なべはるの人事徒然

フィードフォース人事の中の人。採用、教育、評価制度、組織活性など、日々考えていることを綴ります。現在人事で働いている方、人事の仕事に興味のある方、就職活動中の学生などに読んでいただけたら幸いです。

転職エージェントに良い人材を紹介してもらうポイントまとめ

いかにエージェントに良い人材を紹介してもらうか

ここ数年、ITベンチャー企業を中心に人材不足の状況が続き、各社の採用担当はそれぞれの工夫をこらして採用競争を闘っています。
ひと昔前では中途採用といえば求人媒体に広告を出して応募を待つというやり方が一般的でしたが、現在はダイレクトリクルーティング、リファラルリクルーティングなど様々な手法が生まれていますね。

わたしのブログの中では、ダイレクトリクルーティングに焦点をあてた記事を書いています。 

nabeharu.hatenablog.com

今回は、そういった流行りのやり方ではなく採用手法としてはごく一般的な、転職エージェントに良い人材を紹介してもらうためのポイントをまとめてみました。

尚、今回の記事は、ある大手転職エージェントで10年間務めている知り合いに3時間かけて話を聞いたこと + 自分自身のエージェントとしての経験をまとめたものです。
私の会社でもまだできていないことがたくさんあるので、これからやるぞという宣言も込めて書いてみました。

エージェント担当者の仕事を知る

まず前提ですが、転職エージェントの方は一緒に採用プロジェクトを成功させるための仲間でありパートナーです。良きパートナーとなってもらうには、エージェントで働く人の気持ちとなって考えることが第一歩。そのために、まずはエージェント担当者の仕事をおさらいしましょう。

通常、エージェントでは企業担当者と候補者担当者に役割が分けられます。

企業担当者の仕事

企業担当者(以下企業担当)は、紹介先企業の窓口となる役割です。私たち採用担当者が日常的にやり取りをしているのが企業担当ですね。

少なくとも10数社、多い場合は50社もの企業を担当し、企業から求める人材像をヒアリングし、社内の候補者担当(後述)に伝えることで人材のマッチングを行います。
候補者担当へ案件を紹介する手法は人や会社によってそれぞれですが、データベースへ登録するだけでは候補者担当は案件を認識してくれないので、メール・案件勉強会・候補者担当のデスクへ直接訪問などして、何とか候補者担当に担当案件を知ってもらう努力をすることになります。

自分が担当する企業に紹介した候補者が入社することで得られる成果報酬の金額が営業目標となります。

候補者担当者の仕事

候補者担当者(以下候補者担当)はその名のとおり、候補者(求職者)との窓口となります。
新規で登録する候補者にマッチする企業を紹介したり、過去登録した候補者に新規案件が出た際に紹介することでマッチングを行います。

企業担当と同様、自身が担当する候補者が入社することで得られる成果報酬の金額が営業目標となります。

 

会社によっては企業担当と候補者担当を分けずに1人で兼任するケースもありますが(両面とか両手とかいいます)、大手のエージェントであれば上記のとおり担当が分けられていることが一般的です。

以上から、候補者からの応募意思を受けるまでの情報の流れをまとめると下記のとおりです。

企業の採用担当→エージェントの企業担当→エージェントの候補者担当→候補者

自社の求人情報を候補者に知ってもらうには、このように情報が伝達されているわけです。この情報の流れをふまえたうえで、エージェントに良い人材を紹介してもらうためのポイントは下記の3点です。

f:id:nabeharu:20170320012823j:plain

企業担当をやる気にさせる

まず企業とエージェントの窓口となる企業担当をやる気にさせることが第一です。この会社に候補者を紹介したいと思ってもらわなければ話は始まりません。
仕事なんだからやる気はあって当たり前だろうと考えられるかもしれませんが、ここでいうやる気は、(数多く持つ案件の中から)自社に候補者を紹介してもらうやる気」のことです。
上述のとおり、企業担当者は自分の担当する企業に紹介した成果報酬の金額で営業数値を持っています。営業数値を追いかける担当者の気持ちを考えれば当然、自身の営業目標の達成に近づくアクションから優先的にとります。もっと直截的にいえば、「決まりそうなイメージ」がわく企業に優先的に候補者を紹介するわけです。

エージェントに良い人材を紹介してもらうには、「自社に候補者を紹介すると決まりそう」とイメージしてもらうのが大事なわけです。
そのためのポイントは下記のとおりです。

