業にとって SNS によるシェアという手段は違和感なく受け入れられたこともあり、さらに多くの企業の採用実績を作り、掲載することが当たり前という今の状況に至ったのだと思うのです。

まとめると、

  • SNS でシェアすると採用成功するという概念を生み出し、実際に成功させた
  • スタートアップ、ベンチャー企業という当時のターゲット企業に SNS のシェアという手法の相性が良かった
  • 今では、利用料金が安くて採用につながるサイトとして、掲載するのが当たり前に

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SNS でシェアすれば応募が増えるのは Wantedly を利用しなくてもできる?

上述のように、社員が求人記事を SNS でシェアすると応募が増えて採用が成功する確率が高まります。
その仕組みをうまく時代の流れをとらえて成功させたのが Wantedly なわけですが、この手法のポイントは「SNS でシェアすること」であり、Wantedly を使うこと自体ではないような気もします。

まだ検証しているわけではないので仮説段階ですが、Wantedly 以外の求人記事を同様に SNS でシェアすることでも、採用成功に近づくのではと思っています。

実際、メルカリさんは2016年頃から、Wantedly ではなくオウンドメディアのメルカンを立ち上げ、採用に成功しているようです。

SNS でシェアする以上、転職にそこまで前向きでない方もターゲットになるため、遷移先のページに「話を聞きたい」「カジュアルエントリー」などのカジュアルな入り口を設けることは必須になりそうですが、工夫しだいでやれそうな気もします。
こういった、Wantedly 以外の採用手法の流れにも注目ですね!

 

以上、Wantedly の成功の要因を考察してみました。
この流れをふまえると、今後ますます人材会社や転職サイトに頼らない、各社独自の工夫や運用が重要になってくるのだと予想しています。
もちろん、人材会社に依頼するメリットもあるので自社だけでやる/人材会社に依頼する、の二元論ではないのですが。

 

(2017.12.14 追記)

と、いうわけで自社広報オウンドメディアを立ち上げました!
自社のミッション「働く」を豊かにするをコンセプトに情報発信を行い、ミッションに共感する人を増やしたいという思いです。
立ち上げの背景や裏側など、いつか記事にできればと思います。

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