GoogleやFacebookも採用する目標設定テクニック『OKR』
OKRという目標設定テクニックをご存知でしょうか?全てのビジネスパーソンにとって悩ましい、目標設定とその管理をシンプルに解決する考え方・テクニックです。
GoogleやFacebookも採用していることもあって、最近注目度が高まっていますね。
私の会社でも半年前から導入しており、半年間実際にOKRをベースにマネジメントしてみたので、OKRとは何なのか・OKR導入のメリット・運用で気を付けることについてまとめてみたいと思います。
OKRとは
改めてOKRとは、Objective and Key Resultの略で、目標と目標達成を測る主要な指標をリンクさせることで、組織と個人の向かう先とやるべきことを明確にするゴール設定テクニックのことです。
今年話題になった本『ハイアウトプットマネジメント』にもその原型が紹介されています。40年も前から今でも通用する手法を取り入れるインテルの先見性はすごいですね。
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OKRでは、会社全体・部署ごとに「目標(Objective)」と「目標が達成しているかを示す指標(Key Result)」を定めます。このとき、必ず会社のKRと部署のObjectiveがリンクするようにします。図にすると下記のとおり。
具体例をあげてみましょう。
例えば、ゲームアプリを開発している会社のOKRは下記のとおり設定できます。
【会社のOKR】
◆Objective(目標)
日本一遊ばれるゲームアプリを開発・提供することで、日本人の余暇をハッピーにする
◆Key Result(主な指標)
新規ダウンロード数前期比20%up
売上●円以上
1日のアクティブユーザ●人以上【部署のOKR(開発チームを想定)】
◆Objective(目標)
日本一のユーザー体験を提供する
◆Key Result(主な指標)
ユーザのアクティブ率●%以上
アプリの稼働率●%以上
●月までに新規機能を2つリリースする
このように、部署ごとのOKRが達成されれば会社のOKRが達成されるように一貫性を持って設定します。
組織が目指す目標をObjectiveに置き、どうなればその目標を達成したといえるかの指標がKey Resultとなります。一般に、Objectiveは定性的な目標で良く、Key Resultは定量的・測定可能なものであるべきとされています。
KPIとの違いは
目標設定のテクニックでよく使われるものにKPI(Key Performance Indicator)があります。目標達成のための中間指標を設けるという点では、OKRとKPIは一緒です。
OKRとKPIの違いは、 KPIは導入を部署単位で決めるのに対し、OKRは全社で導入することで、全部署・全社員を会社のObjectiveの達成に向かわせる点です。
全ての部署のObjective・Key Result(以下KR)が達成されれば、会社のObjectiveも達成されるように設計することで、全社員が会社の目指す目標へと向かいやすくなるわけです。
OKR導入のメリット
OKRを導入することで下記のメリットを期待できます。
メリット①:会社の目標と個人の活動のベクトルを合わせやすい
前述のとおり、部署ごとのOKRが達成されれば会社のObjectiveが達成されるようにOKRを設計します。すると、それぞれの部署や社員一人ひとりで取り組む仕事は異なっても、それらは全て会社のObjectiveを達成するための活動となるわけです。
社員の目線でいえば、今取り組んでいる仕事のその先にある会社の目標、ミッションを自然と意識することができるようになります。
メリット②:やるべきこと・やるべきでないことが明確になる
OKRは、設定するObjectiveやKRの数があまり多すぎるとうまくいきません。通常3つ前後が望ましいとされています。会社の目標達成のためにやるべきことを定めるということは、何をやらないと決めるかという意味でもあります。
Objective達成のために必要な少数のKRにフォーカスすることで、その期間に何をして、何をしないかを明確にすることができます。
メリット③:目標にメッセージを込められる
前述のとおり、Key Resultは定量的かつ測定可能な指標を設定する必要がありますが、Objectiveはその限りではありません。ここに、目標設定を通して会社のミッション・ビジョンを伝える余地が生まれます。
KRの「売上●●円以上」のその先には何を目指しているのか、どんな世界にしたいのか、というメッセージをObjectiveに込めることができるのです。
OKR運用のポイント
私の会社では、半年ほど前からOKRを用いた目標管理を実践しています。
下記は、実際に中途採用業務において設定したOKRです。
実際の人事チームのOKR(一部)
【チームのOKR】
◆Obvective
必要な人材を供給することで会社のビジョン達成を支援する
◆Key Result
中途採用●人【メンバーのOKR】
◆Key Result
中途 面接供給 ●人
◆Key Action
スカウト送信 ●件
Wantedly 求人更新 1回/週
転職エージェントとのリレーション構築
中途採用の目標を達成するために必要な面接供給件数を設定し、それをメンバー個人のKey Resultにしました。Key Resultを達成するための具体的なActionをKey Actionとしています。
実際にOKRによる目標管理を実践してみて気づいた私なりのOKR運用のポイントを挙げてみます。
運用のポイント①:OKRの進捗を見える化する
OKRに限らず、目標管理において一番重要なのは目標を定めて終わりではなく、日常業務で常に意識できるような仕組みにしておくことだと思います。
半期に1度の評価面談のときにだけ目標を思い出すようでは全然ダメですし、今のKey Resultの進捗が順調なのかイマイチなのかくらいは即答できるくらいにしておく必要があります。
日常でOKRの進捗を意識できるように、チームのホワイトボードにOKRの進捗を書くようにしました。
メンバーのKRは面接供給数なので、面接を1件実施するたびに会社のマスコットキャラクターのマグネットシールを1枚貼るルールにしています。ホワイトボードは自席から見える位置にあるので、OKRが順調なのかそうでないのかは少し顔を上げるだけで見ることができます。
運用のポイント②:1on1 MtgでKR達成を支援する
毎週行っているメンバーとの1on1 Mtgで、KR達成のための不安や障害をヒアリングし、マネジャーとして支援できることはないかを考え、申し出ています。
OKRの進捗を管理するというよりは、一緒にOKRを達成できるように伴走するイメージです。
運用のポイント③:KR以外の仕事を整理する
人事の仕事は多岐に渡り、やりたいこと・やるべきことは山ほどあります。しかし当然ながら時間は有限ですので、やれることは限られています。
やるべきことにフォーカスすることで目標達成に最短で近づけるのがOKRの考え方でもあるので、定めたKR達成以外の仕事についてはマネジャーが責任を持って整理する必要があります。
「KR達成に直接結びつかない仕事」が発生した場合には、やるのかやらないのか・今すぐやるのか後回しにするのか、を整理してメンバーがKR達成に集中できるようにしています。
これは、事前に決めた仕事以外はしないということではなく、一番重要な仕事にフォーカスするべきという考えからです。
OKRは銀の弾丸ではない。本質を見極め適切に運用を
以上、OKRの基礎・KPIとの違い・導入のメリット・実際に運用してみて気づいたポイントについてまとめてきました。
まとめてみて改めて思いましたが、OKRは何かこれまでにない斬新な発想があるわけではなく、「会社の目指すものと各部署や個人でやることをリンクさせて目標を達成しましょう」というごく当たり前のことを仕組みにしたものです。
導入すれば全てうまくいく銀の弾丸ではありませんが、導入の目的とOKRの本質を理解して運用すれば、会社にとってもメンバーにとってもプラスになると感じています。