企業担当をやる気にさせるポイント

  • 事業内容をしっかりと理解してもらう
    まずは基本ですが、事業の特徴・強み・他社との差別化・独自性などをしっかりと理解してもらいましょう。シンプルに「この会社良い会社だな!」と思ってもらうことが第一歩です。
  • 採用ポジションの意図と重要性を伝える
    自社の目指すミッション、戦略を伝え、その採用ポジションがどんな意味を持つかを伝えましょう。「欠員補充だから募集してます」よりも、「○○というミッション達成のために1年以内に●●事業を立ち上げる必要があり、そのための人材が必要。この事業が成功すれば▲▲の価値を生み出すことができます」と説明されるほうが誰だってやる気になります。
  • 募集ポジションごとの入社する理由を明確にする
    一番重要なポイントで、後にも出てきます。
    当たり前の話ですが、人は理由がなければ転職しません。応募する人材がどういう理由(仕事内容、裁量、給与、労働環境等)で転職する可能性がありそうかを明確に伝えましょう。

エージェントの方とのキックオフの打ち合わせにて上記をしっかり伝えて「この会社に紹介したい」と企業担当に思ってもらうことが第一のポイントです。

企業担当が候補者担当にアピールしやすくする

次のポイントは、候補者担当へのアピールです。
上述のとおり、企業担当→候補者担当→候補者へと情報は流れますので、候補者担当にいかに自社の案件を知ってもらうかが重要となります。
言い換えれば、企業担当が候補者担当にアピールするための武器を提供することがポイントです。

企業担当が候補者担当にアピールするための武器を提供

  • 定期的に案件情報をアップデートし、企業担当に伝える
    メール、電話などやり方は色々あるかと思いますが、自社の最新の案件情報を常にエージェントに伝えることが大事です。企業担当が候補者担当に案件を伝達するキッカケとするためにも1か月に1度は行いたいものです。
  • 案件情報・候補者への推しポイントを分かりやすい資料にする
    企業担当が候補者担当へアピールできるよう、会社概要・事業内容とその特徴・求める人材像・想定する応募理由などを分かりやすくまとめた資料を用意するとよさそうです。会社によってはその資料をそのまま候補者担当に展開してくれるでしょう。
  • 合格の理由・不合格の理由を明確に伝える
    エージェントを利用していて、最初から求める要件とピッタリ合った人材が紹介されることは滅多にありません。企業担当とコミュニケーションをとりながら求める人材イメージをチューニングしていくのが普通です。その際に、合否の理由が不明瞭なままだといつまで経ってもチューニングがされません。
    また、企業担当が候補者担当に不合格を伝える際に、「よく分からないけど不合格だった」となれば候補者担当はその企業に紹介する気がなくなってしまいます。逆に不合格であっても理由が明確であれば、「だったらあの人だったらマッチするかも」と別の候補者にアプローチしてくれるかもしれません。

企業担当とのキックオフの打ち合わせ後も、上記のとおり自社のことを継続的にアピールしていきましょう。

候補者担当が候補者にアピールしやすくする

最後に、候補者担当が候補者にアピールしやすくするポイントです。1つ前のポイントと同様に、候補者担当が候補者にアピールするための武器を用意してあげるという発想で考えてみます。

候補者担当が候補者にアピールするための武器を提供

  • 案件説明会を開く
    エージェントに訪問して、候補者担当に直接自社のアピールをするやり方です。企業担当者から又聞きするよりも、企業から直接話を聞くことでより深くその企業のことを知ってもらうことができます。
  • 求人票が全て
    職種によっては、1人の候補者に紹介する案件が20~30、それ以上ということもありえます。求人票の束がドサっと候補者に渡されるわけです(渡された経験あり)。その中から自社に応募してもらう意思を勝ち取らなければならないので、求人票はとても大事です。自社の魅力がしっかり伝わっているか・求人票を読んで応募する理由が明確に思い浮かぶか、改めて読み返してみるといいでしょう。

エージェントの気持ちを知り、良きパートナーとなる

以上、いかにエージェントの方に動きやすくなってもらうかという視点で、自分の考えるポイントをまとめました。

繰り返しになりますが、エージェントは単なる業者ではなく採用プロジェクトの仲間でありパートナーです。そして何より、1人の人間です。
エージェントの担当者の方が何を目指し、何をモチベーションにしているのか。どんな仕事をし、どういう情報があれば仕事をしやすいかを知ることが、エージェント活用の第一歩となるはずです。

さぁ、ウチも求人票の見直しから始めましょうか!

転職時に確認すべき収入・待遇リスト

いざ転職!収入面はどうなる?!

中途採用市場は相変わらず活況で、しばらくは転職しやすい状況が続くようです。
私の周囲でもここ数年で転職した人が数多くいますね。

doda.jp

IT / ベンチャー企業を中心に中途採用市場が活況で転職先自体は見つかりやすい状況ですが、転職前後の収入がどうなるかはやはり気になるもの。
ここでは、転職前後の収入を比較するにあたって気をつけるべきポイントをまとめました。

会社によって年収の定義が異なる

最も気をつけるべきが、会社によって年収の定義が異なるということです。
転職時の希望年収は人によってそれぞれでしょうが、仮に下記の条件・希望の転職希望者Aさんがいたとします。

【Aさんの現職の待遇】

  • 年収500万円
  • 残業なし
  • 賞与なし
  • 現年収維持以上を希望

このAさんが転職活動の結果、B社から下記のオファーが出たとします

【B社からのオファー】

  • 年収520万円
  • みなし残業代 60時間 / 月 分を含む
  • 賞与はなし

このオファーを見て、「20万円の年収アップで希望通りだ」
とオファーを承諾するのは早計です。

Aさんの現職と転職先のB社とでは、年収の定義が大きく異なるからです。
現職では残業ゼロですが、転職先のB社では1か月60時間の残業代が見込まれています。この60時間分の残業代を差し引いて年収の定義を揃えると下記のようになります。

【現職での年収】

  • 残業0時間での年収・・・500万円
  • 時給・・・2604円

【B社の残業代を除いた年収】

  • 残業0時間での年収・・・340.4万円
  • 時給・・・1773円

(1か月の標準労働時間は160時間で計算しています)

残業ゼロと同条件にすると、なんと32%も年収ダウンです。
もちろん、ダウン提示であっても仕事内容その他の条件も含めて納得できるのならそれで良いのですが、ダウン提示であること自体に気づかないのは問題です。

このように、現職と転職先の年収条件を正確に比較するには、まず前提条件を揃えるところから始めなければなりません。

f:id:nabeharu:20170305175621j:plain

年収比較時に揃えるべき前提条件リスト

最低限、下記条件を揃えられれば安心だと思います。
転職先の最終面接終了時、もしくはオファー提示後に人事に確認するようにしましょう。

  • 賞与の支給条件
    オファーに記載されている賞与額が必ずしも満額払われるわけではありません。在籍のタイミング、業績、評価による支給額の増減 等が明確な記載がない場合は確認しましょう。
  • 労働日数、労働時間
    年収金額は同じだけど、出勤日数/労働時間が大幅に増える!というケースもありえます。
  • 残業代支給の有無、残業代の支給条件、残業時間
    上で挙げた例のように、残業条件によって金額が大きく変わるので絶対チェックです。
  • 各種手当を含む金額か否か
    会社によって、年収に交通費を含んだり含まなかったり、交通費自体の支給がなかったりと条件は様々です。
    交通費、家賃手当、家族手当、等々、各種手当が年収に含まれるのか含まれないのかは見落としがちです。特に、福利厚生が充実している大企業にお勤めの方は要注意です。

このように、前提条件を揃えることができれば、現職と転職先の金銭的な条件比較を対等に行うことができます。
お金が全てではないけれど、お金が大事なのは間違いないと思いますので、見た目のアップ提示・ダウン提示に惑わされず、冷静な目でジャッジしましょう。

(関連記事)

nabeharu.hatenablog.com

ベンチャー企業に転職して増えたもの減ったもの変わらないもの

私が今の会社、フィードフォースに入社して約2年が経ちました。

というわけで(?)前職の大企業からベンチャー企業に転職して変化したことをまとめてみたいと思います。「仕事のやりがい」などの曖昧なものではなく、定量的に測れる変化のみをまとめました。
先にお伝えしますが、特に示唆に富む内容ではありませんのでゆるっとお楽しみください。

 1年前に書いたエントリは下記。

nabeharu.hatenablog.com

 ベンチャー企業に転職して増えたもの

まずは増えたものから。

仕事量

前職ではイチ新卒採用担当だったのが、新卒採用・中途採用・育成研修・人事制度・評価制度・福利厚生・総務等守備範囲が広くなったので仕事量は純粋に増えました。

これまでの業務効率で仕事をしていてはいつまでたっても次のステージにいけないので、1つ1つの業務をいかに効率良くできるかが最近の課題です。
正直、前職では忙しいといっても少し頑張れば何とかなるレベルの忙しさだったので、あまり真剣に業務効率を考えたことがなく、そのツケが今回ってきている感じです。30代前半のタイミングでそのことに気付けたことを前向きに捉えて精進します。

有給取得

仕事量は明らかに増えたので、1日の就業時間も当然増えていますが、一方で何故か有給取得は増えています。

前職は全社の有給取得率が60%弱と、それなりにホワイト企業だったのですが、私自身は何故か20~30%程度しか取得していませんでした。
今の会社では全社の有給取得率が70~80%の中、私自身は50%程度と、やはり全社平均よりは低いのですが、前職よりは取得しています。

もしかしたら、前職では自分自身の仕事に対する物足りなさが有給取得にブレーキをかけていたのかもしれません。

読書量(ビジネス書)

明確に数えているわけではありませんが、少なくともビジネス書の読書量は増えました。

仕事量が増え、前職より忙しいのは間違いないのですが、知識をインプットすることが必要と切実に感じるようになったからかもしれません。

睡眠時間

たまーに、「いつも忙しそうにしてるけどいつ寝てるんですか?」と聞かれるんですが、すいません...いつもたっぷり寝てます…。0~1時の間には寝ないとダメなんです。むしろ、転職して睡眠時間は増えました。

睡眠時間が増えた理由は、「始業が1時間遅くなった」「会社が自宅から近くなった」ことによってのんびり起きても間に合うようになってしまったからです。朝活しろということか。

f:id:nabeharu:20160621001459j:plain

ベンチャー企業に転職して減ったもの

減ったものがこちら。娯楽系が軒並み減った...かな?

ゲームの時間

実はそれなりにゲーマーだったのですが、転職してからかなり減りました。モンハン4GもモンハンXもちょこっとやったままです。女神転生4もブレイブリーセカンドもクリアしないまま…。据え置き機のゲームは全く買わなくなりました。

単純に時間がなくなったからなのですが、時間がなくてゲームがやれないことへのストレスはほとんど感じてません。このままゆるゆるとゲームを卒業する日が来るのでしょうか。

読書量(小説)

これは減ったことが少し残念なもの。前は月2~3冊は読んでいたのが、今は半年に1冊ペース。

何とかルーティンに組み込んで読むようにしたいですね。

出張

前職の採用シーズンでは北海道・東北・関西・九州など、日本全ごくに週1ペースで出張に行っていたのですが、現職では採用だけが仕事でないこともあり、出張の数はぐっと減りました。

出張自体は好きなので、意味のある出張であればどんどん行きたいところ。

大企業でもベンチャー企業でも変わらなかったもの

読書量(漫画)

ビジネス書は増えて、小説は減って、漫画は変わりませんでした。
HUNTER×HUNTERの連載が無事終わるまで生きていられるだろうか。

食欲と体重

残念ながら旺盛な食欲は変わっていません。体重は順調に増加していますが、前職に在籍していたときの体重増加曲線に大きな変化はなく、ただひたすら緩やかに増加しているので「変わらない」カテゴリに入れました。

振り返ることで、自分にとって大事なことやそうでないことが見えてくるかも

まとめは以上です。

こうしてまとめてみると、忙しくなったからといって学習量が減るわけではなかったり、好きだったゲームの時間が減ったからといってストレスに感じるわけではないということが分かりました。
多分、今の私にとって余暇の時間が多いか少ないかはそれほど重要ではないんでしょうね。

一方で、忙しくても漫画を読む時間や睡眠時間は変わらなかったので、この2つについてはしばらくは人生において大事なものなんでしょう。

さて、食欲についてはどう考えるべきか…。

オワハラよりも悪質?!知られざる退職時の嫌がらせ

セクハラでもパワハラでもない、退職ハラスメント

セクハラ・パワハラ・モラハラ等、数多くの「○○ハラスメント」があります。
昨年流行った(?)のがオワハラ(就活終わらせろハラスメント)ですが、今日はそれよりももっと悪質な退職ハラスメントについて考えてみたいと思います。

退職ハラスメントとは、退職を申し出た際に会社から何らかの嫌がらせを受けることです。

私自身、転職エージェントと人事での経験を合わせて100名あまりの退職・転職を見てきましたが、実に多くの人(体感では半数近くの人)が何らかの退職ハラスメントを経験しているようです。その種類と実態についてまとめてみました。

f:id:nabeharu:20160214231738j:plain

退職ハラスメント(嫌がらせ)の種類

1.過度の引き止め

おそらく一番多いのが、過度の引きとめ・慰留です。
会社にとって必要な人材だからこそ引き止められるのでしょうから、引きとめられること自体は一概に悪いこととは言えないかもしれませんが、行き過ぎると立派な(?)ハラスメントです。
よくあるのが下記の2つ。

  • 複数回にわたって慰留のための面談が行われる
  • 後任が見つかるまで/仕事が落ち着くまではいてくれと頼まれる

難しいのは、退職する側も会社に迷惑をかけて申し訳ないという気持ちがあるため、これらのハラスメントを無下に扱うことができないことです。特に責任感の強い人/優しい人ほど。

憲法で職業選択の自由が定められており、法律では2週間前に退職を申し出れば問題なく退職できます。どんなに会社から強く引きとめられても、それに従う必要はないのです。
とはいえ、2週間では引継ぎするのにあまりに短いでしょうから、常識的には会社と話し合った上で、退職を申し出た日の1ヶ月~3ヶ月後に退職、というのが一般的でしょう。

careerpark.jp

2.退職日の前倒し

1の逆で、退職を申し出たらその会社として最短日を退職日に指定される、というハラスメントもあります。信じられないような話ですが、辞める人に払う給料はないからできるだけ早く辞めてくれ、という会社もあるのです。
このハラスメントにあうと、3ヵ月後に辞めようと思っていたのに2週間後に辞めることになってしまった、なんていう悲劇も起こります。

退職日の前倒し要求は、不当解雇に近い法律違反なので訴えればおそらく勝てるのでしょうが、そんな面倒ごとを起したくないと考える人が多いことから、泣き寝入りになってしまうことが多いようです。

3.退職を理由とした不当な扱い

2と同じ発想で、どうせ辞めるんだからと不当な扱いを強いる会社もあります。
例えば、

  • 退職を理由に低い評価をつける/給与を下げる
  • 賞与を支払わない
    (退職を決めた人は賞与を受け取らないという慣習の会社があるとか)
  • 有給休暇を消化させない

などなど。これも泣き寝入りする人が多いようです。

4.嫌がらせ

最も幼稚かつ厄介なのが嫌がらせです。上記1~3はハラスメントをすることによる会社側の意図が見えますが(それでも許されるものではないですが)、嫌がらせに関しては受ける側はもちろん、する側にも腹いせ以外のメリットがない、皆が不幸になるハラスメントです。

「今まで世話してきたのに辞めるなんて、何の恩義も感じていないのか」「忙しいこの時期に辞めるとは非常識だ」などの言葉による嫌がらせから、辞めるときは社長に土下座して謝らなければならないというおかしな慣習、ヒドいのになると、転職先に圧力をかけて転職できないようにする、なんて話しもあるようです。

joshi-spa.jp

中々表に出てこない退職ハラスメントの実態

これだけたくさんのひどいハラスメントが横行しているにも関わらず、中々表に出てこない退職ハラスメント。

表に出てこない一番の理由は、波風立てずに退職したいという退職者の心遣いが逆手に取られているからです。

自分が退職することで会社に何らかの迷惑をかけるであろうことに負い目を感じ、多少無茶なことを言われたりされたりしても泣き寝入りしてしまう…それゆえに中々表沙汰にならないのでしょう。

引継ぎもせずに不義理に辞めていいということでは全くありませんが、しっかり義理を通して全うな退職手続きをふんだうえで会社にハラスメントを受けたのであれば堂々と抗議/抵抗してもいいかもしれません。

あなたの部下がまだ会社を辞めていない理由を言えますか

晴天の霹靂のごとき部下の退職

能力が高く、素直でやる気もある若手社員が自分のチームに配属された。しっかり育てて自分の右腕に、ゆくゆくは会社の中核に…と目をかけていたメンバーからある日突然辞表を提出された…。どうしてこれだけ期待も評価もしていたのに辞めてしまうんだ…せめて事前に相談してくれれば…そんな経験ありませんか?

でも、辞めた本人からすれば、「逆に何で辞めないと思ったんですか?」という気持ちかもしれません。

f:id:nabeharu:20150927191434j:plain

優秀と思っている人ほど、辞めるリスクが高い

当たり前の話ですが、社内で活躍している人ほど社外でも活躍の可能性が高く、働く先の選択肢は多いはずです。

また、活躍している社員は自分に自信を持っているので、働く環境が変わってもやっていけるだろう、と転職をポジティブに考えています。

ですので、期待をかけている人ほど辞めていく、のはある種当たり前なのです。

メンバーが自社で働く意義と理由を把握する

そうはいっても、期待をかけている社員に急に辞められたら困ります。

仕事観・キャリアプランはそれぞれですので、辞められないようにする万能薬はないのですが、最低限、その社員が自社で働いている意義を把握しておく必要があるのではと感じています。

  • その社員がどんな仕事観を持っていて、将来どうなりたいと考えているのかを把握するため対話する
  • 社員の目指すキャリアを実現するために自社で働く意味/理由はどこにあるのかを一緒に考える
  • もし自社で働く意味/理由が薄いと感じられる場合は、代替で提供できるモチベーションは何かを考えておく

上記を日ごろから行っておくことで、少なくとも「青天の霹靂で辞められてしまった」という事態の多くは避けられると思います。逆に、もしメンバーが自社で働く意義を把握していない場合や代替で提供できるものがない場合、辞めていないのはたまたまであって、何かの機会があればすぐに辞めてしまう可能性があります。

ちなみに、キャリアパークの円満退職の退社理由ベスト3!気持ちよく仕事を辞める方法とはによると、建前の転職理由1位は「キャリアアップしたかった」で、本音の転職理由1位が「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」という恐ろしいアンケート結果が出ています。

ギクっとした方、メンバーと対話の時間を作ってみてはいかがでしょう?

大企業からベンチャー企業へ転職して1年で感じていること

今の会社に転職してちょうど1年が経ちました。はてなブログのトピックが「2015夏の人事」ということもあり、せっかくなので振り返ってみようと思います。

大企業からベンチャー企業へ転職した理由

前職の概要は下記のとおり。

従業員数:2000名
平均年令:42才
事業内容:業務システム開発。いわゆるSIer
担当業務:新卒採用担当、人事制度ちょっぴり
在籍期間:4年半

そして現職概要は下記。.

株式会社フィードフォース|feedforce Inc.
従業員数:30名(入社当時)
平均年令:32才
事業内容:マーケティングサービスの開発
担当業務:人事部立ち上げ、新卒・中途採用、制度企画、その他何でも
在籍期間:1年(在籍中)

従業員2,000人の会社から30人の会社へ転職した理由はただ1つ。

より経営視点で人事の仕事をしたかったから。

前職でも頑張って役職を上げていけば経営に近い仕事に携われた可能性もありましたが、どんなに最短で出世してもそういった仕事ができるのは40才前後。
それでも40才になってそういう仕事ができるならいいけど、もし40才手前で会社がなくなってしまったら、「大した経験もしていない40才のおれ」が社会に放り出されることになります。
自分の力不足で出世できないのは仕方ないから我慢できるけど、自分の力とは関係のない要因で自分の人生が決定的に左右されるのは我慢できない、と感じて転職を決意しました。

f:id:nabeharu:20150705182230j:plain

大企業で働くメリット

ベンチャー企業で働く選択をしたわけですが、大企業だから経験できたこと、良かったこともたくさんありました。

福利厚生が充実している/オフィス設備が充実している

やっぱり大企業だけあって、福利厚生やオフィス環境は優れていました。
福利厚生だけでも、家賃手当て・ローン手当て・扶養手当・年金退職金制度・出張手当・食費手当て等々…山盛りでありました。
きれいなオフィスに什器、喫煙室に休憩スペースにレーザープリンターと、設備面で不満を感じたことはなかったです。
一方、以前書いた記事「通勤手当は何のため?福利厚生の意味を考えてみた」にも書いたとおり、メッセージ性の強い福利厚生制度はあまりなかったように感じました。

人生の先輩がたくさんいる/将来の収入が読みやすい

業暦50年、平均年令42才の会社でしたから、人生の先輩はたくさんいました。
中でも、新卒で入社して管理部門一筋30年弱の大先輩の定年退職の場に立ち会えたのはとても良かったです。
正直、今の私には同じ企業で30年勤めあげる心境は想像すらできません。そういった場に立ち会えるのは歴史のある大企業ならではでした。

また、職場内に各年令の先輩上司がたくさんいますので、どのくらいの年令でどの程度の収入を得られるかのイメージがつきやすいというのも、将来設計をする点では良かった点でした。

大企業ならではの人事課題に直面することができた

大企業を経験して特に良かったと感じているのがこの点です。
課題の一例を挙げると、

  • 年功賃金から実力主義の賃金へのシフト
  • 定年後再雇用
  • 労働組合との春季交渉
  • 中年社員のスキルアンマッチ などなど

どれも一定期間優良企業として成功してきたからこそ起こる問題。この問題の片鱗だけでも経験できたのは人事の経験としてとても貴重でした。 

ベンチャー企業で働くメリット

ベンチャー企業に転職してみて、改めて良かったと実感しているのは下記です。

裁量が大きい/経営に直結した仕事ができる/自分の頑張りが組織の成長に直結する

何しろこれまで人事部がない状態で入社したので、何をするにも自分しだいです。自分がやらなきゃ誰がやる、という状態なので「裁量の大きさ」という言葉を意識することすらなくなりました。

また、組織的な課題のほとんど全てが人事に関わるものなので、経営に直結した仕事をしていることを実感することができています。
自分が頑張れば会社が成長するし、自分がダメだと会社の成長スピードも鈍化してしまう…自分の行動が組織への貢献に直結しているので、プレッシャーがあると共にやりがいを感じやすいです。

新しいこと、チャレンジが奨励される

個別の企業にもよると思いますが、大企業とベンチャー企業では、新しいことに対しての捉え方が全く異なります。
現職では、何か新しい取り組みには「まずやってみよう」という文化が浸透しており、新しいチャレンジをドンドンやりたい自分にはとてもやりやすいです。
新しい企画を通すときに課長と部長と事業部長と本部長の決済をもらっていた前職とは雲泥の差です。
最近知ったのですが、こうした新しいことをどんどん現場の判断でチャレンジしよう、というのを言葉にすると「許可より謝罪」というらしいです。下記けんすうさんのブログはものすごく共感します。

blog.livedoor.jp

経営陣、従業員が勉強熱心 

これも企業ごとの差があると思いますが、やはりベンチャー企業の社員は主体性が高く、勉強熱心な人が多いように感じます。
それぞれの社員がそれぞれの領域で情報収集やスキルアップを怠らずに専門性を伸ばそうとしているので、自分は人事の領域で専門性を伸ばして会社に貢献しようという気持ちに自然になります

その会社が嫌になったから転職するわけではない

↓の記事にあるように、転職というとネガティブなイメージを持つ方もいらっしゃるかと思います。

economic.jp

しかし、上記に挙げたとおり私自身、前職にも現職にもそれぞれ良いところがあると認めたうえで転職しています。
勤めている会社が嫌になった、嫌いになったという理由ではなく、自分の人生設計とその会社の方向性を照らし合わせたうえでより良いと思われる選択をしたに過ぎません。

安易な転職は不幸な結果に終わる可能性が高いですが、キャリアの選択肢として転職が当たり前にある状態のほうが企業にとっても個人にとっても健全なのでは?と考えていたりします。

という訳で(?)フィードフォースでも人材絶賛募集中です。興味のある方はご連絡ください。※ステ(ルスされてない)

recruit.feedforce.jp

追記)

転職して2年経った時点のブログも書きました。

nabeharu.hatenablog.com

人工知能の発達が人材業界に及ぼす影響

ソフトバンクのPepperくんの一般販売が始まりました。価格は税込み19万8000円(+月額の維持費)。頑張れば手の届く価格。割と真剣に欲しいです。オフィスに購入(雇用?)する会社もたくさんありそうですね。時給1,500円で雇えるらしいですし。

www.softbank.jp

という訳で(?)今回は人工知能(AI)の話。といっても技術的な考察は私にできませんので、人工知能の発達によって人材業界がどうなるのか、勝手に考察してみようと思います。

f:id:nabeharu:20150621122139j:plain

次々に登場する人工知能によるマッチングサービス

人工知能を用いた人材サービスは既にいくつか出ています。

↓海外のHR×AIサービスは下記にまとまっています↓

すでに勃興?HR×人工知能領域サービス6選! | リクルーティングの世界

国内でも、ビズリーチのキャリアトレックや、アトラエ×ブレインパッドのTalentbaseなど既にサービス化されているものがあります。

サービス化されていないものでも、groovesが人材採用領域における人工知能やビッグデータ解析技術の活用に関する研究を行う「grooves HRTech 研究所」を設立するなど、ホットなニュースが続いています。

人工知能が発達したら人材紹介会社(エージェント)は不要になる!?

キャリアトレックやTalentbaseの使用感としては、求人数も少なくマッチングの精度はまだまだな印象を受けますが、まだ情報を蓄積している段階。将来的にはマッチング精度が高まってくることが期待できます。

そうなると、人を介した紹介 つまり人材紹介は不要になることが予想されます。人が紹介するよりも、機械がマッチングしたほうが精度が高くなるのであればそこにわざわざ人を介する必要はありません。

人工知能によるマッチングの問題点と限界?

もちろん、それですぐに人材紹介が不要になるわけではありませんし、人工知能だけのマッチングには限界があります。

下記、ジーニアスインターン生のブログによくまとまっています。

www.genius-japan.com

要約すると、人工知能には下記の限界があるので完全代替はできないとのこと。

  • アナログな要素(未経験業務への適性や社風等)へのマッチングができない
  • 信頼感や安心感が得られない
  • 期待値調整ができない

それぞれもっともな意見ではあるのですが、個人的には上記問題点はあまりクリティカルには感じておらず、完全に近い形で人工知能が人材紹介の代替たりえるものになるのではと考えています。

その根拠は下記のとおりです。 

アナログ要素によるマッチングと期待値調整ができているエージェントは少ない

そもそも、人工知能にはできない領域とされているアナログ要素によるマッチングや期待値調整はどれほどのエージェントができているのでしょうか。

データもなく恐縮ではありますが、エージェント・求職者・求人側全ての立場での経験から言わせていただくと、できているのはごく少数といえそうです(体感では

アナログマッチングに気を使っている担当者は10%前後)

アナログ要素のマッチングができていないエージェントがダメだと言いたいわけではなく、大局で見ればそういった機微な部分のマッチングができていなくても成約に至るというのが実情ではないでしょうか。

特に最近は採用市場が活気付いているので、エージェントに相談に行ったら20を超える求人を紹介されて  ( ゚д゚)ポカーン となった方も多いことでしょう。エージェント側も求人が増えすぎて社風まで把握できないという事情もありそうです。

中堅~ハイクラス人材にこそ自動マッチングが活きる

アナログ要素のマッチングや期待値調整も、中堅~ハイクラス人材ほど必要性が薄くなります。

転職エージェントの方はピンとくるかと思いますが、20代中盤~後半の候補者ほど中々決断できずにエージェントが後押しする必要がある一方、ハイクラス人材はスパっと自分で決断できたりします。

中堅~ハイスペック人材ほどエージェントの介在する必要性が薄い理由は下記のとおり。

  • スキルと経験を活かした転職が多い(未経験分野へのポテンシャルというアナログ要素が少ない)
  • 人や社風ではなく、仕事内容や裁量を理由に決断する人材が多い
  • 自分で情報収集して、合理的な決断をすることができる
  • (人によっては)自分の市場価値を把握しているので年収交渉も自分でできる

そして、これらの中堅~ハイクラス人材の紹介は成果報酬も高く企業からの引き合いも強いのでビジネス的に大きなボリュームになります。(平たくいうとお金になります)

 

上記のように、そもそもエージェントはアナログ要素マッチングをあまり行っていない(必要性もあまりない?)、中堅~ハイクラス人材ほどエージェントの介在を必要としていないことから、人工知能が人材紹介エージェントの大部分を代替可能なのでは?と考えています。

f:id:nabeharu:20150621232218j:plain

 

人材紹介で残る分野は?

 未経験・ポテンシャルでの転職支援

上記で挙げたとおり、スキルや経験を活かした転職は機械でのマッチングを行いやすい一方、未経験分野への挑戦となると難しいです。

そもそも転職者本人も何をしたいのか、何に向いているのか分からないケースも多いので、人が介在する価値が十分あるかと思います。

ただし、未経験のポテンシャル採用に人材紹介の手数料を支払うのは採用費として割高ですので介在する価値はあってもビジネスになるかは微妙かもしれません。

公開できない求人

ハイクラス人材でも人工知能に代替しづらいのが、一般に公開できない求人です。

例えば「上場準備責任者」や「リストラ経験豊富なコストカッター」など、世間一般に知られたくない求人の場合は、しっかり人が介在して紹介に足る人材にのみ開示する、という方法が適しています。

そうっいった、本来の意味でのスカウト・ヘッドハンティングを行うことができるエージェントであればこの分野で価値を残せるでしょう。

 

まとめ
  • 人工知能の発達により、人材紹介業は大部分が代替される可能性がある
  • 特に中堅~ハイクラス人材は機械によるマッチングを行いやすい
  • 未経験、ポテンシャル層と公開できないハイクラス求人分野は人工知能に代替されにくい